ヨーガスートラを私なりに読み進めていくシリーズ。
英訳出典:http://yogasutrastudy.info/
サンスクリット語辞書:http://spokensanskrit.org/
訳者の略称は下記の通りです。
[SS]: Swami Satchidananda
[SV]: Swami Vivekananda
Sutra 2.40 シャウチャー(清浄)
शौचात् स्वाङ्गजुगुप्सा परैरसंसर्गः॥४०॥
śaucāt svāṅga-jugupsā parairasaṁsargaḥ ॥40॥
(読み)シャウチャーッ スヴァーンガ ジュグプサー パライラサンサルガハ
(訳)シャウチャー(内的・外的な清浄)に徹することで、自身の体に対してすら嫌悪感が生じ、他者の体と交わることへの興味もなくなる。
[SS]: By purification arises disgust for one’s own body and for contact with other bodies.
[SS訳]: 浄化によって、自身の体に対しても、他者の体と交わることにも嫌悪感が生じる。
[SV]: Internal and external cleanliness being established, arises disgust for one’s own body, and non-intercourse with other bodies.
[SV訳]: 内的・外的な清浄に徹することで、自身の体に対してすら嫌悪感が生じ、他者の体と交わることへの興味もなくなる。
Sutra 2.41 シャウチャーの効果
सत्त्वशुद्धिसौमनस्यैकाग्र्येन्द्रियजयात्मदर्शनयोग्यत्वानि च॥४१॥
sattva-śuddhiḥ saumanasya-ekāgra-indriyajaya-ātmadarśana yogyatvāni ca ॥41॥
(読み)サットヴァ シュッディヒ サウマナスヤ エーカーグラ インドリヤジャヤートマダルシャナ ヨーギャトヴァーニチャ
(訳)さらに、サットヴァの純粋性・心の快活さ・集中力・感覚の制御・自己実現への適性を得る。
[SS]: Moreover, one gains purity of sattva, cheerfulness of mind, one-pointedness, mastery over the senses, and fitness for Self-realization.
[SS訳]: さらに、サットヴァの純粋性・心の快活さ・集中力・感覚の制御・自己実現への適性を得る。
[SV]: There also arises purification of the Sattva, cheerfulness of the mind, concentration, conquest of the organs, and fitness for the realisation of the Self.
[SV訳]: そしてまた、サットヴァの浄化・心の快活さ・集中力・感覚器官の支配力・自己実現への適性が沸き起こる。
Sutra 2.42 サントーシャ(知足)
संतोषादनुत्तमसुखलाभः॥४२॥
saṁtoṣāt-anuttamas-sukhalābhaḥ ॥42॥
(読み)サントーシャーッ アヌッタマス スカラーバハ
(訳)サントーシャ(知足)によって、至上の幸福がもたらされる。
[SS]: By contentment, supreme joy is gained.
[SS訳]: 幸福感によって、至上の喜びがもたらされる。
[SV]: From contentment comes superlative happiness.
[SV訳]: 幸福感から、至上の喜びが訪れる。
Sutra 2.43 タパス(熱意・苦行)
कायेन्द्रियसिद्धिरशुद्धिक्षयात्तपसः॥४३॥
kāyendriya-siddhir-aśuddhi-kṣayāt tapasaḥ ॥43॥
(読み)カーイェンドリヤ スィッディラシュッディ クシャヤーッ タパサハ
(訳)タパス(苦行・熱意)によって、体と感覚の不純が破壊され、超自然的な力が得られる。
[SS]: By austerity, impurities of body and senses are destroyed and occult powers gained.
[SS訳]: 苦行によって、体と感覚の不純が破壊され、超自然的な力が得られる。
[SV]: The result of mortification is bringing powers to the organs and the body, by destroying the impurity.
[SV訳]: 苦行の結果は、不純を破壊し、感覚器官と体に力をもたらす。
Sutra 2.44 スヴァーディヤーヤ(自己研鑽・聖典の研究・読誦)
स्वाध्यायादिष्टदेवतासंप्रयोगः॥४४॥
svādhyāyād-iṣṭa-devatā saṁprayogaḥ ॥44॥
(読み)スヴァーディヤーヤーッ イシュタ デーヴァター サンプラヨーガハ
(訳)スヴァーディヤーヤ(自己研鑽・聖典の研究・読誦)をすることで、望んだ神霊との交わりが訪れる。
[SS]: By study of spiritual books comes communion with one’s chosen deity.
[SS訳]: 霊的な書物を研究することで、望んだ神霊との交わりが訪れる。
[SV]: By repetition of the mantram comes the realisation of the intended deity.
[SV訳]: マントラ(真言)を繰り返し唱えることで、望んだ神々が現れる。
Sutra 2.45 イーシュヴァラプラニダーナ(献身・宇宙意識への帰依)
समाधिसिद्धिरीश्वरप्रणिधानात्॥४५॥
samādhi siddhiḥ-īśvarapraṇidhānāt ॥45॥
(読み)サマーディ スィッディヒ イーシュヴァラプラニダーナーッ
(訳)イーシュヴァラプラニダーナ(宇宙意識への完全な帰依)によって、サマーディは達成される。
[SS]: By total surrender to God, samadhi is attained.
[SS訳]: 神への完全な帰依によって、サマーディは達成される。
[SV]: By sacrificing all to Isvara comes Samadhi.
[SV訳]: イーシュヴァラに全てを捧げることで、サマーディは訪れる。
解説・考察
アシュターンガヨーガ(8支則のヨーガ)の第2支則「ニヤマ」の5項目の説明がこれらの節で示されています。
「ニヤマ」自体の訳としては、「勧戒」あるいはpersonal code(個人的規範)などがあります。
ヤマの5項目で執着を手放したあと、どのようなことを行っていくべきかということが示されていますが、後半の3つが2.1節でクリヤーヨーガ(行為のヨーガ)として先に示されているように、シャウチャー(清浄)やサントーシャ(知足)はヤマのほうに分類されても良いような気もします。
書物によってこの分類法は少しずつ異なり、たとえばハタヨーガプラディーピカーではシャウチャーがヤマの中に分類されています。
各項目についての解釈は、下記の記事で一度まとめてありますので、参考にしてください。
≫ヨガの第2支則「ニヤマ」を元に、現代向け自己研鑽
≫ヨーガスートラが示す、第2支則「ニヤマ」を実践する意味
≫ヨーガスートラ解説 2.46-2.48
≪ヨーガスートラ解説 2.35-2.39