マインドフルネスや瞑想を実践する人が少しずつ増えているようで、坐法を教わりたいという方もプライベートクラスによくいらっしゃいます。
この記事では、ヨガ・坐禅で用いられる様々な「あぐら」の坐り方をご紹介します。
この記事の目次
- あぐらができなくても大丈夫、ヨガの「坐り方」のポイント
- あぐらを深くできるようにするための準備運動
- 一番簡単なあぐら「スカーサナ(胡坐・安楽坐・安楽座)」
- 股関節を開く練習にもなる、一番スタンダードなあぐら「アルダシッダーサナ(半分の達人坐)」
- チャクラを刺激する、瞑想の定番坐法「シッダーサナ(達人坐)」
- しっかり足を固定できて、冬にもオススメの坐法「スヴァスティカーサナ(吉祥坐)」
- 蓮華座の練習「アルダパドマーサナ(半蓮華座・半跏趺坐・半跏坐)」
- 坐禅・瞑想の定番坐法「パドマーサナ(蓮華坐・結跏趺坐)」
- 股関節の柔軟性を高める練習「アグニスタンバーサナ(焚き木のポーズ)」
- 手と足を結び、内側のエネルギーを高める「バッダパドマーサナ(縛った蓮華坐)」
- エネルギーを体内に閉じ込めて、治癒力を高める「ヨガムドラー」
- 左右対称な合蹠ポーズ「バッダコーナーサナ」
- 左右対称な、あぐら以外の坐法
- 様々なアーサナにもつながる形「ディヤーナヴィーラーサナ」
- ヨガの坐法(アーサナ)の練習法
あぐらができなくても大丈夫、ヨガの「坐り方」のポイント
基本的には、骨盤・背骨が直立していれば、どんな坐り方でも大丈夫です。
あぐらができない場合は、正座(ヴァジュラーサナ)や割座(ヴィラーサナ)などの坐法でも構いません。また椅子に座っていても瞑想は可能です。
どんな坐法でも、背骨はなるべく立てられるようにしていきましょう。それが難しい場合は、適切なヨガのポーズを行って、体幹や股関節の柔軟性を高めていくと良いでしょう。
坐法の選び方に関しては、以下の記事も参考にしてみてください。
参考:坐法の選び方・練習法、左右対称の坐法・非対称の坐法について
背骨を立てる理由
背骨を立てることが重要とされる理由は、様々な観点から説明されますが、「背骨をまっすぐ立てられるのは人間だけ」という進化の過程を考えるのがヒントかもしれません。
人間らしく頭を働かせる、そして使っていなかった脳の部分を使えるようにするには、背骨が正しくS字の形で立っているのが一番のようです。
たとえば脳脊髄液の循環には頭蓋骨と仙骨の動きが大きく関わりますが、背骨が偏っていると仙骨の動きも悪くなり、頭蓋骨にも偏った負担が生じます。
また、手足を正しく使うには、バランスの良い姿勢である必要があり、それには背骨がニュートラルの位置にあって、全身に余計な力が入っていない状態で待機していることが有効です。
背骨を正しく立てるためには、体幹トレーニングや背骨を柔軟にするエクササイズなども重要です。
背骨が立たせるのが難しい場合
もし、股関節や背骨がかたくて、骨盤が後ろに倒れて腰が丸まってしまうようであれば、坐骨の下にブロックやクッションやたたんだ毛布などを入れてお尻を高くして、あぐらの練習しましょう。
これはズルしているわけではなく、このほうが重力を味方にできて、股関節の柔軟性を早く正しく高められます。
膝を痛めていて曲げられない場合などは、体育座りのような形でも結構ですが、背中が丸くなりやすいので、やはりお尻の下になにか敷いて行うようにしてみましょう。
あぐらが難しければ、椅子座でもOK
椅子に座って瞑想したりする場合は、膝が90度に曲がって、太ももが水平の状態で、足裏全体がちょうど床につくように座面を調整します。
座面が高すぎて足が浮いてしまうようであれば、足の下に本やブロックなどを置いて高さをつくるようにしましょう。
座面の低すぎる場合は、座布団などをお尻の下に敷いて調整ます。
背もたれも使って構いませんですが、体幹と股関節の柔軟性と強さを少しず身に着けて、できるだけ背もたれに頼らずにまっすぐ背骨を立てられるようにしていきましょう。
今の自分に合った「快適で安定した坐法」を選ぶ
正しい姿勢をとって坐り続けていれば、だんだんと柔軟性が高まり、安定した気持ち良い坐法がとれるようになっていきます。
日常生活でも、なるべく椅子ではなく地べたに、背骨を立てて坐るようにしてみてください。
ハタヨーガの教典では、瞑想に適した坐法として特に最上とされる2つの坐り方は、下記に示すシッダーサナ(達人座)とパドマーサナ(蓮華座)とされることが多いです。
またヨーガスートラでは、坐法は「快適で安定していること」とだけ示されていて、具体的な坐法は示されていません。
参考:ヨーガスートラ解説 2.46-2.48 〜アーサナ(坐法・姿勢)〜
あぐらを深くできるようにするための準備運動
あぐらをしっかり組むには、股関節だけでなく足指・足首・膝・腰などの柔軟性も必要です。
蓮華坐など柔軟性を必要とするあぐらを行うときは、組む前に準備運動を行っておくと良いでしょう。
股関節を外回しする
椅子に坐って行っても、床に坐って行っても、どちらでも可能です。
股関節を外回しする動きは、足首はしっかり90°曲げておき、横に床があってしっかり立っているような足を保ちながら、足を太ももの一番下(膝に近いところ)に置き、その形のまま膝を水平まで下ろす練習をします。
お尻の重心は、偏らないように中央に保ちます。骨盤も後ろに倒れないように、下腹と背筋に意識をします。
パタパタと倒す動きを、左右20回ずつくらい練習します。毎日行うと、少しずつ下へおろせるようになっていきます。「下へおろす」といっても、直線的におろすわけではなく「膝が外へむくように、股関節が外回しされる」回転運動であるという意識で行いましょう。
股関節を内回しする
両脚の股関節を内回しして、脚を二回巻きつけるような形をつくる練習をします。
股関節が内側へまわるということは、膝が内側を向きます。骨盤の向きは変えないように、下腹と背筋に意識をします。
可能な限り巻き付けたら、骨盤の向きと背骨を良い姿勢に保ちながら、左右それぞれ10呼吸ほどキープする練習をします。
最初は二回巻きつけるのが難しいかもしれませんが、その場合はまず膝を内へ向けるということを意識しましょう。股関節が内に回るには、お尻の筋肉がリラックスしている必要があります。テニスボールやこぶしをつかってお尻をほぐしておくのも効果があるかもしれません。
これはガルーダーサナ(ワシのポーズ)の脚の練習にもなります。
膝をしっかり曲げる
これが意外と難しいという人が多いようです。椅子に座り続けている弊害が、こういったところにも出ています。
椅子に座っていると、たしかに膝を完全に曲げるということが少ないかと思います。そうすると、太ももの前側や足首が固くなってきます。
あぐらの形をよく観てみると、膝をしっかり曲げているのがわかるかと思います。
膝がしっかり曲がっていたほうが、膝を痛めるリスクが減り、股関節の柔軟性も高めやすくなります。
これは椅子に座っては行えないので、立って行うか、正座や仰向けの割座などで練習します。
かかとをしっかりお尻に近づけ、足首を伸ばし、骨盤の向きはなるべく保ちながら、膝を真下へ向けていくようにします。
左右それぞれ10呼吸ずつキープする練習をします。
膝の内側が痛くなってしまう場合は、以下の記事も参考にしてみてください。
参考:あぐら・蓮華座・割座をしたり歩いたり走ったりするときに、膝の内側が痛いときのヒント
体全体の準備運動
股関節や脚まわりだけでなく、背骨や肩なども動かしておくと良いでしょう。
ヨガにも全身の準備運動に適した、「パワンムクターサナ」と呼ばれる一連の動きが用意されています。
≫パワンムクターサナ1〜全身の関節を動かす、ヨガの準備運動〜
イスに座ってできるチェアヨガでも、充分に体を動かせます。以下のチェアヨガ・ベーシックは、パワンムクターサナをベースにつくったものです。
一番簡単なあぐら「スカーサナ(胡坐・安楽坐・安楽座)」
足首はなるべく90°に曲げて、膝をしっかり曲げてすねをクロスします。太ももの外側が、足の内側(親指側の側面)の上に乗っている形になります。
骨盤が後ろに倒れて背中が丸くなってしまいやすい坐り方なので、坐骨の下にたたんだ毛布などをしいて骨盤を高い位置に置くとまっすぐ坐りやすくなります。
足首は90°に近い角度で曲げておくと強い構造になり、長時間支えられます。
股関節を開く練習にもなる、スタンダードなあぐら「アルダシッダーサナ(半分の達人坐)」
一般的なヨガスタジオでは、この形で坐っている人が多いような気がします。股関節を柔軟にするために効果的なので、基本的にはこの坐り方を練習していくのが良いと思います。
足首はまっすぐ伸ばして、膝を曲げて大きく横に開き、手前においた足のかかとを骨盤底(会陰)にあて、両かかとを体の前の真ん中に揃えるようにします。足同士は重ねません。
この形をスカーサナと呼ぶ場合もあるようですが、とくにアーサナ名にはこだわらなくて良いかと思います。
参考:「正しいアーサナ(ヨガのポーズ)」ってなんだろう?
股関節の柔軟性が足りない場合は、膝が浮いてしまったり骨盤が後ろに倒れてしまうと思いますので、ブロックやクッションの上に座ることで膝の位置が下がり、骨盤も立てやすくなります。
足を置く順番は、左右どちらが先でもできるようにしておきましょう。
この形を練習しておくと、アシュタンガヨガのジャーヌシルシャーサナA(片脚前屈)を深める場合などにも役立ちます。
チャクラ瞑想に適した定番坐法の一つ「シッダーサナ(達人坐)」
アルダシッダーサナで、遠くに置いていたほうの足を、手前の足の上に重ねます。
下においた足のかかとを骨盤底(会陰)にあて、上においた足のかかとを恥骨にあてます。
現代のハタヨガの元となった古典「ハタ・ヨーガ・プラディーピカー」では、最も実践すべきアーサナとして示されています。
女性には適していないという考え方もあり、両方のかかとを少しずらして鼠径部にあてる「シッダヨーニアーサナ」を行うのが良いでしょう。
会陰の上にあるムーラダーラチャクラと、恥骨の奥(あるいは尾骨)にあると言われるスヴァディシュターナチャクラを刺激するので、チャクラ瞑想に適した坐法です。
足を置く順番は、左右どちらが先でもできるようにしておきましょう。
しっかり足を固定できて、冬にもオススメの坐法「スヴァスティカーサナ(吉祥坐)」
シッダーサナに近い形で、足を太もも裏とふくらはぎではさむ形で坐るあぐらです。
足がはさまれるので温かく、冬にもオススメです。両足をはさむのは股関節や足首の柔軟性が必要ですが、まずは上に重ねたほうの足をはさむ坐り方から練習してみましょう。
スヴァスティカとは卍を指す言葉で、足の交差する形がたしかに卍のように見えますね。
蓮華座の練習「アルダパドマーサナ(半蓮華座・半跏趺坐・半跏坐)」
足首はまっすぐ伸ばして、片方の足を反対側の鼠径部に置きます。
両方の足をクロスして鼠径部に置くパドマーサナ(蓮華坐)の準備ポーズでもありますが、これはこれでとても落ち着く坐法です。
坐禅・瞑想の定番坐法「パドマーサナ(蓮華坐・結跏趺坐)」
仏像などもこの坐り方をしていることの多い、坐禅・瞑想に適した坐法です、
うまく組めると、鼠径部から下半身の血行を促進し、またエネルギーが外や下に逃げていかない感覚が味わえます。
足がしびれないように長時間坐るためには股関節や足首の柔軟性が必要ですが、練習していく過程で股関節がだんだん柔らかくなっていき、冷え性や内臓の働きの改善など様々な体にイイコトが起こります。
難しそうに見えますが、トライする価値のある最重要坐法のひとつです。
詳しい練習法は下記の記事を参考にしてください。
股関節の柔軟性を高める練習「アグニスタンバーサナ(焚き木のポーズ)」
瞑想用の坐法としてはあまり扱われないのですが、股関節を外回しする強力な練習法なので、パドマーサナの練習などにつかえる坐法です。
足首を90°に曲げて、両スネを真横に重ねます。膝が浮いてしまう場合は、しっかりお腹を引き入れて、背骨を立てて坐り、重力に任せてだんだん股関節が開いていくのを待ちます。
陰ヨガでは「スクエアポーズ」とも呼ばれます。下記の記事も参考にしてください。
≫アグニスタンバーサナ(陰ヨガのスクエアポーズ・ダブルピジョン・薪のポーズ・焚き木のポーズ)
チェアヨガ用のアグニスタンバーサナも別記事で解説しています。
≫アグニスタンバーサナ@チェアヨガ
手と足を結び、内側のエネルギーを高める「バッダパドマーサナ(縛った蓮華坐)」
パドマーサナの形から、両腕を背中側にまわして、足の親指をつかみます。
鼠径部の深い位置に足首を置くために股関節の柔軟性と、胸を開いて肩甲骨を寄せる柔軟性も必要です。
つかめない場合は、まず肘同士を手でかかえて、肩甲骨を寄せて胸を開く練習から始めましょう。
エネルギーを体内に閉じ込めて、治癒力を高める「ヨガムドラー」
もはやこれは背骨が直立していないので、坐法という扱いではないですが、ついでにご紹介。
バッダパドマーサナから前屈していきます。親指がつかめなかった方は、肘をかかえた状態で大丈夫です。
前屈することで、お腹で作られた熱を最大限に高めて保ちます。
その熱が体中を癒やしていくイメージをしながらゆっくり呼吸しましょう。
坐骨はしっかり接地するように、腰を伸ばします。
左右対称な合蹠ポーズ「バッダコーナーサナ」
足裏同士をあわせて、膝を床に下ろす坐法。股関節・膝関節・足首など、全体的な柔軟性が必要になります。
この坐法は、ほかのあぐらとは異なり、左右対称であるという大きな特徴があります。深く膝を下ろすことができれば、対称軸であるセンターラインへの意識が高まります。
やり方は下記の記事で解説しています。
左右対称な、あぐら以外の坐法
左右対称という点では、正座・割座・バドラーサナなども瞑想に用いられます。
様々なアーサナにもつながる形「ディヤーナヴィーラーサナ」
ゴームカーサナや陰ヨガのシューレースポーズと同じ脚の形ですが、これも背骨を直立させると、瞑想に適した坐法になります。
また、坐っているだけでも股関節の柔軟性を高めることができ、ながらヨガにも適した姿勢になります。
やり方は下記の記事で解説しています。
ヨガの坐法(アーサナ)の練習法
無理に難しい坐法にいきなりトライすると、足がしびれたり足首や膝を痛めてしまいます。
簡単なものから順番に練習していきましょう。坐っているだけでも股関節に効くので、アルダシッダーサナをずっと行っているだけでも十分な効果があります。
骨盤を立てて、左右の坐骨に均等に重さをかけて坐ります。骨盤が立たない場合は、ブロックやクッションや坐布の上に坐って練習しましょう。
正しい姿勢で、重力を味方につけた状態で坐り、太もも・お尻・腰にかかっている余計な力を抜いていきましょう。
もし地べたに坐る生活をしていれば、これらの坐法は難なく行えるはずなのですが、長い椅子生活に慣れてしまった体は股関節や太ももやお尻がとっても固く・偏ってしまっています。
チェアヨガ入門なども参考に、なるべく普段から下半身の柔軟性を高められるような生活を心がけてみてください。
きっと体にとっても良い変化が起こってくるはずです。
また、股関節を柔軟にするためのヨガクラスとしては、アシュタンガヨガもオススメです。運動量の多いヨガですが、前屈・股関節回転がテーマになっていますので、繰り返し練習することで柔軟性・体力・筋力がバランスよく身についていきます。