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「クンダリニー・タントラ」を読む【9】第1章 3節-2:チャクラとは

「クンダリニー・タントラ」を読む【9】第1章 3節-2:チャクラとは

様々なチャクラ理論の中のひとつとして、注意深く読み解いてゆく

「KUNDALINI TANTRA(クンダリニー・タントラ)/Swami Satyananda Saraswati(スワミ・サティヤナンダ・サラスワティ)著」を読み進めていく形で、クンダリーニヨガ(クンダリニーヨーガ)の概要を紹介していきます。

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今回は、第1章の3節のチャクラに関する部分です。

(引用部分の太字強調は私が個人的に重要と思ったところを示したものです。)

クンダリーニヨガの研究については、以下のページにまとめてあります。

参考:クンダリニーヨーガ(クンダリーニヨガ)の研究まとめ

用語:クンダリニー(クンダリーニ)チャクラナディ(ナーディー)

この記事の目次

「チャクラ」の意味

The literal meaning of the word chakra is ‘wheel or circle’, but in the yogic context a better translation of the Sanskrit word is ‘vortex or whirlpool’. The chakras are vortices of psychic energy and they are visualized and experienced as circular movements of energy at particular rates of vibration.

「チャクラ」という言葉のもともとの意味は「車輪」や「円」ですが、ヨーガにおいては「vortex 渦」と捉えたほうが、その本質に近いようです。

チャクラは超常的なエネルギーが出入りする渦であり、その様子は特定の周波数で円運動をするエネルギーとして、視覚化されたり感じ取れたりするといわれます。

チャクラの数

In each person there are myriads of chakras, but in the practices of tantra and yoga, only a few principal ones are utilized. These chakras span the full spectrum of man’s being from the gross to the subtle.

チャクラの数については諸説あります。ここでは、チャクラは人の中に無数に存在するけれども、タントラやヨーガにおいては後に挙げられる数個の主要なものが用いられると説明されています。

サティヤナンダ氏の理論では、主要なチャクラは6つで、チャクラとは別のものという形でビンドゥとサハスラーラが用いられています。サハスラーラをチャクラとして数えて主要なチャクラを7つとする理論も多いです。

参考:チャクラに関する研究まとめ2 〜チャクラの構造と位置〜

チャクラは人間の存在を、粗大な世界から微細な世界へと広げていくものであるといわれます。物質世界にのみ生きて執着していた人が、「見えないもの」の存在に気づいていくことになります。

しかしチャクラを理解することはそんなに雲をつかむようなものではなく、以下に示されるように肉体上の器官との関係も深く、微細な世界へ感覚を広げていくための足がかりとしては比較的わかりやすいかと思います。

チャクラの働き

The chakras are physiological as well as psychic centers whose structures correspond more or less with the traditional descriptions. These nerve centers are not situated inside the spinal cord itself, but lie like junctions on the interior walls of the spinal column. If you cut the spinal cord transversely at different levels you can see that the grey matter in the cross section resembles the lotus shape and the ascending and descending tracts of nerve fibers correspond to the nadis. These communicating nerve fibers control the different physiological functions of that portion of the body. Many books state that the chakras are reservoirs of power, but this is not true.

チャクラは、その形状や、機能したときに花開く様子にたとえられることから「lotus 蓮華」と呼ばれることも多いです。

チャクラは、生理学上でも超常的な世界においても機能する中心であり、様々な古典から伝えられている構造は概ね一致しているようです。

チャクラと関係する神経の中心は、脊柱の中にあるのではなく、椎骨の内壁に神経の交差点のように存在しているといいます。実際に背骨を水平に切った断面を見てみると、蓮華のような形をした神経の交差点(神経叢)があり、そこから上下に伸びている神経の束はナディの構造に一致していると説明されています。

これについては諸説あり、実際の神経とナディや経絡は、一致する部分もあれば一致しない部分もあるようです。本山博氏も「密教ヨーガ」でこのあたりの考察を詳しく述べています。

クンダリニー症候群の危険性について述べられる際によく引用される、ゴーピ・クリシュナ氏の「クンダリニー」では、チャクラを個別に覚醒させたりすることなく、クンダリニーが覚醒してしまったときの様子が描かれていますが、彼はこの各神経叢にインパルスが走って発光するように感じられたことから、これらがチャクラなのではないかといった理論を述べています。

また、多くの本でチャクラは「力の貯蔵庫」であると説明されることがありますが、これは誤りであるとサティヤナンダ氏は述べています。

個人的には、たしかにチャクラは「力をためておくところ」というよりは「渦」であり、多次元的に通じる「出入り口」であって、そこをエネルギーや情報が出入りしているという感覚があります。ただ、渦が通じている先にエネルギーがたくさんあるのであれば、力が湧き出してくる貯蔵庫と捉えることもできるかもしれません。

また、「チャクラ」の元々の意味である「車輪」が示すように、その渦を機能させるには「回転」が大きな意味を持っているように思えます。

第1チャクラ:ムーラーダーラチャクラ

The first chakra is mooladhara. It is situated in the pelvic floor and corresponds to the coccygeal plexus of nerves.

ムーラーダーラチャクラの位置については、序章でも簡単に説明されましたが、ここでは少しだけ細かく骨盤底・尾骨神経叢といった位置が示されています。

Mooladhara is the first chakra in the spiritual evolution of man, where one goes beyond animal consciousness and starts to be a real human being. It is also the last chakra in the completion of animal evolution. It is said that from mooladhara chakra right down to the heels there are other lower chakras which are responsible for the development of the animal and human qualities of instinct and intellect. From mooladhara chakra upwards lie the chakras which are concerned with illumination and evolution of the higher man or super man.

人間における1つめのチャクラであるムーラーダーラチャクラは、人間に進化の過程においては最も下に位置していますが、人間以外の動物にとっては進化の最終到達点であるとされています。

人間にも、ムーラーダーラチャクラより下へ向かってカカトに至るまで下位のチャクラがあり、それらが動物と人間の直観と知性の違いを表し、ムーラーダーラチャクラから上のチャクラは、人間の進化に関係しているという構造であるといいます。

Mooladhara chakra has control over the entire range of excretory and sexual functions in man.

ムーラーダーラチャクラの機能としては、排泄や生殖器に関係しているとされます。

チャクラの機能については、これも諸説様々です。ムーラーダーラチャクラは大地や安定感を表すとか、いろいろな言い方ができるかと思います。

ひとまずこの章では各チャクラについて簡潔に説明されていますので、さらっと主要チャクラを知っておけば良いかと思います。第2章以降で、チャクラについてはより詳細に示されていきます。

第2チャクラ:スワディシュターナ(スヴァディシュターナ)チャクラ

The second chakra is swadhisthana, located at the lowest point or termination of the spinal cord. It corresponds to the sacral plexus of nerves and controls the unconscious in man.

第2チャクラのスワディシュターナ(スヴァディシュターナ)は、仙骨神経節に位置し、人間の無意識をコントロールすると説明されています。

どうもこのあたりは、第1チャクラと機能や位置などが混同されることが多く、いろいろな文献を調べても不明瞭な印象があります。

神智学では同じ名前で脾臓チャクラを示していたり、そもそもそういう名前のチャクラはないと説明されることもあります。脾臓チャクラは、一般的なハタヨーガの中には存在しない概念ですが、神智学ではとても重要なものとして扱われます。このあたりはリードビーター氏の書籍「チャクラ」が詳しいですが、訳者の本山博氏が注意書きを示しているように、このチャクラに関しては特に議論が分かれるポイントが多くあります。

こういった分野では、同じ名前でも、同じものを説明しているかもしれないし別のものを説明しているということもよくあります。注意深く調べていくことにしましょう。

第3チャクラ:マニプーラチャクラ

The third chakra is manipura, situated in the spinal column exactly at the level of the navel. It corresponds to the solar plexus and controls the entire processes of digestion, assimilation and temperature regulation in the body.

第3チャクラのマニプーラは、脊柱の中のへその高さの部分にあるとされ、みぞおち付近にある太陽神経叢をコントロールし、消化吸収や体温調節などに関係すると説明されています。

マニプーラチャクラは、機能については概ね同じ説明がされることが多いですが、チャクラ自体の位置については下腹部なのかへそなのかみぞおちなのか、いくつかの説があるようです。

第4チャクラ:アナーハタチャクラ

The fourth chakra is anahata, and it lies in the vertebral column behind the base of the heart, at the level of the depression in the sternum. It corresponds to the cardiac plexus of nerves, and controls the functions of the heart, the lungs, the diaphragm and other organs in this region of the body.

第4チャクラのアナーハタは、心臓の基底の裏側、胸骨のくぼみの高さの椎骨の中にあると説明されています。心臓神経叢に関係し、心臓・肺・横隔膜など胸部にある器官の機能に関係しているとされます。

アナーハタチャクラも、心臓の位置なのか胸腺の位置なのかといった微妙な定義の違いが見られます。

第5チャクラ:ヴィシュッディチャクラ

The fifth chakra is vishuddhi, which lies at the level of the throat pit in the vertebral column. This chakra corresponds to the cervical plexus of nerves and controls the thyroid complex and also some systems of articulation, the upper palate and the epiglottis.

第5チャクラのヴィシュッディは、喉の高さにある椎骨の中にあり、頚神経叢と関係して甲状腺の機能や発声、上口蓋や咽頭蓋をコントールしているといいます。

発声に関係することから「表現」に関係し、私もこういった文章を書いたり何かを表現して伝えるときは、このチャクラが気持ちよく機能しているように意識することもあります。首に位置するので、やはり姿勢が良くないとうまく機能しないような感覚があります。

第6チャクラ:アージュニャーチャクラ

Ajna, the sixth and most important chakra, corresponds to the pineal gland, lying in the midline of the brain directly above the spinal column. This chakra controls the muscles and the onset of sexual activity in man. Tantra and yoga maintain that ajna chakra, the command center, has complete control over all the functions of the disciple’s life.

第6チャクラのアージュニャーは、サティヤナンダ氏の理論の中では最も重要なチャクラとされます。

ちなみにカタカナで表記する場合、「アジナ」「アジュナ」などいろいろな表記法があります。発音の難しいサンスクリット語で、実際の発音は「アーンニャー」に近いです。

参考:サンスクリット語の基礎知識

脳の中心付近にある松果体(松果腺)と関係し、筋肉の働き、生殖活動の始まりなどをコントロールすると説明されます。タントラやヨーガでは、アージュニャーチャクラは「司令塔」として扱われ、人の人生全てをコントロールするものであるとされます。

ビンドゥとサハスラーラ

サティヤナンダ氏の理論では以上の6つのチャクラが定義され、それぞれ覚醒することによって、ナディを伝わって脳の中の様々な機能を活性化させるために機能するといいます。

There are also two higher centers in the brain which are commonly referred to in kundalini yoga: bindu and sahasrara.

さらにチャクラとは区別される形で、ビンドゥとサハスラーラの2つの中心が示されています。

Bindu is located at the top back of the head, where Hindu brahmins keep a tuft of hair. This is the point where oneness first divides itself into many. Bindu feeds the whole optic system and is also the seat of nectar or amrit.

ビンドゥは頭頂の少し後ろあたりに位置し、ヒンドゥー教のブラフミン(バラモン)は、基本的に坊主頭なのですがここだけ髪を残して束を結んでいます(「brahmin hair」などで画像検索すると出てきます)。

「ビンドゥ」は「点」「しずく」といった意味の言葉ですが、ひとつだったものがここからたくさんのものに分かれて世界ができていったということを表しているといいます。こういった秘められた意味もあり、チャクラとは区別して扱っているようです。

ビンドゥは視力をもたらし、また「ネクター」「アムリタ」と呼ばれる「霊薬」が生じる、あるいはその受け皿となる場所として考えられています。視力にも関係することから、私もこのビンドゥには注目しています。実際、ここに意識を集中したり軽くマッサージしたりすることで、すぐに視力が変わってきます。

Sahasrara is supreme; it is the final culmination of kundalini shakti. It is the seat of higher awareness. Sahasrara is situated at the top of the head and is physically correlated to the pituitary gland, which controls each and every gland and system of the body.

サハスラーラは、第7チャクラとして扱われることも多いですが、サティヤナンダ氏はチャクラとは区別して特別なものであるとして扱っています。サハスラーラは頭頂に位置し、脳下垂体と関係があり、全身の内分泌腺(ホルモンバランスなど)をコントロールするとされます。骨盤底から旅をしてきたクンダリニーが最終的に至るところであり、高次元の気づきの座であるといいます。

アージュニャーとサハスラーラは、脳下垂体に関係するのか松果体に関係するのか、逆に説明される理論も見受けられます。

ここではサティヤナンダ氏の理論を元に進めていきますが、いろいろな行法や理論を研究していくと、主要なチャクラとして用いられるものが微妙に異なっていたり、位置や機能や肉体の器官との関係性なども微妙に異なる説明がされることもよくあります。

同じ名前で別のものを説明していることもあるでしょうし、それぞれに意味があるのだと思います。そこに執着しすぎることなく、著者が何を伝えようとしているのかを気づきながら、注意深く進めていくと良いでしょう。

次記事:「クンダリニー・タントラ/サティヤナンダ(著)」を読む【10】第1章 3節-3:ナディとは

前記事:「クンダリニー・タントラ/サティヤナンダ(著)」を読む【8】第1章 3節-1:クンダリニーの生理学

参考文献

「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)

「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)

「密教ヨーガ―タントラヨーガの本質と秘法」本山 博 (著)

「チャクラ」C.W.リードビーター (著), 本山 博 (著), 湯浅 泰雄 (著)

「クンダリニー」ゴーピ・クリシュナ (著)

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by 高橋陽介

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