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ヴィパッサナー瞑想とは?|洞察力を高める「観」の瞑想

ヴィパッサナー瞑想とは?|洞察力を高める「観」の瞑想

「感覚」と「思考(反応)」を分離するトレーニング。

本来持っている観察力を呼び覚ます

最近流行り始めている「マインドフルネス瞑想」の元になっている、気づきの瞑想

「ヴィ:明確に」「パッサナー:観る」、様々なことに対して心を波立たせることなく、集中力を高め、本質を観ることができるようになっていく瞑想法です。

なにかひとつの物事に対して、「昨日は気にならなかったけど、今日は気になる…」ということがあるかと思います。

物事は同じなのに、全く違うものとして認識してしまう、それは全て思考の働きです。

ヴィパッサナー瞑想はこのような「感覚」と「思考(反応)」を分けるトレーニングです。

通常は、感覚が起こったあと、とても短い間に反応が起こるため、それが同時に起こっているように思えてしまいます。たとえば「音→うるさい!」という感じです。

しかし、ヴィパッサナー瞑想によってその「感覚」と「思考(反応)」の間の短い時間を分離することができるようになります。

「心乱されるな!」という精神論ではなく、具体的なトレーニングです。

それによって、「音」はただ「音」として、いろいろな物事に対して心乱されず、客観的に観ることができるようになっていきます。心乱されなくなることによって、よりたくさんの感覚を発見し、かつ物事の本質を観ることができる、本来自分が持っていた観察力が湧き上がってきます。

余談ですが、デザイナーの仕事でとても大切なのが観察力です。いろいろなデザインを観て吸収する力、自分が作ったものを観る力。デザイン以外の仕事でも、大事ですね。

1)まず今の心の波立ちを抑える

ヴィパッサナー瞑想を練習するときは、まずサマタ瞑想に含まれるような簡単な集中の練習を行って、心の波立ちを止めておきます。穏やかな湖面のように波立たない心で、自分や周りの世界をありのままに映すように準備をしていきます。

姿勢は、坐っていても仰向けに寝ていても、構いません。慣れてきたら、立った状態や歩きながらでも、そして日常生活を送りながらでも行うことができます。

まず坐った状態から練習してみましょう。瞑想に適した坐り方はヨガの坐法としてお教えしていますが、とくにコレでなくてはいけないというものではありませんので、長時間坐れそうな楽な姿勢で坐ってください。

≫安楽座・結跏趺坐などヨガのあぐら一覧

2)感覚を発見し、放っておく

まず体の各箇所に意識を向けていき、どのようになっているか観察していきます。どんな順番でも構いませんが、たとえば足の指から順番に上へ向かって観察していきます。
観察すると、いろいろな発見がありますが、それに対して分析や判断をせず、ただただ放っておきます

雑念がわいてくるかもしれません。
そのときは、「雑念・雑念・雑念」と3回頭のなかでラベルを貼って、いったんおいておきます。

坐っていると、足がしびれてきたり張ってきたりするかもしれません。
その場合はなるべくギリギリまで観察して、本当につらくなったら足を組み替えて構いません。

3)隙間なく勢い良く、頭のなかで実況中継する

感覚を発見したら、それに対して客観的な言葉で実況中継(ラベリング)します。声に出さず頭のなかで行います。
たとえば腰が痛い場合は「腰の右側が張っています」といったような表現で実況中継します。そのとき主観的な言葉で「腰の痛みがつらい」というように実況してはいけません。「腰が痛いのは昨日寒かったからかなあ…」などと分析してもいけません。

分析や期待をせず、今の状態をただ実況中継します。

連続で同じことを実況しても良いので、隙間なく行っていきます。それによって、思考(反応)が起こる隙間を作らず、ただただ物事を観るということのトレーニングになります。

意識を向ける先を移していって、体の中などにも向けていってみましょう。
「肝臓の働きがにぶっています、肝臓の働きがにぶっています・・・」

体の中だけでも細かく観察していったらキリがないですが、たとえば外側の世界にも広げていってみます。
「鳥の声、鳥の声・・・」
「車の音、車の音・・・」

いつもなら「車の音→うるさい!」となってしまうところを、ただただ客観的に実況していきます。

雑念がわいてきたら、先ほどと同じく「雑念・雑念・雑念」です。

なんだか冷たい人間になってしまいそう?

義理人情を重んじる日本人にとって、「ラベリング」はかなり冷たい手法のように思えます。

反応(衝動)を抑えてしまうのは、人間らしくないと思う人もいるでしょう。

心配しなくても、全ての反応をいきなり手放してしまうことはできません。心を乱す「悪い反応」から分別して、手放していけばいいのです。

ごちゃごちゃになった雑念を、まず「反応を分別する」ためにもラベリングは有効なのです。

最終的には、言葉を捨てる

ラベリングではなるべく主観を含まない言葉を用いますが、言葉というのは少なからず思考を含んだもの。同じ言葉でも、人によって別のものが想起されてしまうこともあります。

そのため、言葉を用いていたのでは物事のありのままを描き出すことはできません。

それは言葉では表すことのできないものです。言葉を捨てることで、「ああ、それな。」といった感覚でありのまま観察できるようになっていきます。

ただ、いきなりそこへ到達するのは難しい。

なので、ラベリングのような練習を積んで、まずは明らかに要らない雑念や色眼鏡を取り除いていくように進めていくのが良いでしょう。

日常生活でもヴィパッサナー

このように「感覚」と「思考(反応)」を分離する練習をしていくことで、いつもは心乱されていたことに対しても一旦ラベリングをしてみることで、「つらい」という反応が起こるのを抑えることができるようになります。

たとえば過去の記憶やトラウマが突然蘇ってきたときも「過去・過去・過去」「過ぎたこと・過ぎたこと・・・」などとラベリングしてしまえば、それにとらわれることが少なくなっていきます。

では、これを続けていくと、何が起こっても感動しない人間になってしまうのか?
そんなことはありません。一旦分離することで、コントロールができるようになるということです。
美しいものをみたり美味しいものを食べたりしたら感動し、惑わされなくていい余計なことが起こったときには心乱されないように、そんな理想的な心の状態を作っていくことができます。

すぐに効果が分からなくても、練習していくことで必ず身につけることができますので、ぜひ日常生活でも続けてみてください。

基本的には内観を深めるものなので、慣れれば一人で深めていくことができますが、誰かと同じ空間で、いろいろな気づきを見つけてみるのも良いかと思います。

≫集中力を養う、サマタ瞑想

≫マインドフルネス瞑想の流れと練習法

参考書籍

「ヴィパッサナー瞑想 図解実践 (自分を変える気づきの瞑想法【第4版】)」アルボムッレ・スマナサーラ (著)

「ゴエンカ氏のヴィパッサナー瞑想入門: 豊かな人生の技法」ウィリアム・ハート (著), 日本ヴィパッサナー協会 (監修)

「マインドフルネス」バンテ・H・グナラタナ (著)

男性ヨガインストラクター 高橋陽介の写真

by 高橋陽介

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