足裏を合わせて坐る、シンプルだけど奥の深いポーズ。非常に癖の出やすいポーズなので、苦手な人は膝が床におりるまで何年もかかる場合があります(私も6年くらいかかりました)。焦らず正しく深めていきましょう。
この記事の目次
バッダコナーサナの主な効果
- 股関節外旋の柔軟性UP
- 大臀筋ストレッチ
- 内転筋ストレッチ
- 背筋ストレッチ
- 足首・膝関節の歪み調整
- 集中力UP
バッダコナーサナの禁忌・注意点
股関節・膝・足首などを痛めている方は、痛みの出ない範囲で行いましょう。
腰が痛い方や、骨盤が後ろに倒れてしまう方は、ブロックや畳んだ毛布の上に座って行うようにします。
膝をおろそうとして無理に上から圧力をかけたり、人に押してもらったりするのは危険なので、正しい方向性で深めていくようにしましょう。
バッダコナーサナのやり方
1)長座(ダンダーサナ)で姿勢良く座ります。片脚ずつ曲げて、かかとをなるべく引き寄せ(どのくらい引き寄せられるかは人それぞれ異なるので、無理のない範囲で)、足裏同士をあわせます。手で軽く足を握ってサポートします。
2)骨盤を立てて背中をまっすぐにしたまま、膝をなるべく床へ近づけていきます。その姿勢のまま余計な力を抜いて、できるだけキープします。
3)脚を伸ばしてポーズから抜けます。脚全体を揺らしたりして股関節・膝・足首の緊張をほどくと良いでしょう。
アシュタンガヨガの場合
ドリシュティ(視点):鼻先
1)ジャンプスルーしてダンダーサナに入り、両足裏を合わせて膝を床におろします。足裏はピタリと合わせるのではなく本を開くように少し斜め上を足裏が向くように合わせ、手は親指が足裏にくるようにして他の4指と足をはさんで持つ形にします。
2)吐きながら前屈して、額かアゴを床に近づけ、5呼吸キープします。このあと、すぐにジャンプバックするか、または3−1と3−2のどちらかを選択します。(パタビジョイス氏の動画ではすぐにジャンプバックしていたので、3-1・3-2の過程は後々に追加されたのかもしれません)。
3−1)吸いながら起き上がり、背中を立たせてアゴを引いた姿勢で5呼吸キープします。
3−2)背中を丸めて、額を足に近づけた姿勢で5呼吸キープするというやり方もあります。
4)脚を伸ばしてアーサナを解き、ジャンプバックします。
バッダコナーサナを深める方向性
- 骨盤を立てて、姿勢良く座れるようにする。
- 背中をまっすぐに保ったまま、膝がなるべく床に近づくようにしていく。
- 前屈をする場合は、額を床につけられるようにし、その後アゴを床につけられるようにしていく。
バッダコナーサナのコツ・練習法
なるべく全てを左右対称に
おそらくほとんどの人が、片側の股関節のほうが柔らかい状態だと思いますが、片方だけ先に膝をおろそうとせずに左右対称にできるようにしていくほうが近道です。
骨盤まわりだけでなく、首の向き、肩の高さなども含めて、左右のバランスを感じ取りながら深めていきます。
片鼻呼吸を行って左右のバランスを整えるのも良いでしょう。
膝をしっかり曲げられるようにする
かかとを引き寄せられるようにするには、膝がしっかり曲げられる必要があります。
これをジャマしているのは太もも前側の筋肉(大腿四頭筋)などです。正座(ヴァジュラーサナ)や割座(ヴィラーサナ)などを行ってストレッチしておくと良いでしょう。
内転筋を伸ばし、膝を遠くへ・後ろへに置けるようにする
足裏同士をあわせるためには、それなりに膝同士が離れている必要があります。
膝を遠く・後ろに置くためには、内転筋がジャマをするので、開脚の練習や、ジャーヌシルシャーサナAで膝を後ろのほうへ置く練習をしておきましょう。
背中を立てたまま膝をおろすには、体幹の強さと股関節の回旋が必要
あぐら(アルダシッダーサナ)と同じように、背中を前に少し倒せば、膝が床におりる場合があります。しかし、これでは股関節が動いていないのをごまかせてしまうので、なるべく背中を立てて膝を下ろせるようにしましょう。
骨盤が倒れてしまわないようにして、目的の股関節をごまかさずに動かすためには、体幹の強さ、特に下腹部(主に腹横筋)の引き締めが必要です。ピラティスなど体幹トレーニングを行うのも良いでしょう。
アルダシッダーサナをしっかり背骨を立てて行えるようにするのも良い練習になります。壁を背にして練習するのも良いでしょう。
膝関節の回旋も必要
バッダコナーサナを行っている人の写真をよくみてみるとわかりますが、膝の向きは斜め前下へ向いていて、足先は正面を向いています。
これはつまり、股関節が45°くらい外に、膝関節(スネの骨)が45°くらい内に回っていることになります。
このあたりの話は、人それぞれ癖が異なるため、文字の情報だけで行うと真逆のことを行ってしまう危険があります。たとえば、もともと外旋が強すぎる人は、内旋を意識するとうまくいきますし、真逆の場合もあります。もし練習していく中で違和感がある場合は、プライベートレッスンを受けるようにすると良いでしょう。
参考:膝関節(下腿)回旋に関する考察 〜ジャーヌシルシャーサナB・C・蓮華座へのヒント〜
前屈を深めるには股関節回転、そして背中全体を伸ばす
バッダコナーサナの前屈は、パスチモッターナーサナなどの脚を揃えた前屈とは異なり、開脚前屈(ウパヴィシュタコーナーサナ・プラサリータパドッターナーサナ)に近い動きであり、股関節が外に回ることで骨盤が前に倒れることになります。
アシュタンガヨガのその他前屈ポーズの原則と同じように、逆の動き(股関節内旋)を加えることで支え合いながら深めていきます。ただし、これも人によってかなり癖が異なるので、文字情報だけを頼りに行わないほうが無難です。
多くの前屈ポーズでジャマをする筋肉は太もも裏(ハムストリングス)ですが、バッダコナーサナの場合は膝が曲がっているので、ハムストリングスはむしろギュっと使って膝をしっかり曲げるようにしておくほうが、股関節の回転には有利になります。
前屈を妨げる要因としては、背中の下半分の伸びが足りないということが多いと思います(背中の上半分を丸めて猫背になるのはみんな得意ですが)。下腹部の腹筋をしっかり使って、背中の下半分もゆるやかに丸めて、背中全体を前へ伸ばす形にできるようにします。
アシュタンガヨガの流れにそって練習する
グレゴールメーレ氏は著書の中で、バッダコナーサナはジャーヌシルシャーサナAを両側で行ったポーズであると述べています。
私は個人的にはジャーヌシルシャーサナA〜Cの全てが役に立ったので、人それぞれ持っている癖によって有効な道筋が異なるのだと思います。
いずれにしても、バッダコナーサナはフルプライマリーの後半に含まれているアーサナなので、これにトライするより前に、前半にあるジャーヌシルシャーサナA〜Cをしっかり深めておくのが近道になると思います。
アジャスト例(インストラクター向け)
- 背骨を立てて行う形の場合は、背中側に正座で座り、膝を骨盤の後ろにあてて骨盤が後ろへ倒れないようにしながら、膝を手で下&外へ軽く押して導く。
- 前屈時は、骨盤を左右から両手で支えて前傾方向へ導く。その際も膝を下ろす動きはなるべく自力で行うように指示する。
シークエンス例
- 割座(ヴィラーサナ)などと組み合わせると、股関節・膝・足首の柔軟性を高めるのに効果的です。
- プールヴォッターナーサナは脚を伸ばして体の前側全体を伸ばすのでカウンターポーズになります。
- 陰ヨガのバタフライ、サドル、スプタバッダコナーサナなどと組み合わるのも効果的です。
- アシュタンガヨガの場合は、クックターサナ→バッダコナーサナ→ウパヴィシュタコーナーサナとつながります。
アーサナ名の表記バリエーション
【日】バッダコナーサナ、バッダコーナーサナ、バッダコーナアーサナ、がっせきのポーズ、合せきのポーズ、合蹠のポーズ
【梵】Baddhakonasana
【英】Bound Angle Pose