「アーサナの王様」とも呼ばれる、逆転ポーズ。
最初はできなくても、練習するだけで血行促進や頭痛改善をはじめとした大きな効果があるアーサナです。
壁に向かってピョンピョンと片脚ずつ跳ね上げながら練習しているだけだと、なかなかできるようにならないことがあります。それよりも、地道に土台から作っていくほうが近道です。記事の後半で練習法も解説しています。
シルシは「頭」の意味。武将が首をとったときの「しるし」と同義と言われています。
この記事の目次
シルシャーサナの効果
- 全身の血行促進、下半身のむくみ改善
- バランス感覚・集中力UP
- ストレス解消
- 上腕三頭筋強化・三角筋強化・二の腕のシェイプアップ
- 前鋸筋強化・バストアップ
- 姿勢改善
- 体幹(主に腹横筋・脊柱起立筋など)の筋力UP
- 顔のたるみ改善
- 内臓の位置を整え、活性化
シルシャーサナの禁忌・注意点
失敗して倒れてしまうと危険なポーズなので、土台がしっかりするまでは指導者に習って練習するようにしましょう。
アーサナを行った後は必ずチャイルドポーズでゆっくり呼吸し、頭の圧を逃がすようにしてから起き上がるようにしましょう。急に起き上がると、頭痛につながります。
背中や首を痛めている場合、生理中などの場合はやめておきましょう。
解毒ポーズであるマユラーサナを行ったあとは、行わないようにするのが良いとされています。
シルシャーサナのやり方
シルシャーサナはシヴァナンダヨガとアシュタンガヨガ両方に入っているアーサナですが、少しやり方が異なります。シヴァナンダヨガのやり方のほうが段階的に練習しやすいので、まだ自信のない方はこちらのやり方がオススメです。
シヴァナンダヨガのやり方(段階的に練習可能)
1)四つばいから、前腕を床について、両手の指を軽く組みます(ギュッとしない)。組んだ手の中に後頭部をおさめて、頭を軽く床につきます。
2)膝を床からもちあげて、つま先立ちになり、だんだんつま先を頭のほうに歩かせていってお尻を高くしていきます。膝は曲がっていても構いません。
なるべく背中が丸まらないように&腰がそらないように保ちながら、骨盤を肩の真上付近まで運んでいきます。
3)お腹と背中、両面の力を使って上半身をなるべくまっすぐに保ち、吸いながら、できるだけつま先を両足いっしょに持ち上げます。
肘でしっかり床を押せていて、上半身がまっすぐ立っていれば、足が頭の近くまでくれば自然と持ち上がります。(ここでつまずく方も多いかもしれませんが、あせってピョーンと脚を持ち上げるよりも土台をしっかりつくる練習をしたほうが近道ですし、怪我をしにくいです。)
4)足が持ち上がったら、膝を胸に近づけて、まずはここでキープできるようにします(第1段階)。
5)膝を真上に持ち上げて(曲げたまま)キープできるようにします。腰が反りやすいので、お腹の力がぬけないようにキープします(第2段階)。
6)膝をのばし、脚をまっすぐ空へ向けます(第3段階)。
ゆっくり呼吸しながらキープします。まずは1分程度キープできるように練習し、5分、10分など長くしていけるようにします。
7)吐きながら、第2段階・第1段階と逆の流れを通ってゆっくり床にもどってきます。足が床についたあと、頭はすぐに持ち上げないように、おでこを地面につけてチャイルドポーズをとり、ゆっくり数呼吸してから、頭が最後になるようにゆっくり起き上がります。
アシュタンガヨガのやり方(よりパワーとバランスが身についてから)
1)四つばいから、前腕を床について、両手の指を軽く組みます(ギュッとしない)。組んだ手の中に後頭部をおさめて、頭を軽く床につきます。
2)膝を床からもちあげて、つま先立ちになり、だんだんつま先を頭のほうに歩かせていってお尻を高くしていきます。膝をなるべくまっすぐに保ちます。
なるべく背中が丸まらないように&腰がそらないように保ちながら、骨盤を肩の真上付近まで運んでいきます。
3)吸いながら、膝がなるべくまっすぐなまま、なるべく両足いっしょにつま先を離陸させ、脚を持ち上げていき、全身がまっすぐ直立するようにします。15または25呼吸キープします。
4)ハーフベンド(ウルドゥヴァダンダーサナ)を行う場合は、吐きながら股関節を90°に曲げて(なるべく膝はまっすぐのまま)脚を水平までおろし、そこで10呼吸キープします。
5)吸いながら、両脚をまっすぐ直立するところまで戻します。
6)吐きながら、膝がなるべくまっすぐなまま、床までつま先をゆっくりおろし、頭はすぐに持ち上げないように、おでこを地面につけてチャイルドポーズをとり、ゆっくり数呼吸してから、頭が最後になるようにゆっくり起き上がります。
シルシャーサナを深める方向性
- まず脚を曲げた状態から、頭と肘だけで立てるようにする。
- 体全体をなるべくまっすぐにする。
- 落ち着いて、ゆっくりした呼吸で(呼吸数をカウントしてみるのも良い)、長時間キープできるようにする。
シルシャーサナのコツ・練習法
シルシャーサナに必要な柔軟性
上半身がなるべく丸まらないように、足をなるべく頭に近くに歩かせるためには、前屈の柔軟性が必要です。
ウッターナーサナやパスチモッターナーサナなど、基本的な前屈ポーズを練習しておきましょう。
シルシャーサナに必要な筋力
お腹のインナーマッスル、肘でしっかり床を押すための背筋(とくに上背部)・二の腕・脇の下の筋肉がとても重要なので、まずは太陽礼拝、とくにダウンドッグとチャトランガダンダーサナを地道に練習することが大切です。
また、肘で床を押して全身を支える練習としては、ドルフィンポーズとドルフィンプランク(肘付きプランク)を交互にやる練習も有効です。
練習の方向性
壁に向かってピョンと蹴り上げて練習する方法もありますが、これは最終形を一度確認してみるためには良いでしょう。ただし、それだけやっていても壁無しでできるようになるには時間がかかります。
胸に膝を引き寄せる力と肘で床を押す力を使って、両足を同時にフワっと1cmでもいいので持ち上げて、フワっと降りてみることから始めてみましょう。
その時、呼吸や「バンダ」もとても重要になります。
≫プルプルしないでポーズがキープできる秘密「バンダ」
頭と肘にかかる体重の割合バランス(アイアンガー氏の理論も含めて検討)
最初から頭に体重をかけすぎると、首を痛める危険性があります。そのため、首まわりの筋力と姿勢が整わないうちは、体重の7割程度は肘・前腕で支えるようにするのが良いかと思います。
首に十分な柔軟性と強さがついてきたら、少しずつ頭のほうに重心を移していくことができます。
アイアンガー氏の理論では「頭にすべての体重をかけよ」となっていますが、これには賛否があるようです。いずれはそのようにしていくことができますが、最初のうちは頭にかけすぎず、肘と前腕で主に体重を支える形で練習するのが良いかと思います。
頭に体重を乗せすぎず、肘でしっかり床を押して強い土台を作るための練習法は、下記の記事を参考にしてみてください。
以下の動画の後半で練習法とポイントを簡単に解説しています。
ポーズをやるオススメのタイミング
集中力UP、体全体を観察できるので、朝に行うのがオススメです。
流派によって、クラスのどのタイミングで行われるかが大きく異なりますが、上述のようにマユラーサナなど解毒のポーズを行ったあとには行わないようにしましょう。
慣れてくると、5分以上キープできるようになり、瞑想に適したポーズになります。瞑想ポーズ?こんなツラいポーズが?と私も最初は思いましたが…練習を重ねると安定してきてゆっくり呼吸できるようになり、とっても気持ち良いポーズになります。
アジャスト例(インストラクター向け)
- 段階的に、イージーバージョンを用いて練習してもらう。まずは頭頂を床につけるイメージとしてシャシャンカーサナを練習するだけでも良い。それからドルフィンや前屈(ウッターナーサナなど)を練習し、足を少しずつ頭に近い位置まで近づけられるようにしていく。
- 支える場合は、背中側真後ろから行うよりも、横か斜め背中側の位置にスタンバイして、脚の位置などを観察しながら行うと良い。
- 背中側へ倒れていくのを防止したいが、倒れ方は人それぞれ異なり、足から・太ももから・骨盤から倒れるなどいろいろなパターンがあるので、重心位置を見極めて必要な場所を支えられるようにする。
シークエンス例
- 肘があった位置に手のひらをついてサーランバシルシャーサナⅡへ。
- サーランバシルシャーサナⅡから、肘を伸ばして手の甲を床につけるムクタハスタシルシャーサナへ。
- 背中をそらして後屈し、組んでいた手を開いて手のひらを床につき、前腕で支えながら頭を浮かせてピンチャマユラーサナ、または後屈を深めて膝を曲げてヴリスチカーサナ(さそりのポーズ)。
- 蓮華座を組んで、パドマシルシャーサナへつなぎます。
- 頭頂をつく練習&代用ポーズとして、シャシャンカーサナから練習します。
アーサナ名の表記バリエーション
【日】シールシャーサナ、シルシャーサナ、シルシアーサナ、シールシアーサナ、シルシアサナ、ヘッドスタンド、頭立ち、頭倒立、三点倒立
【梵】Sirsasana
【英】Head Stand