「クンダリニー・タントラ/スワミ・サティヤナンダ・サラスワティ著」を読み進めていく形で、クンダリーニヨガ(クンダリニーヨーガ)の概要を紹介していく連載記事です。
「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)
「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)
今回は、第3章の2節、クンダリニーヨーガで用いる坐法・姿勢に関する部分です。
以下、引用部分の太字強調は私が個人的に重要と思ったところを示したものです。
この記事の目次
クンダリニーヨーガの坐法・姿勢
チャクラを覚醒させる行法など、ほとんどのクンダリニーヨーガの実践は坐った姿勢で行われます。
この節では、クンダリニーヨーガの実践に適したいくつかの坐法について紹介されています。
Most of the practices for specific chakras and the kundalini kriyas are done in a sitting position, or meditative asana. The best sitting asana is siddhasana (for males) and siddha yoni asana (for females). Not only do these two asanas apply direct pressure on mooladhara chakra, but this pressure, when applied correctly, brings about an awakening and redirection of nervous energy and blood circulation upwards from the pelvic and abdominal regions to the brain. This extra energy is important in kundalini sadhana, since it keeps the voltage of prana shakti at a high level. The perineal pressure awakens the source of energy and actively distributes prana upwards to the higher centers.
多くのハタヨーガの教典が述べているのと同様に、シッダーサナ(男性向け)またはシッダヨーニアーサナ(女性向け)が最適であるとしています。
シッダーサナは、会陰(性器と肛門の間)をかかとで押すことができる坐法であり、この会陰への圧にはとても重要な意味があるとされ、ムーラーダーラチャクラを刺激するだけでなく、神経や血液の流れを骨盤や腹部の領域から脳のほうへ向かわせるエネルギーを生み、プラーナの状態を高いレベルに保ちながら上のチャクラへと向かわせることができると説明されています。
Padmasana is also utilized for certain kundalini techniques such as tadan kriya. Though siddhasana is generally preferred in most of the other techniques, padmasana can also be used as an alternative. The disadvantage is that padmasana does not apply a direct pressure on mooladhara chakra.
シッダーサナが最適とされますが、パドマーサナも代わりに使うことができる重要な坐法であるとされます。
とくにタダン・クリヤーというウップルティヒの状態から骨盤底を軽く床に打ち当てるという行法では、シッダーサナよりも適しています。
ただ、パドマーサナは会陰への圧をかけることができないため、やはり他のほとんどのチャクラ行においてはシッダーサナが適していると説明されています。
Those who cannot sit comfortably in siddhasana can do utthanpadasana instead, though it is difficult to maintain for an extended period of time. In the kriya yoga practices of maha mudra and maha bheda mudra, utthan padasana can be done instead of siddhasana, and is by tradition accepted as its equal.
シッダーサナで快適に坐ることができない場合は、ウッタンパーダーサナを代わりに行うのも良いと示されています。
とくにマハームドラーやマハーベーダムドラーを行う際は、ウッタンパーダーサナで行う方が一般的で、シッダーサナでもウッタンパーダーサナでも同等の効果があるといいます。
これらのムドラーはハタヨーガプラディーピカーなどにも出てきました。説明は、後に出てきます。
参考:ハタヨーガプラディーピカー概説 3.10-3.31 〜「マハー(偉大な)」がつく3種のムドラー〜
ただ、後にやり方が書かれていますが、ウッタンパーダーサナは長時間キープするには向いていないポーズです。
Another asana, bhadrasana, also applies a good pressure on mooladhara chakra and can be substituted for siddhasana in many of the practices. It is also the required sitting position for manduki mudra, one of the techniques of kriya yoga.
In the descriptions of the kundalini practices, we have stated the best asana for each practice. Only use one of the alternative asanas if the recommended asana is not suitable.
バドラーサナも、ムーラーダーラチャクラへの圧を加えられるのでシッダーサナの代わりに使うことができるといいます。ただ、かかとを直接会陰に当てる坐法ではなく、会陰は床あるいは下に敷いた毛布に当てるような感じです。
後にクリヤーヨーガの中で紹介されるマンドゥーキクリヤーでは、バドラーサナが用いられます。
このように、行法ごとに最適な坐法が指定されることがあります。できる限りその指定された坐法を用いるようにし、快適に坐ることができない場合のみ、代わりの坐法を選ぶようにせよ、と指示されています。
坐法1:シッダーサナ(達人座・男性向け)
Sit with the legs extended in front of the body. Fold the right leg and place the sole of the foot flat against the left thigh with the heel pressing the perineum, the area of mooladhara chakra, between the genitals and the anus. Fold the left leg and place the foot on top of the right calf. The heel should press against the pelvic bone directly above the genitals.
Push the toes and the outer edge of this foot into the space between the right calf and thigh muscles. It may be necessary to move and replace the right leg for this. Grasp the right toes, either from above or below the left calf and move them upward into the space between the left thigh and calf.
シッダーサナについては、とても細かく説明されています。
ひとまず書かれていることを読んでみましょう。私の写真では以下の説明とは逆の脚になっていますが、逆でも行えるようにせよということなので、どちらでも良いようです。ちなみに載っている図も私の写真と同じでした。
先に禁忌について書いておくと、坐骨神経痛や仙骨感染症の人は、シッダーサナを行うのは避けるように、と指示されています。
まず座って脚を前に伸ばし、右脚を曲げて、足裏は左太ももに沿うように置き、かかとは会陰(性器と肛門の間、ムーラーダーラチャクラの領域)を圧すようにします。
次に左脚を曲げて、右太ももの上に左足を置きます。左のかかとは性器の上の恥骨を圧すようにします。
左足のつま先と小指側のエッジは、右太ももとふくらはぎの間に入るように押入れます。
左ふくらはぎの下にある右足のつま先も、手で掴んで押し上げて、左太ももとふくらはぎの間に挿し入れます。
The legs should now be locked with the knees on the ground and the left heel directly above the right heel. Make the spine steady, straight and erect, as though it were planted in the ground.
Note: Siddhasana can be practised with either leg upward. It should not be practised by persons with sciatica or sacral infections.
これによって両方の脚はしっかりロックされ、膝は床につき、左のかかとは右のかかとの真上にある形になります。
背骨は、木が大地に根付いているかのように垂直・まっすぐに安定させます。
ここでは右脚を先に曲げる形で説明されましたが、どちらの脚を上にしても良いようです。
Other classical asanas such as ardha padrnasana and sukhasana can also be used, but not as effectively. Therefore, dedicate yourself initially to the perfection of siddhasana. In the beginning it is recommended that a folded blanket or small cushion be used to raise the buttocks slightly. This will enable you to rest the knees on the ground and to achieve a balanced posture. However, the blanket or cushion should not be too thick. One or two inches in height should be enough. There must be a sustained but comfortable awareness of pressure on the perineal trigger point.
アルダパドマーサナ(半蓮華座・半跏趺坐)やスカーサナ(安楽座)といった伝統的な坐法も代わりに用いることができますが、シッダーサナほどの効果はないといいます。(会陰への圧がかけられないからというのが大きな理由でしょう)
そのため、まずはシッダーサナを完璧にできるように練習していくのが重要であると指示されています。
シッダーサナの練習法として、最初のうちは畳んだ毛布や小さなクッション(厚くしすぎないこと、1〜2インチ・2.5〜5cm程度)を尻の下に置いて行うと、膝を床につけやすくバランスの良い姿勢をとりやすい、と説明されています。このあたりは、多くのヨガスタジオでも指示されていることですね。
ちなみに先日行った根府川道場で、座布団を独特な形でたたんで使う標準的な座り方を学びました。やはり会陰への圧を重視した、シッダーサナをベースにした坐法のようでした。
坐法2:シッダヨーニアーサナ(達人座・女性向け)
Instead of siddhasana, ladies should do siddha yoni asana.
The position is exactly the same as siddhasana, except that after folding the right leg and placing the sole of its foot against the left thigh, the lower heel is placed just inside the entrance to the vagina. The left heel presses against the clitoris. Everything else is as described for siddhasana.
女性はシッダーサナの代わりに、シッダヨーニアーサナを用いよという指示があります。
シッダヨーニアーサナについては定義がいくつかあるようで、シッダーサナのかかとを「左右に少しずらす」という簡単なものもありますが、これではかかとによる刺激は意味を成さなくなってしまうので、ここではより生殖器系への刺激を重視したシッダヨーニアーサナが紹介されています。基本的にはシッダーサナと同じ組み方ですが、下のかかとは膣口の内側に当て、上のかかとはクリトリスに当てよ、と指示されています。
第2章で述べられてきたようにムーラーダーラチャクラやスワディシュターナチャクラの覚醒には、生殖器まわりの刺激が大きく関係しますが、ちょっとこのやり方には抵抗があるという人は、シンプルに会陰の圧を行うやり方でも良いかと思います。
坐法3:パドマーサナ(蓮華座・結跏趺坐)
Sit with the legs extended in front of the body. Fold the leg and place its foot on top of the opposite thigh. The sole of the foot must be upward, with the heel facing or touching the pelvis. Fold the other leg and place its foot on top of the other thigh.The spine should be straight, the neck, head and shoulders should be relaxed and the body should be steady.
流派によってはとても重要な坐法である蓮華座・結跏趺坐ですが、ここでは簡単に説明されています。
やり方は、両脚を前に伸ばして座り、片方の脚を曲げて、反対側の太ももの上に、足裏が上を向くようにして置きます。かかとは骨盤の方を向くか、骨盤に触れている形です。
反対側の脚も曲げて、反対側の太ももの上に、同様に足を置きます。
背骨はまっすぐ、首・頭・肩はリラックスし、体は安定しているようにします。
蓮華座の詳しいやり方や練習法は、以下の記事を参考にしてみてください。
参考:蓮華座(結跏趺坐・パドマーサナ)のやり方・効果・コツ図解
坐法4:ウッタンパーダーサナ
Sit on the floor with both legs extended in front of the body. Fold the right leg under the body so that you arc sitting on the right foot. The right heel should press the perineum (or the entrance to the vagina). The left foot remains outstretched. This asana may also be performed with the left leg folded into the perineum and the right leg outstretched.
「The raised heel pose」という英名で紹介されていますが、サンスクリット語のそのままの意味で言えば「脚を強く伸ばすポーズ」です。坐法というより、前屈ポーズのジャーヌシルシャーサナBに近い脚の形です。
やり方は、両脚を伸ばして座り、右脚を曲げて、右かかとの上に、会陰(または、女性は膣口)が当たるように乗って座り、左脚は伸ばしたままにします。逆の脚でも同様に行えるようにします。
確かにシッダーサナよりは、股関節の柔軟性がなくても会陰に圧をかけることができますが、会陰の下にある足はしびれてくるでしょうから、長時間キープするのは難しいでしょう。
坐法5:バドラーサナ(吉祥坐)
Sit in vajrasana. Separate the knees as far as possible and bring the big toes together so they are touching each other. Allow the buttocks to rest on the ground (if necessary a blanket can be placed under the buttocks) so that mooladhara chakra is firmly pressed. Place the hands on the knees, palms down, and make the back straight.
メジャーではありませんが、意外と瞑想に向いている左右対称な坐法ということで私もよく用いている、バドラーサナ。
参考:坐法の選び方・練習法、左右対称の坐法・非対称の坐法について
ここでは「The gentleman’s pose 紳士のポーズ」という英名で紹介されていますが、いろいろな名前で呼ばれることのある坐法です。ちなみにオレンジの本の方では「gracious pose」という名前がつけられています。
床あるいは敷いた毛布に会陰を当てることで圧をかけられるため、シッダーサナの代わりに用いることもできる、と説明されています。
やり方は、ヴァジュラーサナ(正座)で座り、両膝をできるだけ離していき、足の親指同士がくっつくようにします。お尻は床か敷いた毛布につくようにし、ムーラーダーラチャクラ(会陰)にしっかり圧がかかるように坐ります。
両手は膝の上に置き、手のひらは下向きにし、背骨はまっすぐにします。
坐法の練習法・その他の準備
If the hips, knees and ankles are not flexible enough to assume and maintain siddhasana, padmasana, bhadrasana, etc., we suggest that you practise the pawanmuktasana series of exercises daily, especially crow walking, ankle exercises, knee rotation, half and full butterfly. Utthanasana should also be practised. To improve the overall health of the body, other asanas can also be done, including surya namaskara.
シッダーサナ・パドマーサナ・バドラーサナなどで長時間坐るためには、股関節・膝・足首の柔軟性が必要なので、柔軟性が足りない場合はパワンムクターサナシリーズを毎日練習すると良いと指示されています。
とくに、クローウォーク(カラス歩き)、足首のエクササイズ、膝回し、片側・両側のバタフライなどが有効です。カラス歩きはパワンムクターサナ3に、それ以外はパワンムクターサナ1に入っています。
また、「ウッターナーサナ」も有効であると書かれていますが、これは一般的な現代ヨガの立位前屈のウッターナーサナではなく、マーラーサナのようなスクワットポジションの形のアーサナです(オレンジ本に載っています)。同様なストレッチはパワンムクターサナ3の中にも入っています。
同じ名前でも、流派によって全く違うアーサナを指している場合もあるので、注意が必要ですね。
快適で安定した坐法のためには体全体の健康も重要であり、太陽礼拝やその他のアーサナも実践すべしと指示されています。
Practices of pranayama, such as nadi shodhana, should also be performed to develop control over inhalation, exhalation, and inner and outer retention, so necessary for perfecting many of the kundalini techniques.
These practices can be done daily, side-by-side with the monthly practices that are given for the specific chakras.
呼吸のコントロールを洗練させていくために、ナディショーダナのようなプラーナーヤーマも実践し、クンダリニーヨーガの実践でよく用いられる「息を吸ってから止める」「息を吐ききってから止める」といった止息も練習せよと指示されています。
ここから月ごとに各チャクラの覚醒のための実践に入っていきますが、それと並行して、以上のような坐法・健康維持・呼吸法のための習慣も毎日続けていくのが良いと説明されています。
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参考文献
「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)
「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)
「クンダリニー」ゴーピ・クリシュナ (著), 中島巌 (翻訳)
「Asana Pranayama Mudra Bandha 英語版」Swami Satyananda Saraswati (著)