「力を抜く」のが苦手、という人も多いのではないでしょうか。
陰ヨガは、「力の抜き方」を思い出させてくれて、体の深部に刺激を与え、いままで動かないと思いこんでいた部分が動き始めるきっかけを与えてくれるヨガです。
この記事では、陰ヨガの特徴や効果、主なポーズ一覧、リストラティブヨガとの比較、マインドフルネス・瞑想との関係などをまとめておきます。
この記事の目次
陰ヨガとは・陰陽ヨガの特徴と効果
運動量の多いヨガを「陽」とすると、陽ヨガの特徴としては以下のようなものがあります。
- 各ポーズは短い時間キープ(たとえば5呼吸など)し、比較的たくさんのポーズを行う
- 筋力・活力を積極的に使って、体に変化を起こす(能動的)
陽ヨガの効果としては、
- 心身の正しい使い方を学ぶ
- 筋力・体力・柔軟性を高める
といったものがあります。どちらかというと積極的・能動的に変化を起こしていくというイメージです。
それに対して陰ヨガの特徴としては、
- 各ポーズのキープ時間が長い
- 力をなるべく抜いて、重力にゆだねる(受動的)
というものです。それによる陰ヨガの効果としては、
- 忘れていた「力の抜き方」を思い出し、心身の深部を動かしていく
- 余計な力によってじゃまされていた、本来の柔軟性を取り戻す
といったものがあります。どちらかというと受動的なイメージです。
ここで言う身体の深部とは、陽ヨガで主に扱うインナーマッスルよりももっと奥にある骨・関節なども含まれ、また目に見えるもの以外の「気」「経絡」といったものも扱うこともあります。
柔軟性を効果的に引き出す、陰と陽のヨガの活用法
柔軟性を高めるには、必要な筋肉(主働筋)を使い、その逆側の筋肉(拮抗筋)をゆるめる必要があります。
参考:主働筋と拮抗筋の一覧
アシュタンガヨガのような動きのあるヨガの中では筋肉を「使う」ほうはやりやすいですが、片側・部分への意識(使う側、あるいは引っ張られて痛い側)に偏ってしまうことが多いようです。
動きの中で、「逆側を含めて全体を意識する」ことができるようになるには、深い呼吸と集中力を伴った練習が必要です。
そのような全体意識を身につけるのが難しい場合、まずは「ゆるめる側の感覚」を身につけるのに、陰ヨガはとても有効です。
まずは余計な力を全部手放して重力にゆだねてみることで、今動かせる本来の可動域に気づくことができるようになっていきます。
陰ヨガで力の抜き方や全体への意識を磨き、陽ヨガで全体の筋力をつけていきます。
全体意識を磨き、効率良い変化を起こしていくためには、陰と陽どちらのヨガもやっていくことが有効です。
陰ヨガの主なアーサナ(ポーズ)一覧
冒頭の写真のアーサナは、陰ヨガで「バタフライ」と呼ばれている代表的なポーズのバリエーションです。
陰ヨガでは、人それぞれ柔軟性にあわせてボルスター・ブロック・ブランケットなどを使うことも多いです。
これには、余計な力をぬいた状態で骨や筋肉の配置(アラインメント)を整えられるようにし、適切な箇所を動かして、過度に動いて痛めてしまうことを防ぐといった目的があります。
また陰ヨガでは、骨や関節・インナーマッスルといった身体の内部に関する知識や、経絡に関する知識を活用することも多いです。経絡を通すことを意識して陰ヨガのアーサナを行うと、内臓の働きにも効果的です。
陰ヨガの実践がうまく行えると、いままで動かないと思っていた体の深部がぬるぬるっと重力に合わせて動き始めます。
ポーズを終える際に目を開けると「自分の体、こんなところまで動かせたの?」という、自分の体じゃないような感覚になることがよくあります(この感覚がとっても楽しいのです)。
「体は『自分そのもの』ではなく、『借り物』である」というヨガ哲学も感じられるかもしれません。
陰ヨガには以下のような、重力をうまく活用して身体の深部を動かしていくようなポーズが多くあります。ただ私のレッスンでは、「陽ヨガのポーズを陰ヨガ的に深める」ということもよく行っていますので、陰ヨガ特有のポーズだけを行っているわけではありません。
リストラティブヨガと陰ヨガの比較
陰ヨガと似ているヨガとして、「リストラティブヨガ」があります。同じ形のポーズもあり、ブロックやボルスターなどのプロップスを多用するのも似ています。
リストラティブヨガと陰ヨガの違いは、まず狙いとする部位と目的です。
- リストラティブヨガは筋肉を休ませる目的
- 陰ヨガは関節や靭帯などの深部組織を動かし柔軟性を高める目的
リストラティブヨガは完全に力を抜きますが、陰ヨガは一定の圧をかけ続けて深部組織を動かしていきます。
ただリストラティブヨガも筋肉の余計な緊張をぬいていくので、結果的に柔軟性が高まります。
陽のヨガとの比較をすると、
- 陽ヨガ:表面の筋肉などの「浅い組織」を主に意識する
- 陰ヨガ:インナーマッスルや関節などの「深い組織」を主に意識する
- 陽ヨガ:比較的、「筋肉を使う」ことを意識する
- リストラティブヨガ:「筋肉を休める」ことを意識する
どちらも、「陽」とは逆の要素を行えるため、組み合わせて行えば効率的にバランスよく体を変えていくことができます。
マインドフルネス・瞑想と陰ヨガの関係
深部を「動かす」といっても、自分の力をなるべく使わないようにし、重力や周りの力に委ねて動き始めるのをただただ観察するというアプローチです。
ありのままを観察するということは、マインドフルネス瞑想と同じ考え方なので、すべてのポーズがマインドフルネス瞑想であると考えることもできます。
瞑想と同じように、アーサナを長時間キープするので、途中で集中力が途切れてしまうということもあるかもしれません。その場合は、下記の記事を参考にしてみてください。
バランスよく、いろいろなヨガをやってみましょう
陰と陽を意識してヨガをする
使う筋肉とゆるめる筋肉、体の表側と裏側、アウターマッスルとインナーマッスル、マインドフルに観察していくと、どんなヨガにも、日常のどんな動きにも、陰と陽の要素があります。
ヨガのレッスンの中でも、呼吸法などで落ち着く陰の要素から始まり、太陽礼拝や立位のアーサナのような陽の要素でピークを迎え、最後は坐位のストレッチやシャヴァーサナといった陰の方向へ向かって行きます。
これは人生と同じような流れとも言われますね。陰から始まり、陽でピークを迎え、屍(シャヴァーサナ)になって陰へ戻る。
(赤ちゃんは結構動き回るから陽なのでは?と最初思ったのですが、基本的にはほとんど寝ているので陰と考えるようです。)
例えばシヴァナンダヨガはアーサナ間にシャヴァーサナやリラクゼーションが入るので、特に陰と陽のバランスの良いヨガです。
ドーシャバランスで陰陽ヨガを選ぶ
だるいなー、うごきたくないなーというときは陰が強いとき(タマス)。
気がせかせかイライラしたりするときは陽が強いとき(ラジャス)。
ドーシャで言うと、カパの人はタマスの要素が強くなりがち。ヴァータ・ピッタの人はラジャスの要素が強くなりがちです。
基本的には、自分が傾いているなと感じた側と逆側のヨガ、逆側の食べ物、逆側の人とつきあってみると、バランスが取れます。
自分を観察し、偏らないように、逆側のものもうまく取り入れてバランスよく生きていけるようにしましょう。