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ハタヨーガプラディーピカー概説 3.32-3.54 〜ケーチャリームドラーのやり方と重要性〜

ハタヨーガプラディーピカー概説 3.32-3.54 〜ケーチャリームドラーのやり方と重要性〜

舌をしっかり動かすと、いろいろいいことがある

ハタヨーガの古典の中で、最も体系化されているとして重要視されているハタヨーガプラディーピカー

今回は、舌を使った「ケーチャリームドラー」のやり方と、その重要性について書かれている部分を紹介します。

以下、日本語訳は「ヨーガ根本経典/佐保田鶴治」から引用しています。

この記事の目次

ケーチャリー・ムドラーのやり方

3.32 舌を反転して頭蓋の穴に入れ、視線を眉間にすえる。これがケーチャリー・ムドラーである。

舌を喉の方へ伸ばして、のどちんこを通り越して上の方へ舌を伸ばしていくということです。

やってみるとわかりますが、舌の長さが足りなくて、大抵の人はできません。

そのため、舌の長さを長くする方法が書かれています。

3.33 舌の舌小帯の部分を切断し、舌を二指ではさんで左右に振り動かし、牛の乳房をしぼるように舌を引き出すなどの方法で、舌を次第に長くして、しまいに舌がミケンに触れるほどになったならば、ケーチャリー・ムドラーは有効になる。

毎日すこーしずつ、舌の下にあるスジを切っていくことで舌を長くするということです。なかなか荒っぽいやり方です。

別の本には、現代ではこれは現実的でないので、舌をしっかり伸ばすことを繰り返していれば自然に長くなっていくと説いているものもありました。

こんな技が一体なぜ重要なのか?それについて、このあと20節ほど費やして長々と説明されています。

ケーチャリー・ムドラーの重要性

3.37 そこで、舌を反転して、それを三つの気道の合流する個所(頭蓋の中の穴)へ合わせる。これがケーチャリー・ムドラーである。一名「空中チャクラ」ともいう。

ケーチャリームドラーで舌を向けている方向は、ハタヨーガで最重要とされる3つのナディ(イダー・ピンガラー・スシュムナー)が合流する場所であるといいます。

「頭蓋の中の穴(空洞)」と言っているのが、「ブラフマ・ランドラ(聖なる穴)」と呼ばれる、眉間のあたりにあると言われる頭の中の空間です。下方のチャクラから分岐して(第2チャクラから、あるいは第1チャクラから分岐するという説もある)上がってきた3つのナディは、ここで再び合流します。

この重要な地点に意識と物理的刺激を向けるというのは、たしかに意味がある気はします。

そして、もう一つ重要な理由が説かれます。

3.44 ヨーガに達したひとが舌を上にしまいこみ、ココロをしずめてソーマを飲むならば、半カ月にして死にうち克つことができる。

3.52 メール山(背骨)の頂上にソーマ(甘露)の一日分を蔵する洞穴がある。そのなかに真実在(アートマン)があると賢者は説く。そこはもろもろの河川(気の流れる管)の吐けぐちである。そこにある月から、カラダの成分である甘露が流れ去るから、そのために人間に死があるのである。それだから、このすぐれた行法を修練するがよい。これ以外の方法では肉体の完全はしょせん得られない。

ヨーガでは、頭のまんなかあたりにある「月」から流れ落ちる甘露のようなものが、へそのあたりにある「日」によって消費されることによって死に近づいていくという考え方があります。

そのため、その甘露の流れを舌で受け止めることによって、死へ近づくのを防ぐことができると考えたようです。

この考え方は色々なムドラーやアーサナに応用されていて、後で説明される「逆立ちの姿勢(ヴィパリータ・カラニー)」の重要性にもつながっていきます。

実際にそういった甘露が流れているかどうかは別として、舌をしっかり動かしておくと、とても良いことがあります。

舌を動かしたり固定したりするといった技法はケーチャリームドラー以外にもいくつかあります。舌を外へのばすシンハアーサナ(ライオンのポーズ)などもそのひとつです。

舌はいろいろな筋肉につながっていて、消化管へつながっていく入り口でもあり、たくさん動かしておくと良いでしょう。首から背骨にかけての柔軟性(特に後屈など)が高まったり、胃などの消化器系にも良い影響があります。

(次)ハタヨーガプラディーピカー概説 3.55〜3.73 〜3つのバンダ(ウディーヤナ・ムーラ・ジャーランダラ)〜

(前)ハタヨーガプラディーピカー概説 3.10〜3.31 〜「マハー(偉大な)」がつく3種のムドラー

参考文献

「ヨーガ根本教典」佐保田 鶴治 (著)

「サンスクリット原典 翻訳・講読 ハタヨーガ・プラディーピカー」菅原誠 (著)

「Asana Pranayama Mudra Bandha 英語版」Swami Satyananda Saraswati (著)

男性ヨガインストラクター 高橋陽介の写真

by 高橋陽介

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