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「クンダリニー・タントラ」を読む【42】第3章 5節:ムーラーダーラチャクラの覚醒方法

「クンダリニー・タントラ」を読む【42】第3章 5節:ムーラーダーラチャクラの覚醒方法

骨盤底の第1チャクラ、ムーラーダーラチャクラの覚醒方法

「クンダリニー・タントラ/スワミ・サティヤナンダ・サラスワティ著」を読み進めていく形で、クンダリーニヨガ(クンダリニーヨーガ)の概要を紹介していく連載記事です。

「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)

「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)

参考:クンダリニーヨーガ(クンダリーニヨガ)の研究まとめ

今回は、第3章の5節、ムーラーダーラチャクラ覚醒の行法のやり方に関する部分です。

ムーラーダーラチャクラ自体の詳しい説明は、以下の記事を参考にしてください。

参考:ムーラーダーラチャクラの解説

以下、引用部分の太字強調は私が個人的に重要と思ったところを示したものです。

この記事の目次

ムーラーダーラチャクラ覚醒の流れ

The process of awakening mooladhara chakra is not very difficult. It can be achieved by thousands of different methods, but the easiest of all is the concentration on the tip of the nose.

ムーラーダーラチャクラの覚醒はそれほど難しいことではなく、様々な方法で覚醒させることができますが、最も簡単なものは「鼻先に集中する」ことであるといいます。

それは、ムーラーダーラチャクラに関係する感覚中枢は「鼻」であり、関係する要素は「地」で、これは「匂い」に関係するからであると説明されています。このあたりの話は、第2章のムーラーダーラチャクラの説明でも解説されていました。

ここで紹介される行法には、鼻先を凝視する「ナシカグラ・ドリシュティ」や、チャクラを直接刺激する「ムーラバンダ」が含まれています。

ムーラーダーラチャクラは、他のチャクラとは異なり、クシェートラム(対応する体表の点)を持たないと説明されています。ただ、体表の点としては「会陰(性器と肛門の間)」を刺激する行法や坐法が用いられます。

This sadhana (practices 1, 2 and 3), for mooladhara chakra, should be done for a period of one month. You should also continue the practices for awakening ajna chakra.

これから示されるムーラーダーラチャクラ覚醒の行法3つを1ヶ月間行い、その間はアージュニャーチャクラの行法も継続して行うべし、と指示されています。

ムーラダーラチャクラやスワディシュターナチャクラは性に大きく関係しており、その覚醒法や位置の説明は、性教育の授業のような感じで、性器や骨盤底筋などが関わってきますので、ちょっと苦手なひとは心の準備をしておいてください。

ムーラバンダ、ヴァジローリームドラー(サハジョーリームドラー)、アシュウィニムドラーの違い

骨盤底周辺の筋肉の収縮を用いる3つの行法として、ムーラーダーラチャクラの覚醒に用いられる「ムーラバンダ」と、スワディシュターナチャクラの覚醒に用いられる「ヴァジローリームドラー または サハジョーリームドラー」「アシュウィニムドラー」があります。

これらは全て骨盤底周りの行法なので、集中する部分が男女で異なっていたり、混同されてしまいやすいため、ここで正確に区別するための図説が示されています。

For women:

Key to location of contraction points:

1. Vajroli or sahajoli mudra (clitoris, lower vaginal muscles and urethra)
2. Moola bandha (cervix)
3. Ashwini mudra (anal muscled/sphincters).

  1. ヴァジローリーまたはサハジョーリームドラー:クリトリス・膣下部の筋肉・尿道
  2. ムーラバンダ:子宮頸口
  3. アシュウィニムドラー:肛門(肛門括約筋)

というように説明されていますが、1は簡単に言えば尿を止めようとするときに使う筋肉を締める動きです。

For men:

Key to exact location of contraction points:

1. Vajroli mudra (penis)
2. Moola bandha (between anus and scrotum; perineal body)
3. Ashwini mudra (anal muscles/sphincters).

  1. ヴァジローリームドラー:ペニスの根元
  2. ムーラバンダ:会陰(睾丸と肛門の間)
  3. アシュウィニムドラー:肛門(肛門括約筋)

男性の場合は、1は尿を止めようとする動きで練習することが多いですが、正確にはそれよりも少し前方のイメージです。

2の会陰の少し内側(図では上)には前立腺があります。ムーラバンダやヴァジローリームドラーを練習すると、前立腺肥大や尿もれなどにも効果があります。

3のアシュウィニムドラーは、男女共通で肛門を締める動きです。肛門を締める力は生命力そのものを表していると言われ、これも男女共通で重要な行法です。

男性は1と2は身体の中(表皮よりも内側)に点があるイメージですが、女性はどれも管の途中(表皮の外側)にあるというイメージです。

アシュウィニムドラーには「アシュウィニームドラー」「アシュヴィニームドラー」「アシュヴィニムドラー」という表記もあり、私は「アシュヴィニームドラー」をよく使っていましたが、実際に教典によってはAshwiniとAshviniの表記が両方見られるようです。クンダリニー・タントラではAshwiniと書かれているので、ここではアシュウィニムドラーという表記を使うことにします。

行法1:チャクラの位置を把握する

ムーラバンダで筋肉を収縮する位置が男女で異なっていたように、ムーラーダーラチャクラの位置も男女で異なります。

ここでは男女別に、位置を正確に把握するための説明と行法が示されています。

ムーラダーラチャクラの位置を把握する、男性向けの方法

Become intensely aware of the distinct pressure exerted on the perineal body. Center yourself at the pressure point.

男性向けの、ムーラダーラチャクラの位置を把握する行法です。ここでは「会陰(睾丸と肛門の間)」が重要なポイントとして挙げられています。

シッダーサナまたは、会陰をかかとで押せるような坐法(ウッタンパーダーサナなど)で坐ります。

目を閉じて、完全にリラックスし、肉体の全ての部分に意識を向けます。

かかとと会陰が接している部分に気づきを向けて、かかとで会陰に明確な圧をかけ、その部分に意識の中心を置きます。

その後、呼吸に気づきを向けて、その会陰に圧がかかっている部分から呼吸しているようにイメージします。

会陰を通る息は次第に繊細になっていき、その流れがムーラダーラチャクラまで通るようになり、それによってムーラダーラチャクラの位置が把握できるようになるといいます。そこで精神物理的な収縮を感じる、と説明されています。その位置を感じながら「ムーラダーラ、ムーラダーラ、ムーラダーラ…」と頭の中で唱えるべし、と指示されています。

会陰と呼吸に気づきを向けながら、5分間ほど行います。

ムーラダーラチャクラの位置を把握する、女性向けの方法

Move your awareness to the lower part of the body and focus your attention on the contact point between your heel and the opening of the vagina. Become intensely aware of the slight but distinct pressure at this point. Center yourself at the pressure point.

女性向けの、ムーラダーラチャクラの位置を把握する行法です。男性の場合は「会陰」にかかとを当てる坐法を用いましたが、女性の場合は「膣口」にかかとを当てるようにして行います。

シッダヨーニアーサナまたは、快適な他の坐法で坐ります。目を閉じて、完全にリラックスします。

意識を下半身へ向け、かかとと膣口が当たっている部分に気づきを向けます。ごく弱いが確かな圧をその点に感じ、そこに意識の中心を置きます。

Now become aware of your natural breath. Feel or imagine that you are breathing in and out of the pressure point. Continue this for 10 deep breaths.

自然な呼吸に気づきを向け、かかとと接している膣口の部分から呼吸をしているようにイメージし、10回ほど深い呼吸を繰り返します。

Now bring your awareness inside the body. From the point of external pressure, move your awareness in towards the base of the spine. Follow the natural formation of the vagina, moving up at a slight angle and back towards the spine until you come to the opening of the womb.

膣口に置いていた意識の中心を、膣の通り道にそって脊柱の根元の方向(上・後ろの方)へ動かして行き、子宮口(脊柱の根元の真下)へ至ります。呼吸に合わせて、吐くときは子宮口から膣口へ、吸うときは膣口から子宮口へと意識を動かします。

その通り道のどこかで、ムーラダーラチャクラの位置を感じ取るであろう、と説明されています。明確にその位置を意識しながら、「ムーラダーラ、ムーラダーラ、ムーラダーラ…」と頭の中で唱え、これを5分間ほど続けよ、と指示されています。

ムーラダーラチャクラの位置を、手で触って確認する方法

以上の男性向け・女性向けの行法を注意深く読んでいくと、最終的には「その位置は自然に感じ取れる」といったニュアンスが感じられます。

たしかにこういったものは、位置を教えられてもすぐにわかるものではないですし、歴史上の最初にそれを見つけた人は、誰に教わることもなく自分で感じ取って見つけたはずです。

特に低位のチャクラについては微妙に異なる理論もたくさんあるため、ある程度のヒントを元に、自分の感覚を磨いていくことがとても重要かと思います。

チャクラは身体の内部にあるので直接手で触ることは難しい場合が多いですが、ムーラダーラチャクラは比較的近くまで触ってみることができるため、ここでは手でその位置を確かめる方法が説明されています。性器やその周辺を触ることになるため、清潔な状態で、冷静な心で行いましょう。

目的としては、「骨盤底筋」としてざっくり捉えていた筋肉群を、しっかり分離して捉えて、ムーラダーラチャクラ付近の筋肉だけを分離して収縮できるようにする練習です。

骨盤底筋についての詳細は、下記のページに書いてあります。

参考:骨盤底筋

Men should sit in a comfortable position and press one finger onto the perineum, midway between the anus and scrotum, then contract the muscles there. The contraction will be felt. When they can contract those muscles without movement of the anus or penis, the perineal body has been successfully isolated.

まず男性向けのやり方です。

快適な状態で坐り、陰嚢と肛門の間にある会陰を指で押し、そこにある筋肉(骨盤底筋、体表に近いのは浅会陰横筋など)を確認します。

肛門やペニスが動くことなく、その会陰の筋肉のみを収縮させることができるように練習します。

Women should assume a comfortable sitting or lying position and gently insert one finger into the vagina as far as it will go. Then tighten the muscles so that the walls of the upper vagina contract and squeeze the finger. If they can do this without contracting the anus or the front part of the perineum (clitoris and urinary opening), then location of mooladhara is correct.

次に、女性向けのやり方です。

快適な坐法で坐るか、仰向けに寝た状態で、指を膣の中へ入れ、できるだけ奥まで進みます。その指を締めつけるように、腟内の上部の筋肉を収縮します。

その筋肉を、肛門や会陰の前側の筋肉(クリトリスや尿道口周辺)を収縮させずに、分離して収縮させることができるように練習します。

行法2:ムーラバンダ

ムーラバンダの行法は3段階で説明されていて、第1段階では正確にムーラダーラチャクラ周辺の筋肉だけを収縮する練習をし、第2段階ではそれを一定のリズムで細かく繰り返す練習をして、第3段階ではそれを筋肉の収縮を伴わずイメージだけで行うようにしていくという流れです。

ムーラバンダを洗練させる行法は、特にアシュタンガヨガ太陽礼拝などのヴィンヤサヨガや、立位バランス・アームバランスのアーサナを安定させるためにも有効な練習です。ヴィンヤサヨガの最中は基本的にムーラバンダを締め続けています。そして最終的にはここで示されているように、筋肉の収縮を伴わないムーラバンダを使うことになります。

第1段階

シッダーサナまたは会陰(睾丸と肛門の間)をかかとで押せるような坐法で坐ります。

目を閉じて、体全体をリラックスします。深く息を吸い、息を止めてムーラダーラチャクラ周辺の筋肉を収縮します。

Draw the muscles upwards as much as you are able without excessive strain. Try to contract only the mooladhara chakra trigger point, so that the urinary musculature in front and the anal sphincters behind, remain relaxed.

「Draw the muscles upwards」という指示があるように、会陰の筋肉を引き締めると、体の内側へドーム状に引き上がる形になります。体が力むことのないように、尿道や肛門などの筋肉は収縮することなく、会陰の筋肉だけを収縮するようにします。収縮した点に意識を集中し、その状態をなるべく長く保ちます。

その後、ムーラバンダを解いて、通常の呼吸に戻ります。これを毎日数分間練習します。

Jalandhara bandha (described in chapter 9 of this section), can also be added to the practice. With breath retention, perform jalandhara bandha, then moola bandha. Before exhaling, release moola bandha, then jalandhara bandha.

首を深く曲げてアゴを鎖骨の間につける「ジャーランダラバンダ」(この章の9節で説明されます)を合わせて実践するのも効果的です。

息を止めた時、ジャーランダラバンダ→ムーラバンダの順番で行い、息を吐き始める前にムーラバンダ→ジャーランダラバンダの順番で解きます。

参考:バンダとは

第2段階

Contract and release moola bandha rhythmically. About one contraction per second is reasonable, or if you wish, you can synchronize the contraction with the heart beat. Again, ensure that the contraction is focused at the exact trigger point and at the anus. Direct all your attention to the point of contraction. Practise for a few minutes daily.

会陰の筋肉の収縮を、1秒に1回ほどのペース、あるいは心拍と同じテンポで、リズミカルに繰り返します。

全ての気づきを、収縮する点へ向け、毎日数分間練習します。

ここで、「正確なトリガーポイントと肛門」を収縮せよと書いてありますが、第1段階では会陰と肛門は分離する練習をしていたため、第1段階と第2段階では異なる収縮の仕方をしているのかもしれません。あるいは肛門は収縮させないように意識せよという意図なのかもしれません。

いずれにしても、分離したり一緒にしたりといったコントロールが自由にできるようにしておくと良いでしょう。

第3段階

Leave all physical contraction. Try to feel the pulse beat at the trigger point, or try to contract the point mentally.

物理的に筋肉を収縮することなく、ムーラダーラチャクラのトリガーポイントに拍動を感じるようにするか、あるいはリズミカルに収縮しているイメージをします。

ムーラダーラチャクラの領域へ直接的に気づきを向けます。第2段階と同じようにリズミカルに拍動するイメージで行いますが、筋肉は収縮させません。

できる限り長い時間、これを続けて行えるようにします。

この練習によって、ムーラダーラチャクラの位置を、ただ考えるだけで正確に感じ取れるようになるといいます。このことからも、知識としてムーラダーラチャクラの位置を把握するのとは異なり、自分の感覚でわかるようになりなさい(そして、それが実際に可能である)という意図が感じられます。

行法3:ナシカグラ・ドリシュティ

Sit in any meditative pose with the spine erect and the head facing forward. Close your eyes and relax your whole body for some time. Then open your eyes and focus them on the nosetip. Do not strain your eyes, but try to fix your gaze on the tip of the nose. Respiration should be normal.

瞑想に適した坐法で坐り、背骨をまっすぐ立てて、顔は正面に向けます。目を閉じて、しばらく体全体をリラックスします。

目を開けて、力まないようにしながら、しっかり鼻先を凝視します。呼吸は自然に続けます。

When the attention of both eyes is focused on the nosetip, you will see that the double outlines of the nose merge to become a single solid outline. You should direct your gaze to the V-shaped point where the two outlines cross each other at the very tip of the nose.

鼻先を寄り目にするようにして見ると、鼻の輪郭が重なり合って、逆V字の形が見えるはずです。

もしうまく逆V字が見えない場合は寄り目がうまくできていないので、指先を目の前方10インチ(約25cm)のところに立てて見つめてから、そこからゆっくり鼻先へと目線を下げていく、というやり方で練習します。必要なければ、この流れは行わずにすぐ鼻先への凝視を行っても良いです。

最初のうちは、鼻先へ集中することは意外と難しく、数秒間しかキープできないかもしれません。目などに不快感がある場合は無理に続けずに数秒間休んでから、また続けて行うようにしていきます。

数週間つづけて練習を行って目が慣れてきたら、少しずつ実践時間を長くしていきます。

Be aware of the nosetip, the movement of the breath and the accompanying sound. Carry on in this manner for up to 5 minutes.

目を力ませることなく安定した凝視ができるようになってきたら、鼻先への意識と同様に呼吸にも意識を向けます。鼻を出入りする息を感じ、鼻道で生じる微細な音にも気づきを向けます。

鼻先・鼻孔からの息の出入り・鼻道を息が通る音、これらに気づきを向け、完全にこの行法に没頭し、雑念や外からの刺激に妨害されることがないようにしていきます。これを5分間ほど行います。

やり方としてはシンプルですが、この節の最初に説明された通り、鼻先への集中はムーラダーラチャクラの覚醒のためにとても効果的な行法です。眉間にアージュニャーチャクラ、鼻先にムーラダーラチャクラに対応する点があるとしたら、鼻筋は背骨やスシュムナーに対応しているということがわかります。

次記事:「クンダリニー・タントラ」を読む【43】第3章 6節:スワディシュターナチャクラの覚醒方法

前記事:「クンダリニー・タントラ」を読む【41】第3章 4節:アージュニャーチャクラの覚醒方法

参考文献

「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)

「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)

「密教ヨーガ―タントラヨーガの本質と秘法」本山 博 (著)

「クンダリニー」ゴーピ・クリシュナ (著), 中島巌 (翻訳)

「Asana Pranayama Mudra Bandha 英語版」Swami Satyananda Saraswati (著)

男性ヨガインストラクター 高橋陽介の写真

by 高橋陽介

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