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「クンダリニー・タントラ」を読む【22】第1章 11節:下降するクンダリニー

「クンダリニー・タントラ」を読む【22】第1章 11節:下降するクンダリニー

サマーディに至った後、人はどのように世界と関わっていくのか

「KUNDALINI TANTRA(クンダリニー・タントラ)/Swami Satyananda Saraswati(スワミ・サティヤナンダ・サラスワティ)著」を読み進めていく形で、クンダリーニヨガの概要を紹介していきます。

「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)

「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)

用語:クンダリニー(クンダリーニ)
用語:チャクラ
用語:ナディ(ナーディー)

これらは今は誰もが見えるもの・感じ取れるものではないので、扱うのが難しい分野ではありますが、心身の改善のためにも、ヨガのポーズや瞑想を洗練させるためにも、そしてさらなる進化のためにも、これらの「見えないもの」も注意深く研究して、気づきを磨いていくと良いかと思います。

参考:クンダリニーヨーガ(クンダリーニヨガ)の研究まとめ

今回は、第1章の11節、クンダリニー覚醒によってサマーディを経験した人が、その後どのように世界に関わるようになるかという部分です。

以下、引用部分の太字強調は私が個人的に重要と思ったところを示したものです。

この記事の目次

サハスラーラまで上昇したクンダリニーが、再び下降する

Everybody talks about the ascent of kundalini, but few ever discuss the descent. When the descent of kundalini occurs, it means the lower mental plane of the human being is no longer influenced by the ordinary mind, the supermind takes over instead. This higher form of consciousness rules the body, mind and senses and directs your life, thoughts and emotions. Kundalini is henceforth the ruler of your life. That is the concept of descent.

クンダリニーに関して様々なことが語られますが、そのほとんどは「上昇」のことであり、「下降」に関して語られることは少ないようです。クンダリニー上昇によってサマーディ(合一)に至った人は、その後どうなるのでしょうか。

サティヤナンダ氏の説明によれば、その人の低次の体(肉体など)は今までの心に影響されることなく、高次の意識が代わりに支配するようになり、クンダリニーはその後の人生を導いていくことになるといいます。

ヨーガや神智学などでは、人間の存在をいくつかの重なった体・心であると定義し、この物質世界で活動している肉体が最も低次(重要ではないという意味ではなく)のものであるとしています。

高次元の意識いわば「魂の意志」といったものと「肉体の意志」は異なっていることが多く、その場合は葛藤やストレスや心身の病気が生まれます。

魂の指揮のもとに、重なり合った全ての体が適切な活動をしている、という状態が望ましく、クンダリニー覚醒はそのような状態に至るための重要なステップとなるようです。

たとえば特定のヨガポーズがずっとできなかったり、長年染み付いた癖がなかなか直らない・持病がなかなか治らないといった場合、肉体の欲求や執着が強すぎて、魂の指示が行き渡っていないような状態であることが多いかと思います。

サマーディの後に起こること

When Shiva and Shakti unite in sahasrara, one experiences samadhi, illumination occurs in the brain and the silent areas begin to function. Shiva and Shakti remain merged together for some time, and during this period there is a total loss of consciousness pertaining to each other. At that time a bindu evolves. Bindu means a point, a drop, and that bindu is the substratum of the whole cosmos. Within that bindu is the seat of human intelligence and the seat of the total creation. Then the bindu splits into two and Shiva and Shakti manifest again in duality. When ascension took place it was only the ascent of Shakti, but now, when descension takes place, Shiva and Shakti both descend to the gross plane and there is again knowledge of duality.

クンダリニー・シャクティが上昇して、頭頂のサハスラーラで待つシヴァと合一するサマーディが起こり、しばらく合一した状態にとどまり、そのときは完全にひとつになっているので「お互いに」「2つが1つになった」といった概念は存在せず、世界を創り出す素となる「ビンドゥ」というひとつの滴の状態になっているというように説明されています。

そこから再び2つに分かれ、二元性の世界へと下降していきますが、元々シャクティは単独で上昇していきましたが下降していくときはシヴァも一緒に降りていくというように示されています。

わざわざ上昇してひとつになれたのに、なぜまた降りてくるのか?という疑問の答えはここにあるようです。

下降していく際は二元性に関する智を得ている状態なので、再び物質世界に現れたときは、より高次の意識によってコントロールされている「アヴァターラ」として生まれ変わるといわれます。

Those who have studied quantum physics will have a better understanding of this as it is difficult for everyone to understand from the philosophical point of view. After total union there is a process of corning down the same pathway you ascended. The gross consciousness which became fine, again becomes gross. That is the concept of divine incarnation or avatara.

ひとつのものが分裂して世界を創っていくという概念は、ビッグバン理論や量子物理学、そして人間が卵子から出来上がっていく様子など、自然界のあらゆる場面に現れます。この物質世界は「分裂」によってできた「二元性」の世界であり、それはもともとはひとつだったものから生まれたのだ、ということを悟った状態で、再び二元性の世界で活動をするようになります。

近年のヨーガ研究者たちは、こういった話と量子物理学の理論との共通性をよく引用しています。元々一つだったものが分かれて宇宙ができたのだとしたら、量子もつれによって、遠く離れたところで起こった変化が「一瞬にして」他の場所に影響するといったことも十分に考えられることです。それは人間の体の中でも当然起こっていることでしょう。

クンダリニー覚醒者の、二元的な物質世界での振る舞い

When kundalini descends, you come down to the gross plane with a totally transformed consciousness. You live a normal life, associating with everybody and discharging your worldly obligations like other people do. Maybe you even play the game of desires, passions, cravings and such things. Maybe you play the game of victory and defeat, attachments and infatuations, but you just play a game. You know it; you do everything as an actor. You are not involved in it life and soul.

クンダリニー下降によって再び物質世界に降り立った人は、全てに「巻き込まれる」ことなく、まるでゲームを楽しむように、あるいは役を演じるように振る舞います。

ゲームのキャラクターやSNSアカウントのような「アヴァター」として世界に現れ、本体の意識は別のところにあるという状態です。

It is at this time the genius or the transformed consciousness manifests through you. You don’t have to think or plan how to perform miracles. You have to remember that you have come down as a transformed quality of consciousness. You must remember that you are now connected with those areas of the brain which were previously silent. And you must also remember that you are linked with those reservoirs of knowledge, power and wisdom which belong to the realm of the higher cosmos.

Until the descent is complete, such a man lives a very simple life, unnoticed and unattended. Once the descent is complete he begins to play the game and people recognize him as a divine incarnation. They see he is something special compared to everybody else and they call him a guru. Such a person is actually a junior god.

下降が始まって完了するまでは、通常その人は非常に簡素な生活を送り、世界に対して無関心のように振る舞うようです。しかし下降が完了すると、その人はゲームを楽しむかのように振る舞い始め、人々の目には特別な存在のように映り、人々の師となったり、神の化身のように扱われたりするといいます。

ここで、「特に奇跡を起こそうなどと考えなくてもよい、ただ自分は高次元の意識から降りてきたのだということを覚えておきなさい」というような指示があります。傲慢になることなく、再び物質世界の雑念にのまれることのないようにするためにも、こういった心の姿勢は重要であると思います。SO-HAM(私は「それ」である)のマントラなども、それを思い出すために有効なテクニックとなるでしょう。

参考:SO-HAM(ソーハム)瞑想のやり方・効果・意味、マントラの音に関する考察

When Shiva and Shakti descend to the gross level of awareness there is again duality. That is why the self-realized man is able to understand pain and all the mundane affairs of life. He understands the whole drama of duality, multiplicity and diversity. Sometimes we ordinary mortals are at a fix to understand how this man with the highest attainment is able to cope with the hopeless dualities of life.

ここには、もともとひとつだったのに、なぜ人はわざわざ「分裂」の物質世界に生まれ、苦しみも含めた様々な経験をしようとするのか、という問いへのヒントが含まれているように思えます。

覚醒を経た人は、合一に至ったけれども再び分裂の世界へ現れますが、そのとき「合一に至っているから二元性の世界のことはわからない」というわけではなく、分裂の世界に起こる様々なドラマのことをしっかり理解しているといいます。だからこそ、人々の悩みに対してしっかり正しいアドバイスができるのでしょう。

元々はひとつだった世界がわざわざ分裂したのは、様々なことを経験するためである、という考え方があります。神は全て知っているのでそれもまた神の戯れ(リーラ)であり、全ては幻(マーヤー)であるといった、いろいろな解釈があります。とはいえ確かなのは、私達は分裂しているが故に、争いもするし恋もするということでしょう。

合一に至った人も、また様々な経験をゲームのように楽しむためなのか、あるいは人々を導くためなのか、高次意識の指揮のもとに物質世界で役割を演じることになるようです。

物質世界に巻き込まれている人々にとっては、この世界で起こっていることが全てであり、そこに執着してしまい、間違ったこともします。間違ったこともまた、経験ではありますが。もし人々がもっと良き道を進みたいと思うなら、こういった覚醒を経た人が世界に現れ、人々を導くのかもしれません。

次記事:「クンダリニー・タントラ/サティヤナンダ(著)」を読む【23】第1章 12節-1:覚醒に伴う経験

前記事:「クンダリニー・タントラ/サティヤナンダ(著)」を読む【21】第1章 10節:覚醒の4ステップ

参考文献

「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)

「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)

「密教ヨーガ―タントラヨーガの本質と秘法」本山 博 (著)

「クンダリニー」ゴーピ・クリシュナ (著), 中島巌 (翻訳)

「Asana Pranayama Mudra Bandha 英語版」Swami Satyananda Saraswati (著)

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高橋陽介

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