パワンムクターサナは、簡単に全身を一通り動かせる、一連の「動くアーサナのシリーズ」です。
本格的にポーズを始める前の「ヨガの準備運動」としても効果的で、自分の状態を把握でき、そして続けていくことで確実に可動域を広げていける流れです。
パワンムクターサナは1〜3まであり、
パワンムクターサナ1は全身の関節を解放する動き。
パワンムクターサナ2はお腹のインナーマッスルを鍛え、消化器系の働きを良くする動き。
パワンムクターサナ3はエネルギーの滞りを除き、流れを良くする動きです。
パワンは「風」や「プラーナ(気)」、ムクタは「解放」などの意味。
同名のパワンムクターサナまたはパヴァナムクターサナというポーズで「ガス抜きのポーズ」と呼ばれるものもあります。そちらは以下の記事で解説しています。
画像出典:Asana Pranayama Mudra Bandha / Swami Satyananda Saraswati
パワンムクターサナ1の効果
- 全身の関節の可動域UP
- 全身の緊張・力みを解く
パワンムクターサナ1の禁忌・注意点
ほとんどのポーズは、どんな方でも行なえます。
1−7「両膝の曲げ伸ばし」だけは、高血圧の方・背中を痛めている方や、インナーマッスルが弱い方は、行わないようにしましょう。
パワンムクターサナ1のやり方
特に重要な動きには★をつけてありますので、時間がない場合はこれらを行うだけでも効果的です。
基本姿勢(休憩のポーズ)
長座(ダンダーサナ)の姿勢になって、背中をまっすぐに伸ばしながら少しだけ後ろに傾け、手はお尻の少し後ろに置き、肘をまっすぐ伸ばして支えます。肩はすくめないようにします。
休憩をする場合は、目を閉じて全身を休めます。
以下の流れを行っていく中で、疲れたらポーズ間にこの基本姿勢をはさんで休憩するようにしましょう。
アーサナ中に行う呼吸
ウジャイ呼吸(喉の奥を少し締めて音を鳴らすゆっくりとした呼吸)が適していますが、慣れていない場合は自然な呼吸で構いません。
★1−1:パダングリ ナマン(足指の曲げ伸ばし)
まず基本姿勢をとります。吸う息で足指を反らせて、吐く息で足指を曲げます。10セット行います。
★1−2:ゴールフ ナマン(足首の曲げ伸ばし)
吸う息で足首を90°に曲げて、吐く息で足首をまっすぐ伸ばします。10セット行います。
1−3:ゴールフ チャクラ(足首まわし)
両足を30cmほどに広げて、足首を回します。
内側で親指が触れる程度に大きく回します。股関節〜膝がなるべく動かないように、足首の動きに集中しましょう。
★(手順1)
吸う息で上半分の円、吐く息で下半分の円を描きます。10回転したら、逆回しも10回行います。
(手順2)
次に、両方の脚を揃えて、両足を揃えて回すようにします。10回転したら、逆回しも10回行います。
1−4:ゴールフ ゴールナン(手でつかんで足首回す)
右膝を曲げ、くるぶしの少し上の部分が太ももに乗るようにして、右手でくるぶしの上あたりをつかみ、左手で足先をつかんで足首をまわします。
吸う息で上半分の円、吐く息で下半分の円を描きます。10回転したら、逆回しも10回行います。
左脚も同様に行います。
1−5:ジャーヌファラク アーカルシャン(膝の引き寄せ)
吸う息で、太もも前側の筋肉(大腿四頭筋)を縮めるようにして右膝の皿を引き寄せ(小さな動きです)、そこで息を3〜5秒止めます。吐く息で解放します。5セット繰り返したあと左側でも同様に行います。その後、両脚で同様に行います。
★1−6:ジャーヌ ナマン(片膝の曲げ伸ばし)
体幹は直立させたままを保ちながら行います。
右太もも裏を両手で支え、吐きながら膝を曲げて胸に引き寄せます。吸う息で膝・足首を伸ばし、かかとが床に触れないようにまっすぐ脚を伸ばします。10セット行った後、左側も同様に行います。
1−7:ドヴィ ジャーヌ ナマン(両膝の曲げ伸ばし)
両手をお尻の少し前の床に置き、なるべく骨盤が後ろに傾かないようにしながら、吐く息で両膝を曲げて胸に引き寄せます。吸う息で両脚の膝・足首を伸ばし、かかとが床に触れないようにまっすぐ脚を伸ばします。体幹の筋力に合わせて、5〜10セット行います。
1−8:ジャーヌ チャクラ(膝回し)
1−6の動きに上下の動きを加え、横から見た時に膝で円を描くように動かします。
右太もも裏を両手で支え、吐きながら膝を曲げて胸に引き寄せ、足首は90°に曲げます。吸う息で膝・足首を高い位置に伸ばし、脚をまっすぐ伸ばしたままかかとが床に触れない位置まで下げ、吐きながら膝を曲げて胸に引き寄せ、足首は90°に曲げます。
10セット行った後、左側も同様に行います。
1−9:アルダ ティタリ アーサナ(片脚のバタフライ)
右脚を曲げて、右足を足首を90°曲げた状態で左太ももの上に置きます。
左手で右足を持ち、右手は右膝に軽く添えます。
手順1〜3を右側で行った後、左側も同様の流れで行います。
(手順1)
吸う息で膝を持ち上げ、吐く息で膝を下ろします。添えている手でぐいぐい押しすぎないように、股関節周りの筋肉を使うようにします。10回ほど上げ下げします。
★(手順2)
呼吸は自然に続けながら膝を上下にバウンドさせます。30回ほど行います。
(手順3)
慎重に膝を伸ばして基本姿勢に戻ってから、膝を立てるように曲げてカカトをお尻に近づけるようにしっかり曲げて、伸ばします。
★1−10:シュローニ チャクラ(股関節回し)
1−9と同じポジションになり、膝で円を描くように股関節を回します。お尻が前後に動かないように、股関節の動きに集中しましょう。10回転したら、逆回しも10回行います。
1−11:プールナ ティタリ アーサナ(両脚のバタフライ)
両膝を曲げて両足の裏を合わせ、かかとをなるべく手前へ近づけ、骨盤を立てます。
★(レベル1)
両手で足先をつつみ、膝を上下にバウンドします。
(レベル2)
骨盤を立てたまま膝が低い位置でキープできるようになったら、両手を膝に添えて上下にバウンドします。
30〜50回行います。
★1−12:ムシュティカ バンダーナ(手指の曲げ伸ばし)
ここからは上半身の動きです。
背中を直立させ、長座の姿勢かスカーサナ(安楽座)などのあぐらを組んだ姿勢になります。
両腕を肩の高さで前に伸ばし、吐きながら親指を中に入れるように両手をにぎります。吸いながら両手を大きく開きます。10セット行います。
1−13:マニバンダ ナマン(手首の曲げ伸ばし)
手のひらを下にして手首を伸ばします。
吐きながら手首を下に曲げ、吸いながら手首を上に曲げます。10セット行います。
★1−14:マニバンダ チャクラ(手首回し)
親指を中に入れるように手をにぎり、手首を回します。10回転したら、逆回しも10回行います。
1−15:ケフニ ナマン(肘の曲げ伸ばし)
手のひらを上にして腕をまっすぐ伸ばします。肩・肘の位置がブレないように行いましょう。
(手順1)
吐きながら両肘を曲げて肩を指先でタッチします。吸いながら両腕を伸ばし、繰り返します。10セット行います。
(手順2)
肘を体の横にうつし、左右へ腕を伸ばす形で同様に行います。
★1−16:スカンダ チャクラ(肩回し)
指先で肩をタッチした状態から、肘で大きな円を描くように肩を回します。
吸う息で上半分の円を描き、肘を高く耳の脇に持ち上げ、吐く息で下半分の円を大きく描きながら、肘を前でかるく接するように背中を丸めます。10回転したら、逆回しも10回行います。
(追加)
パワンムクターサナ2・3には背骨をツイストする動きがありますが、パワンムクターサナ1にはないので、もし1だけで練習を終える場合は、ここでツイストの動きを入れると良いでしょう。
肩の上に手を乗せて肘を真横に持ち上げ(上の図のような状態)、その形を保ちながら胸から上をツイスト。首も胸と同じ方向へツイストします。動きを止めずになめらかに右へツイスト→左へツイスト、と繰り返しましょう。10〜20セットほど行います。
★1−17:グリーヴァ サンチャラナ(首ストレッチ&回し)
目を閉じた状態で行いましょう。
(手順1)
吐きながらうなずき、吸いながら上を見上げます。10セット行います。
二重あごにならないように首を伸ばしながら丸めるイメージでうなずき、アゴを鎖骨の間にくっつけることを目指します。
上を見上げるときは、胸の上半分が持ち上がるようなイメージで見上げます。
(手順2)
吐きながら右に傾け、吸いながら真ん中に戻り、吐きながら左に傾け、吸いながら真ん中に戻ります。10セット行います。
耳を肩に近づけるように、前や後ろへ倒れないように真横へ倒すようにします。
(手順3)
吐きながら右を向き、吸いながら真ん中に戻り、吐きながら左を向き、吸いながら真ん中に戻ります。10セット行います。
アゴを肩のラインにのることを目指して、深く首をねじります。
(手順4)
吐きながらうなずいて、右回りに首を回し始めます。吸いながら上半分の円を描き、吐きながら下半分の円を描きます。10回転したら、逆回しも10回行います。
首全体の筋肉をゆるめるように、リラックスして行いましょう。
シークエンス例
- このあと、パワンムクターサナ2やパワンムクターサナ3へつなぎます。
- パワンムクターサナ1のあと、キャットアンドカウを行い、太陽礼拝へつないでいく流れもよく行います。
アーサナ名の表記バリエーション
【日】パワンムクターサナ1、パワンムクタアーサナ1、パワンムクターサナ1、パワンムクタアーサナ1
【梵】Pawanmukutasana 1
【英】Wind-Releasing Pose 1