「KUNDALINI TANTRA(クンダリニー・タントラ)/Swami Satyananda Saraswati(スワミ・サティヤナンダ・サラスワティ)著」を読み進めていく形で、クンダリーニヨガ(クンダリニーヨーガ)の概要を紹介していきます。
「クンダリニー・タントラ」の購入
ペーパーバック版・Kindle版
今回は、第1章の3節の冒頭です。
(引用部分の太字強調は私が個人的に重要と思ったところを示したものです。)
クンダリーニヨガの研究については、以下のページにまとめてあります。
用語:クンダリニー(クンダリーニ)・チャクラ・ナディ(ナーディー)
クンダリニーが住する次元
Kundalini or the serpent power does not belong to the physical body, though it is connected to it. Nor can it be discovered in the mental body or even the astral body. Its abode is actually in the causal body, where the concepts of time, space and object are completely lost.
クンダリニーとは、熱や電気のような感覚を起こすきっかけにもなりますが、それ自体は物質的な肉体に蓄えられたエネルギーではないとここでは説明されています。
ここで、メンタル体・アストラル体・コーザル体という言葉が出てきますが、それらの説明は後のチャクラの章でもされています。ここでは、クンダリニーはコーザル体の中に住しているとされ、コーザル体の世界は時間・空間・物質といった概念から完全に脱している、とだけ説明されています。
この概念を簡単に理解するのは難しいかもしれませんが、クンダリニーは特定の季節でないと目覚めないとか、特定の場所にいかないと目覚めないようなものではない(もちろん季節や場所によって心と体は影響を受けるので、関係がないというわけではありませんが)、というようにまずは理解しておくと良いかもしれません。
クンダリニーの次元や、コーザル体などの各体については、神智学なども調べていくと、様々な捉え方があるようです。いずれまた別の機会に、比較研究してまとめたものや私の経験なども書ければと思います。
クンダリニーと意識の関係
How and where is the concept of kundalini related to the supreme consciousness? The serpent power is considered to arise from the unconscious state in mooladhara. This unconscious awareness of man then has to pass through different phases and becomes one with the cosmic awareness in the highest realm of existence. The supreme awareness or Shiva is considered to be seated in sahasrara, the superconscious or transcendental body at the crown of the head. In the Vedas, as well as the Tantras, this supreme seat is called hiranyagarbha, the womb of consciousness. It corresponds to the pituitary body, the master gland situated within the brain.
ここで「consciousness 意識」や「awareness 気づき」に関する話が出てきます。クンダリニー覚醒にあたって、意識や気づきは超越的な状態に進化していくといわれます。
それはどのように起こるのかというと、「無意識」の座である脊柱基底のムーラダーラチャクラに眠っていた蛇の力が目覚めて上っていくにつれて、人は無意識の状態からいくつもの次元の意識状態・気づきの度合いを経て、頭頂のサハスラーラに至るときには、シヴァ神の意識と合一し、宇宙全体への気づきを得た存在になっていくといわれます。
簡単に言えば、クンダリニーが上っていくにつれて、途中に存在するチャクラが段階的に覚醒し、それに応じて意識と気づきのレベルが上っていくということになるでしょう。
頭頂は、インドの古典ヴェーダやタントラによれば「ヒラニヤガルバ(意識の子宮:宇宙がつくられる場所)」などと呼ばれ、それは肉体上では脳下垂体に関連している言われます。脳下垂体は脳の中央付近に位置し、生命維持などのために重要なホルモンをコントロールしています。
ちなみにガルバ(子宮)という言葉が使われるヨガポーズもありますね。
ヒラニヤガルバという言葉は、ユクテスワ氏やヨガナンダ氏の本の中にも度々でてくる比較的よく用いられる概念です。シヴァナンダヨガの太陽礼拝のマントラの中にも出てきます。
チャクラ、第三の目
Immediately below this center of supreme consciousness, there is another psychic center – “the third eye” or ajna chakra, which corresponds to the pineal gland. This is the seat of intuitive knowledge. This center lies on top of the spinal column, at the level of bhrumadhya, the eyebrow center. Ajna chakra is important because it is simultaneously connected with the seat of supreme consciousness in sahasrara and with mooladhara, the seat of the unconscious, at the base of the spine, via sushumna, the psychic passage within the spinal column. Therefore, it is the connecting link between the lowest unconscious seat of power and the highest center of illumination within the individual.
頭頂のサハスラーラの直下には、「第三の目」とも呼ばれるアージュニャーチャクラがあり、これは肉体上では松果体(松果腺)と関係しています。このチャクラは「直観」の座であるとされます。
アージュニャーチャクラは、至上意識の座であるサハスラーラと、無意識の座であるムーラーダーラチャクラに直接つながっている重要なチャクラです。
第3章で述べられるクリヤーヨーガでは、まず最初にこのチャクラを目覚めさせる行から始めることになります。第1チャクラのムーラーダーラチャクラからではないのか?ということもそこで説明されますが、アージュニャーチャクラとムーラーダーラチャクラは、離れていますが直接的につながっています。
しかし頭の真ん中にある松果腺をイメージするのは多くの人にとって難しいため、かわりに肉体の表面にある「眉間」への集中がよく行われます。
肉体を足がかりとして、人間の進化へ向かう
Kundalini yoga is not abstract. It considers this very physical body as the basis. For a kundalini yogi, the supreme consciousness represents the highest possible manifestation of physical matter in this body. The matter of this physical body is being transformed into subtle forces – such as feeling, thinking, reasoning, remembering, postulating and doubting, in the gradual process of evolution. This psychic, suprasensory or transcendental power in man is the ultimate point of human evolution.
サティヤナンダ氏の唱えるクンダリニーヨーガは、抽象的なものではなく、物質的(ヨーガではよく「粗大」と表現される)な肉体をベースにして行われます。
至上の意識は、この肉体の表しうる最上の表現として現れたものであるとされ、肉体を構成する物質は、思考や記憶などのより微細な力(心の働きなど)へと変化していくという流れで説明されています。
微細なものから粗大なもの、粗大なものから微細なもの、どちらの変容の流れも存在し、どちらから変化しても、結果としてどちらも変化するといわれていますが、ここで示されるヨーガの道は主に肉体を用いて、その進化の過程を始めていくということでしょう。
次記事:「クンダリニー・タントラ/サティヤナンダ(著)」を読む【9】第1章 3節-2:チャクラとは
前記事:「クンダリニー・タントラ/サティヤナンダ(著)」を読む【7】第1章 2節後半:クンダリニーを表す蛇のイメージ、覚醒の条件
参考文献
「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)
「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)