ハタヨーガの重要な教典の中でもたくさんの技法が載っている、ゲーランダサンヒターを読んでいきます。
今回は、第4章プラティヤーハーラ(制感)を紹介します。
下記引用部分は、特に記載のない限り「ヨーガ根本教典 (続) /佐保田鶴治」を出典とします。
プラティヤーハーラとプラーナーヤーマの位置づけ
ヨーガスートラのアシュターンガヨーガ(8支則)と改めて比較すると、ゲーランダサンヒターのサプターンガヨーガは以下の7項目で、
- シャットカルマ
- アーサナ
- ムドラー
- プラティヤーハーラ
- プラーナーヤーマ
- ディヤーナ
- サマーディ
アシュターンガヨーガは以下の8項目です。
- ヤマ
- ニヤマ
- アーサナ
- プラーナーヤーマ
- プラティヤーハーラ
- ダーラナー
- ディヤーナ
- サマーディ
プラティヤーハーラとプラーナーヤーマの順番が逆になっています。
ヨーガスートラにおけるプラーナーヤーマは言葉の意味どおり「プラーナ(気)をアーヤーマ(抑制)する」というものであり、いろいろな呼吸法のバリエーションがあるわけでもなく、最終的に心が落ち着いた時に現れる自然に息が止まった状態であるケーヴァラクンバカだけを扱っています。
一方ハタヨーガではたくさんの呼吸法などを用いて気を整えていきます。またゲーランダサンヒターでは食物に関する説明なども多く、様々な手法でプラーナを整えていくことを目指しています。
ヨーガスートラでは呼吸を不動にしていった末に制感が成されるような流れに思えますが、ゲーランダサンヒターでは本格的なプラーナーヤーマに入る前に心を不動にしておくという流れなのでしょう。
参考:ヨーガスートラ解説 2.49-2.53 〜プラーナーヤーマ(調気・呼吸法)〜
参考:ヨーガスートラ解説 2.54-2.55 〜プラティヤーハーラ(制感・感覚抑止)〜
プラティヤーハーラに関する説明
4.3 称賛であろうと、悪口であろうと、心地よい声であろうと、恐るべき声であろうと、それらのものからこころを引っこめて、これを自己の統制下におくべし。
第4章は5節しかなく、プラティヤーハーラについては具体的な方法は書かれていません。良いと思っていたものにも、悪いと思っていたものにも、何事にも心を乱されないようにするべし、という目標は書かれていますが、なにをしたらいいか指示されているわけではありません。
とはいえそんなことはたしかに万人向けに文字だけで指示するのは不可能です。具体的な道は人によって、そしてその瞬間によって異なるので、師匠に直接教わるべしということでしょう。
(次)ゲーランダサンヒター概説5.1-5.32 〜プラーナーヤーマを行う際の条件〜
(前)ゲーランダサンヒター概説3.82-3.100 〜ムドラー解説5〜