ピラティスには腹筋をきたえるエクササイズがたくさんありますが、主要なエクササイズには上半身を「カールアップ」した状態で行うものが多いです。
背骨をゆるやかに丸めながら、頭・首・肩を床から持ち上げていき、肩甲骨の下端が少し床から離れるくらいまで上がるのがカールアップです。代表的なピラティスの腹筋系エクササイズでは、カールアップした状態から、体幹を安定させて、股関節や肩関節を動かしていくという運動が多いです。
しかしこういったエクササイズを行っているとき、腹筋を使うよりも先に、首が痛くてめちゃくちゃ疲れてしまうという人が多いようです。
今回は、首が痛い場合にどうやってピラティスの練習を進めていくか、ヒントを簡単にまとめておきます。
ピラティスを始める前に、首をできるだけゆるめておく
かたまっているものは、思うように動かせない
姿勢改善のためにピラティスを始める方も多いかと思いますが、ふだんから猫背になっていることが多い場合、首のまわりの筋肉はすごくかたまっています。
首がかたまっていると、思うように動かせなかったり、動かした時に痛みが出たり異常に疲れたりします。
ただ、意外と首を触ってみたり必要以上に動かしたりすることを日常生活のなかで行わないために、かたまっていることに気づいていないことも多いです。まずは一通り、首の周りを触ってみると良いでしょう。
カールアップの動きの始まりは、わずかな首のうなずきの動きです。とくに一番上あたりの首、頭と首の境目のあたりは、目の使いすぎなどで固まっている人が多いでしょう。
また、首の一番下の部分、肩との境目のあたりも、肩甲骨とともに固まっている人が多いかと思います。
首を正確に動かせるようにするには、首全体・肩も含めて、まずできるだけゆるめておき、自由に使えるように準備しておくと良いかと思います。
ピラティスをする前にゆるめておくと、レッスンがより有意義になるかも
ピラティスのレッスンの前に時間があれば、首をやさしくマッサージしたりストレッチしたりするなどして緩めておくと、レッスンで本来使いたい腹筋や背筋が効率的に使えるようになるかもしれません。
私のピラティスのレッスンでは、最初に背骨と首の準備運動を少し行うようにしています。
首の固まりやすい部分と、ゆるめ方
人それぞれ姿勢や動きの癖が異なるので、一番固まっている場所は様々です。前後左右、全体的に首をやさしく触ってみながら、固まっているところを探してみましょう。
マッサージするときもあまり強くもみほぐさないように、やさしく触りながら呼吸を通すようにして行ったり、軽く押しながら流すように行うと良いかと思います。
参考:セルフケアにも活用できる、ヒーリングや整体の「手技」の種類
特に固まっていることが多いのは、後ろ側の首と頭の境目あたりの部分や、首の側面にある胸鎖乳突筋や斜角筋といった筋肉かと思います。
また、後ろや横が気になることが多いかと思いますが、意外と首の前側も固まっていることが多いです。触るのは少し怖いかもしれませんね。喉ぼとけの周りやアゴの下などを、やさし〜く触って少し上下左右に動かしたり、触りながら呼吸をするなどしていると、緩んできます。
ゆるめる前と後で、首の動きや頭の軽さなどを比較してみると良いでしょう。どれだけ固まっていたのか、気づくきっかけになるかもしれません。
首が痛くなるのを防ぐ、ピラティスのやり方のコツ
いくつかコツを挙げていきますが、首に関わる癖は人それぞれ異なり、また人それぞれ適した表現も異なると思いますので、自分にピンとくるものを取り入れてみると良いかと思います。
「アゴの下に、こぶし一つ」(首を曲げすぎない)
首・背骨全体がゆるやかなカーブを描くようにするために、ピラティスのレッスンではよく「アゴの下に、こぶし一つ」という表現をします。
腹筋が弱かったり普段から顔に意識が集まりすぎている人は、カールアップのような動きをするときに腹筋を使わずに顔から上がって行こうとしがちになり、アゴを引きすぎてしまう形になることが多いです。
最初の動き出しは顔に意識があっても良いのですが、少しでも頭が上がったら次は首へ、そして背骨へと、ひとつひとつ下の背骨を持ち上げていこうという意識にしていく必要があります。
結果として、顔だけで行こうとしている人は、首がバキっと大きく曲がってアゴを引きすぎているような形になり、背骨はあまり上がっておらず結局腹筋が使えていないことになります。うまくできている場合は、上がっている首・背骨全体が協力してゆるやかなカーブを描くようになります。
耳の穴を中心に、軽くアゴを引く
カールアップの動きは「アゴを引く」から始まるのは間違いないのですが、首の上のほうが固まっている人も多く、「アゴを引く」という言葉だけで動こうとすると、首の真ん中あたりをバキっと曲げる形で行ってしまうことが多いです。
まず最初の動き始めは、耳の穴を中心にほんの少し「うん」というように軽くうなずく小さな動きから意識してみると良いかもしれません。
この動きは、座っているときの姿勢を改善する際にも有効な場合があります。両方の耳の穴に指を入れてみて、そこに軸があるようなイメージをするのも良いでしょう。
首・背骨全体を伸ばすイメージをしながら丸めていく
カールしていく際に、バキっと曲げてしまう癖がある場合は、「全体を伸ばしながら丸めていく」という意識をすると有効な場合があります。
首・背骨全体を、椎骨ひとつひとつの隙間が広がるように伸ばしながら、大きくゆるやかな弧を描くようにカールしていきます。
実際、「背骨を伸ばす」という筋肉は無いのです。筋肉の使い方が偏っていると、歪んだり一部分だけ負担がかかってしまったりします。「適度に全体の力が抜けている」あるいは「適度に全体に力が入って背骨を偏りなく支えている」といった意識をすると、伸ばされて動かしやすい背骨の状態をつくることができます。
重心を骨盤・脚のほうに置く
普段、頭や顔に意識が偏っていると、カールアップの際にも「頭が重いなあ」と感じてしまうこともあるかと思います。意識が偏り首の筋肉も固まっているために、本来の重さ(軽さ)に気づけず、頭がとても重いように勘違いしてしまっているかもしれません。
カールアップの際は、頭や肩や背骨を持ち上げていく必要があるので、「土台」になるのはもっと下の方である必要があります。
土台をしっかり重く安定させて、動かすべきところは軽くするために、骨盤や脚のほうに重さを置くようなイメージをすると良いかもしれません。
練習の進め方
座った状態で、首の動きと形を確認するのも良いヒントに
仰向けの状態から起き上がってくるのは筋力が要りますが、椅子などに座った状態でカールアップと同じ動きを行ってみて、首の動きや形を確認するのも良い練習になります。
その動きをすると目線が下を向いていってしまうため、自分で鏡を見るのは難しいかもしれないので、動画を撮ってみたりするのも良いでしょう。
そこまでしなくても…と思うかもしれませんが、自分の首の形を実際に見てみると、全然イメージと違っていたことに気づけて、姿勢改善や日常生活を楽に過ごせるようになるきっかけにかもしれません。
椅子に座って行ってもいいし、長座(膝は曲げてもOK)の形から首と背中を丸めていくのがピラティスのスパインストレッチフォワードです。これで練習するのも良いでしょう。
腹筋が弱いうちは、頭を手で支えてイメージをつかむ
頭の後ろを手で支えて行うと、手で補助できるので少し楽に首を使うことができます。
その場合も、腹筋をメインに使うように意識して、手はできるだけ軽く支えるようにします。
筋肉を「鍛える」ということよりもまず、首・背骨の形を「正しい配置(アラインメント)で使えるようになる」ことをまず練習するようにします。
カールアップと、それ以外の動きを分けて練習する
ピラティスでは仰向けのエクササイズを連続で、ハンドレッド→シングルレッグストレッチ→ダブルレッグストレッチ→クリスクロスといった流れで行うことが多いですが、これらが終わるころには首が痛くなってしまうという人も多いように思えます。
これらのエクササイズは、「カールアップ」と「テーブルポジション」からいろいろな動きを複合的に行うものです。
複合的な動きが難しいと感じる場合は、まずカールアップ(背骨の動きと安定性)とそれ以外の動き(肩関節や股関節の動き)をわけて練習すると良いでしょう。
テーブルポジションの練習には、トータップが有効です。
別々に練習した後、ある程度慣れてきたら、組み合わせてやってみると良いでしょう。
たとえばピラティスのレッスンを受けているときに、首が痛くなってしまったり腹筋が疲れてしまった場合にも、カールアップをせずに腕や脚の動きなどを行っていれば、流れについていくことはできますし、腹筋には効かなかったとしても動きの質を高めるために十分良い練習になります。
頑張りすぎて間違ったやり方を続けて、首を痛くしてしまわないように、正確にできる範囲で行っていくと良いでしょう。
カールアップが正確にできるようになっていくと、ロールアップも正確にできるようになっていきます。これもまた苦手な人の多い動きではありますが、「背骨の柔軟性は若さである」ということで、良い目標になるエクササイズかと思います。
首のかたさは、心のかたさ
最後に、首がなぜ固くなるのかということについての一つのヒントを書いておきます。
首の動きは、実は意思表示などに深く関わっています。
YES・NOがはっきり言えない状況が続いたりすると、首もかたまっていってしまいますし、逆も然りで首がかたまると意思表示が苦手になってしまいます。
首は、本来はとても自由に動かせるものです。しっかり可動域を思い出して、普段から色々な方向へ動かすようにして、感情を表現するようにすると良いでしょう。