セルフケアやヨーガの勉強などのために、私が読んできた書籍を紹介していきます。
今回は、「チベット密教/ツルティム・ケサン(著) 正木晃(著)」です。(写真は旧版です)
「チベット密教 (ちくま学芸文庫)」ツルティム・ケサン (著), 正木 晃 (著)
簡単に言うと、どんな本?
様々なヨーガの道の中で、とくにハタヨーガは密教との関連が深く、技法にも共通するものが多いようです。「密教(タントラ)」はインドに生まれ、長い年月を経て洗練されてチベットへと伝わり、そこで完成されていきます。
この本では、インドからどのように密教が伝わっていったか、顕教と密教の関係性をどのように解釈したか、戒律と様々な技法をどうまとめて修行法としていったかなど、過去の名僧たちが密教を完成させていった過程とその技法が解説されています。
その中で、ヨーガの中でもよく見られる言葉や概念、日本の仏教にも伝わった「止観(サマタ・ヴィパッサナー)」など、馴染みのある言葉がたくさん出てきます。
どんな人にオススメ?
ヨガの歴史を調べたい人にとっては、とくにハタヨーガと関係の深い「密教」は重要な要素となります。
様々な瞑想法・観想法を知りたい人にとっても、参考になる部分が多いです。
密教はインドで発展し、中期密教はアジアを経て日本へ、後期密教は最終的にチベットへ伝わりました。ハタヨーガ(クンダリーニヨーガ)に見られる技法は、後期密教と共通するものが多いです。
また世間を騒がせた例の宗教団体が行っていた行法とも関連があり、グルだのポワだのといった言葉も出てきます。あのイメージの悪いヨガらしき行法が、現代ヨガとどういう関係性にあるのかといったことに興味がある人には、重要なヒントが得られるかと思います。
私個人の読んだ時期・感想
現代ヨガは「ハタヨガ」が元になったと言われていますが、私も記事によく書いているように、ハタヨーガと現代ヨガにはいろいろと異なる点があります。
また、ヨーガスートラのように瞑想を主とした古典ヨーガとハタヨーガを比較すると、包含関係にあると言われているとはいえ、主な行法はかなり異なります。
ではハタヨーガはどこから生まれたのか?
先に紹介した「ヨーガの哲学」「はじめてのインド哲学」などを読んでいくことで、インドの歴史のなかでどのようにヨーガが生まれて変化してきたのかが少しずつ見えてきました。
その中で、「ヨーガ」という言葉がよく出てくる「密教」に注目してみようと思い、いくつか密教関連の本を読んでいく中で、この本はとても役立ちました。
チベット密教の技法の中には、ハタヨーガ(クンダリーニヨーガ)と共通する技法も多く見られます。
さらに瞑想・観想の分野でも、それまでに調べていた仏教関連の瞑想法である「サマタ(止)」「ヴィパッサナー(観)」に関係する行法も出てきました。
瞑想の技法に関しては「ゾクチェン」という修行体系があり、それについてもその後調べていくことになります。様々な観想法があり、現代でも十分に応用できそうな技法がたくさんあります。
体を使った技法に関しては、ハタヨーガにも共通するなかなか過激な行法もあり、性的ヨーガについても多く語られています。
性的ヨーガは必要なのか、僧侶として戒律との折り合いをつけるにはどうしたらいいのか、様々な議論が長年繰り返され、密教はいくつもの派に分かれたようです。現在のダライ・ラマが属するゲルク派をつくりあげた重要人物ツォンカパは、この議論をうまくまとめあげ、ゲルク派が最大宗派となる基盤をつくったようです。
そういった人間らしい葛藤(そんなに性に執着があったんか、お坊さんたち…と思いますが、性的ヨーガにも意義があったようです)も描かれ、その歴史や行法の中に「ヨーガ」という語も、「無上ヨーガタントラ」「アヌヨーガ」「アティヨーガ」などとたくさん出てきます。また、現代ヨガでも使われている「ムドラー」や「ヨーギニー」や「サットヴァ」なども、意外な別の意味で使われていたりします。
数年前にアーサナ解説記事を書き進めていたころ、ムドラーに関する記事も書いていこうかなと思っていたのですが、この本に出会って、しっかり密教について調べてからにしよう…と思い、いったんそちらは筆を止めました。
ちなみにゾクチェンを調べていく中で、オウム真理教が修行に使用していたといわれる本にも出会いました。
「虹の階梯―チベット密教の瞑想修行」ケツン・サンポ (著), 中沢 新一 (著)
この本もおそるおそる入手して読んでみましたが、今回紹介している「チベット密教」にも示されていたようにまず「加行」という準備段階があり、しっかりと道徳的な素養を身につけてから、密教の行に入る様子が描かれていました。その前段部分を飛ばして密教に入ってしまうと、魔道に堕ちてしまうということかもしれません。そういったことはハタヨーガでもたびたび警告されています。
歴史を調べていくと、同じように魔道に堕ちてしまった人もいたようです。この本のあとにも、いろいろな宗教について調べ続けていますが、人間の持つ潜在能力、欲望、様々な本質的な面が見えてきます。
またチベット密教には、神智学や魔術といったものに出てくる概念とも共通するものが多く、やはり世界には共通する行法がいくつも点在しているのだと気づきました。
そのあたりの本も含めて、今後も、ヨガに関係なさそうだけど実はとても関係のある本を紹介していきます。
「チベット密教」の目次
- 第1部 歴史篇(チベット密教とはなにか;チベット密教の歴史;ツォンカパの生涯)
- 第2部 修行篇(ゲルク派の密教修行;秘密集会聖者流;カギュー派・サキャ派・ニンマ派の修行法)
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「チベット密教 (ちくま学芸文庫)」ツルティム・ケサン (著), 正木 晃 (著)