「KUNDALINI TANTRA(クンダリニー・タントラ)/Swami Satyananda Saraswati(スワミ・サティヤナンダ・サラスワティ)著」を読み進めていく形で、クンダリーニヨガの概要を紹介していきます。
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今回は、第1章の10節、クンダリニーに関係する「覚醒の4ステップ」に関する部分です。
クンダリーニヨガの研究については、以下のページにまとめてあります。
混同されがちな、各種の「覚醒」
「覚醒」には段階がある
ここまでいろいろな目に見えないモノを「覚醒」させるという話がでてきましたが、私達は日常的に「覚醒」という言葉を使うことが少ないので、チャクラとかナディとかいうよくわからないものを、よくわからない方法で「覚醒」させるというのは、雲をつかむような話に思える人もいるかと思います。
この節では、それらの「覚醒」に関する説明と、それらをどんな順番でやっていくのか、といった話の説明に入ります。
クンダリニーヨーガの行法にも直接関係する話になりますが、諸説がある部分かと思いますので、数ある中の一つの理論として、サティヤナンダ氏の考えるクンダリニーヨーガの基礎と捉えておくと良いかと思います。
チャクラやナディの覚醒は、クンダリニーの覚醒とは異なる
When we talk about awakening we should not confuse awakening of kundalini with other forms of awakening. Awakening of the chakras is completely different from awakening of kundalini. Awakening of sushumna is also quite a different event, and awakening of mooladhara chakra is not awakening of kundalini. Even if all the chakras from mooladhara up to ajna are awakened this does not mean that kundalini is awakened.
混同されがちな、「チャクラの覚醒」や「ナディの覚醒」は「クンダリニーの覚醒」とは全く異なるものであると述べられています。
チャクラやナディに対するアプローチは、クンダリニーの通り道をつくるための前段階であり、以下のようなステップで進めていくと説明されています。
- イダーとピンガラーを浄化し機能のバランスを整える
- 各チャクラを覚醒させる
- スシュムナーを覚醒させ、クンダリニーの通り道をつくる
これらの3ステップを経た上で、「4.クンダリニー覚醒に至る」というのが、リスクのない安全な進め方であるとしています。
これはサティヤナンダ氏のクンダリニーヨーガを進めていく上で基礎となる理論なので、理解しておくと良いでしょう。
情報過多の現代においては、理論はまどろっこしいので行法だけを調べて実践してみたけど、期待してたほど効果がでなかった!というのはよくある話ですが、基礎を理解せずに行っても、良い結果には至らないということがこの節の説明で分かるかと思います。
たとえばひとつのチャクラに関する行法だけつまみ食いして行ったとしても、それはただ通り道を作るための一つの過程を行っただけ、ということになります。
ここから、各ステップについての解説が続きます。
ステップ1:イダーとピンガラーを整える
イダーとピンガラーは「覚醒」させる必要はなく、「調整」する
These two nadis respectively feed the two hemispheres of the brain which in turn control every activity of the body. It is not awakening of these nadis we aim towards, but discipline.
前にも述べられたように、イダーとピンガラーの2つのナディは、肉体の活動のバランスを司っているといわれます。自律神経の働きとも一致するところがあり、左右の脳の働きにも関係があるとされます。
これらのナディは「覚醒」させる必要はなく、すでに機能しているので、「調整」するアプローチをしていくことになります。
イダーとピンガラーの乱れ
Ida and pingala function according to a natural cycle, but on account of poor eating habits and inharmonious lifestyles, the natural cycle is often disturbed.
イダーとピンガラーは、自然のリズムにも影響されますが、不適切な食生活などのライフスタイルの乱れによってバランスを崩すことも頻繁にあります。これらのアンバランスは、結果として心や体の病気を引き起こします。
そしてスシュムナーの覚醒は、イダーとピンガラーが調和している状態でなくては起こらないと説明されています。
イダーとピンガラーを整える方法
So, through the practices of hatha yoga, pranayama and raja yoga, the nadis should be purified and disciplined. The best practice for this is actually nadi shodhana pranayama – nadi purifying pranayama.
イダーとピンガラーのバランスのために、ハタヨーガやプラーナーヤーマやラージャヨーガなどを実践するのが良いとされます。中でもナディショーダナプラーナーヤーマが最適であると紹介されています。
私のレッスンでは、ヨガベーシック・シヴァナンダヨガ・リフレッシュヨガ・陰ヨガのクラスなどで、よく行っていますね。
参考:アヌローマヴィローマプラーナーヤーマ(ナディショーダナ・片鼻呼吸法)の効果・やり方

ステップ2:チャクラを覚醒させる
チャクラの覚醒は、生まれ変わった後の生にも引き継がれる
From incarnation to incarnation the yoga we have been practising may have already awakened the lower chakras. … However, in any case, it is essential that all the chakras must be awakened before we make an attempt to awaken sushumna.
チャクラの覚醒は、生まれ変わりを繰り返す中でヨーガを実践してきた人にとっては、その結果が次の生に引き継がれるため、前の生までに覚醒したチャクラについては、そのチャクラに関する行法を行う必要はないであろうと述べられています。
また、クンダリニー覚醒に際して起こることを知らないために、クンダリニーがすでに覚醒しているけれども気づいていない、といったこともあり得るといいます。
いずれにしても、スシュムナーの覚醒の前に、全てのチャクラを覚醒させておく必要があると説明されています。
なぜチャクラを覚醒させておく必要があるのか
The chakras are the junctions from which the nadis, like cables, transmit the energy to different parts of the body.
なぜチャクラを覚醒しておく必要があるのか。チャクラにはどんな役割があるのかという話が簡潔に述べられています。
ナディがエネルギーを運ぶ電線であるとしたら、チャクラはそのジャンクションにあたり、体の中の適切な部分にエネルギーを分配するためにチャクラが機能している必要があると説明されています。
チャクラと肉体の関係
Every point, speck or fiber of the body is directly related to one of the chakras.
体の全ての部分はいずれかのチャクラにつながっていて、たとえば性に関する器官はムーラーダーラチャクラに関係し、泌尿器系・排泄・生殖器系の器官はスワディシュターナチャクラにつながっているといいます。
However, in most people, the chakras beyond manipura are dormant. Because mooladhara chakra is the highest chakra in animal evolution, it is already functioning in most people.
多くの人にとっては、マニプーラより上のチャクラは休眠状態にあり、そのためほとんどの人にとってムーラーダーラチャクラが司る範囲である性行動が、最も重要なことになっています。
より高いチャクラが覚醒することによって、密教の5大要素とされ多くの人が執着している「肉・魚・ワイン・穀物・性行為」は、いずれ必要のないものになっていくといいます。
そのために、眉間への集中やウディヤナバンダやマントラ、様々なアーサナなども、それぞれの行法に対応したチャクラを目覚めさせるために有用な手段となります。
チャクラの覚醒によって、動物的意識が現れる
Each chakra is symbolized by a certain animal, indicating a type of animal consciousness, and if sudden awakening of a chakra takes place, you may exhibit some of the animal emotions in either a mild or very strong way. … Therefore, care must be taken not to give an explosive manifestation to the awakening of the chakras.
チャクラの覚醒において、様々な動物的な意識が現れてくることがあるといいます。
たとえば恐怖・心酔・暴力などは人間的な感覚ではなく動物的なものであり、人はそれをなんとか取り除こうと努力はしますが、動物的な面も内側に持っているというのは確かなことでしょう。
そのため、チャクラの覚醒に際しては、そういった動物的な感情が爆発的に現れることのないように気をつけながら進めるべきであると注意が記されています。
ステップ3:スシュムナーを覚醒させる
スシュムナーの覚醒には、また特別な行法を要する
If the chakras are awakened, ida and pingala are balanced and the other nadis are also purified, but there is an obstruction in sushumna, then the awakening of kundalini will not fulfil its purpose.
チャクラやイダー・ピンガラーが機能したとしても、依然としてスシュムナーに障害がある場合は、クンダリニーはその目的を果たすことができないといいます。これらは別々の要素であり、それぞれに対するアプローチが必要であるということでしょう。
ここで、クンダリニーがスシュムナーを通ることができずイダー・ピンガラーを通って上がっていった場合のことが説明されます。これもゴーピ・クリシュナ氏の散々なクンダリニー体験に対して、サティヤナンダ氏はそのリスクはないという見解を述べているように思えます。
クンダリニーがスシュムナー以外のナディを通った場合
In the ancient texts of tantra it has been clearly indicated that it does not matter if kundalini enters another passageway. If there is an awakening in pingala, one becomes a healer or a siddha, one who has control over nature, matter and the mind. When there is awakening in ida, one can predict things; he becomes a prophet. But when sushumna awakens, kundalini ascends straight to sahasrara and one becomes a jivanmukta, a liberated soul.
古の密教文献は、スシュムナーを通らずにクンダリニーが上がっていっても問題はないと明確に示している、とサティヤナンダ氏は述べています。
イダー・ピンガラーを通って覚醒した場合は、脳の特定の部分が機能するようになり、スシュムナーを通って覚醒した場合は、脳の全ての部分が機能するようになるといいます。
ピンガラーを通った場合はヒーラーやシッダ(成就者)となり、イダーを通った場合は予言者となり、スシュムナーを通った場合はジーヴァンムクタ(解脱者)となるだろう、と説明されています。
ハタヨーガとスシュムナー覚醒
So, hatha yoga and pranayama are prescribed for the awakening of sushumna. There are also other ways, but kriya yoga is the best, particularly the practices of maha mudra and maha bheda mudra.
ハタヨーガやプラーナーヤーマは、スシュムナーの覚醒のために適した技法であるとしています。その他にも方法はあり、クリヤーヨーガが最適であり、中でもマハームドラーとマハーベーダムドラーは最上であるとサティヤナンダ氏は示しています。
「ハタヨーガ」と「クリヤーヨーガ」といった分類は曖昧なところがあります。マハームドラーはハタヨーガプラディーピカーやゲーランダサンヒターなどに示されています。
参考:ハタヨーガプラディーピカー概説 3.10-3.31 〜「マハー(偉大な)」がつく3種のムドラー〜
参考:ゲーランダサンヒター概説3.6-3.24 〜ムドラー解説1〜
「maha bheda mudra マハーベーダムドラー」と「maha veda mudra マハーヴェーダムドラー」は紛らわしい名前ですが、別のものです。これらのムドラーはサティヤナンダ氏のオレンジ本でも解説されています。
「Asana Pranayama Mudra Bandha 英語版」Swami Satyananda Saraswati (著)
ちなみに私もマハームドラーなどの解説記事を数年前に書こうとしたのですが、チベット密教なども調べ始めた際に「マハームドラー」という言葉の持つ意味がとても広いということを知ったため思いとどまり、研究が進んでからにしようと思っています。
興味のある方は、チベット密教や日本の密教とクンダリニーヨーガの関係なども調べてみると良いかと思います。
参考:チベット密教/ツルティム・ケサン(著) 正木晃(著)|書籍紹介

スシュムナー覚醒とクンバカ(止息)
For awakening of sushumna, ida and pingala have to be suppressed. Thus you can see the importance of practising kumbhaka, breath retention. When both nadis are suppressed in kumbhaka, immediately after you’ll find that both nadis are flowing simultaneously. It is at this time that kundalini should awaken.
スシュムナーの覚醒に際しては、イダーとピンガラーは共に鎮静される必要があるといいます。そのため、クンバカ(止息)の行法が重要です。
クンバカによって両方のナディの流れが鎮まった直後、両方のナディが同時に流れるのを感じ、そのときにクンダリニー覚醒が起こる、と説明されています。
このあたりの微細な感覚の記述は注意深く読み解く必要がありますが、クンダリニーヨーガの行法に関する記述を具体的に読み進めていく中で明らかになっていくでしょう。
後に示されるクンダリニーヨーガの行法の中で、プラーナーヤーマ・クンバカ・ムドラーといったハタヨーガの技法が、最重要なテクニックとして扱われていくことがここで示唆されています。
次記事:「クンダリニー・タントラ/サティヤナンダ(著)」を読む【22】第1章 11節:下降するクンダリニー
前記事:「クンダリニー・タントラ/サティヤナンダ(著)」を読む【20】第1章 9節:覚醒か、狂気か
参考文献
「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)
「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)
「クンダリニー」ゴーピ・クリシュナ (著), 中島巌 (翻訳)
「Asana Pranayama Mudra Bandha 英語版」Swami Satyananda Saraswati (著)


