オンラインレッスン ヨーガスートラ日本語訳
ヨーガスートラ解説 2.18-2.22 〜観るものと観られるもの〜

ヨーガスートラ解説 2.18-2.22 〜観るものと観られるもの〜

苦に満ちているといわれる、この世界の役割とは

ヨーガスートラを私なりに読み進めていくシリーズ。

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英訳出典:http://yogasutrastudy.info/
サンスクリット語辞書:http://spokensanskrit.org/

訳者の略称は下記の通りです。
[SS]: Swami Satchidananda
[SV]: Swami Vivekananda

Sutra 2.18 自然界を構成するもの

प्रकाशक्रियास्थितिशीलं भूतेन्द्रियात्मकं भोगापवर्गार्थं दृश्यम्॥१८॥
prakāśa-kriyā-sthiti-śīlaṁ bhūtendriya-ātmakaṁ bhoga-apavarga-arthaṁ dr̥śyam ॥18॥

(読み)プラカーシャ クリヤー スティティ シーラン ブーテンドリヤートマカン ボーガーパヴァルガールタン ドルシャン

(訳)観られるもの(プラクリティ・自然界)は、グナ(照明・活動・惰性=サットヴァ・ラジャス・タマス)によって成り立つ、元素や感覚器官で構成される自然界であり、その目的は観るもの(プルシャ・真我・魂)に経験と解脱の両方を与えることである。

[SS]: The seen is of the nature of the gunas: illumination, activity and inertia; and consists of the elements and sense organs, whose purpose is to provide both experiences and liberation to the Purusha.

[SS訳]: 観られるものは、グナ(照明・活動・惰性)によって成り立つ、元素や感覚器官で構成される自然界であり、その目的はプルシャ(真我)に経験と解脱の両方を与えることである。

[SV]: The experienced is composed of elements and organs, is of the nature of illumination, action and intertia, and is for the purpose of experience and release (of the experiencer).

[SV訳]: 経験をもたらすものは、元素や器官によって構成され照明・活動・惰性によって成り立つ自然界であり、(経験するものに対して)経験と解放を与える目的をもつ。

Sutra 2.19 自然界の構成物の4段階

विशेषाविशेषलिङ्गमात्रालिङ्गानि गुणपर्वाणि॥१९॥
viśeṣa-aviśeṣa-liṅga-mātra-aliṅgāni guṇaparvāṇi ॥19॥

(読み)ヴィシェーシャーヴィシェーシャ リンガ マートラーリンガーニ グナパルヴァーニ

(訳)グナの段階は、顕現した状態・非顕現の状態・定義された状態・定義できない状態がある。

[SS]: The stages of the gunas are specific, non-specific, defined and undefinable.

[SS訳]: グナの段階は、顕現した状態・非顕現の状態・定義された状態・定義できない状態がある。

[SV]: The states of the qualities are the defined, the undefined, the indicated only, and the signless.

[SV訳]: 特質の状態は、定義された状態・定義できない状態・ただ示された状態・示されない状態がある。

Sutra 2.20 澄んだ心で真我を観る

द्रष्टा दृशिमात्रः शुद्धोऽपि प्रत्ययानुपश्यः॥२०॥
draṣṭā dr̥śimātraḥ śuddho-‘pi pratyaya-anupaśyaḥ ॥20॥

(読み)ドラシュター ドルシマートラハ シュッドーピ プラティヤーヤーヌパシャハ

(訳)観るものは観るための力そのものであり、純粋だが、それは心を通して観られる(心が波立っていれば、色付けられた状態で現れる)。

[SS]: The Seer is nothing but the power of seeing which, although pure, appears to see through the mind.

[SS訳]: 観るものは観るための力に他ならず、純粋だが、それは心を通して現れる。

[SV]: The seer is intelligence only, and though pure, seen through the colouring of the intellect.

[SV訳]: 観るものは知そのものであり純粋であるが、知識の色付けを通して観られる。

Sutra 2.21 自然界の存在理由

तदर्थ एव दृश्यस्यात्मा॥२१॥
tadartha eva dr̥śyasya-ātmā ॥21॥

(読み)タダルタ エーヴァ ドルシャシャートマー

(訳)観られるものは、観るものの目的のためだけに存在する。

[SS]: The seen exists only for the sake of the Seer.

[SS訳]: 観られるものは、観るものの目的のためだけに存在する。

[SV]: The nature of the experience is for him.

[SV訳]: 経験を与える自然界は、彼のためだけに在る。

Sutra 2.22 解脱した人にとっての自然界

कृतार्थं प्रति नष्टमप्यनष्टं तदन्यसाधारणत्वात्॥२२॥
kr̥tārthaṁ pratinaṣṭaṁ-apy-anaṣṭaṁ tadanya sādhāraṇatvāt ॥22॥

(読み)クルタールタン プラティナシュタン アピ アナシュタン タダニヤ サーダーラナトヴァーッ

(訳)観られるものは、解脱を達成したものにとっては破壊されているが、他のものにとっては依然として存在し、共有されている。

[SS]: Although destroyed for him who has attained liberation, it [the seen] still exists for others, being common to them.

[SS訳]: 解脱を達成したものにとっては破壊されているが、他のものにとっては依然として(観られるものは)存在し、共有されている。

[SV]: Though destroyed for him whose goal has been gained, yet is not destroyed, being common to others.

[SV訳]: ゴールに達したものにとっては破壊されているが、他のものにとってはまだ破壊されておらず、共有されている。

解説・考察

この一連の節で、観るもの(プルシャ・真我・魂)と観られるもの(プラクリティ・自然界)についての説明がなされています。

1.16節でグナという言葉がでてきましたが、プラクリティは3つのグナ(サットヴァ・ラジャス・タマス)のバランスによって成り立っているとされます。

元々は純粋(サットヴァ)で均一であった世界が、ラジャス(動性)・タマス(惰性)が生まれることで様々な物質(粗大なもの、微細なもの含めて)が生まれました。ビッグバン前後の宇宙について考えると、もしかしたら整合性があるかもしれません。

そうして生まれた自然界というものは、私達は「自分(体)」と「それ以外のもの」が存在すると思い込んでいますが、「心」のような微細なもの(五感で感じ取れないもの・観測できないもの)も含めて、もちろん「体」や「感覚器官」も含めて、それらは全部「自分」ではないものであるとされています。

本当の自分(真我)は、ただ自然界(観られるもの)を観るものであり、何度も生を受けて自然界を観ることで経験を得て、最終的には再び自然界に戻ってくることなく解脱に至るとされます。

自然界はただそのためだけに存在し、解脱したプルシャにとっては用済みで破壊されていて、解脱していないプルシャにとっては存在し共有されています。

プルシャというものが存在することを知り、その本質に気づくことで解脱に近づけそうですが、2.20節で述べられたように我々は「心」を通してしかプルシャを観ることができません。

そのため1.4節でも述べられたように、心(世界やプルシャを観るための道具)が歪んでいると、プルシャも歪んでいたり色付けされたりして観測されてしまいます。

結局同じことを何度も表現を変えて言っているわけですが、このようにヨーガスートラの構成は、まず簡潔に結論を述べてから、いろーんなたとえ話や角度を変えた切り口を用いて説明を重ねてくれるという構造になっています。

これはインド哲学の本によくあるつくりです。インドで教わった先生の講義の仕方もまさにそんな感じで、たとえ話をたーくさんしてくれました。

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ヨーガスートラ日本語訳書籍

「インテグラル・ヨーガ パタンジャリのヨーガ・スートラ」スワミ・サッチダーナンダ (著), 伊藤 久子 (翻訳)

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