オンラインレッスン ヨーガスートラ日本語訳
ヨーガスートラ解説 1.9-1.11 〜「言葉による錯覚」「睡眠」「記憶」とは〜

ヨーガスートラ解説 1.9-1.11 〜「言葉による錯覚」「睡眠」「記憶」とは〜

今も昔も、雑念を生む主な原因は同じ

ヨーガスートラを私なりに読み進めていくシリーズ。

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英訳出典:http://yogasutrastudy.info/
サンスクリット語辞書:http://spokensanskrit.org/

訳者の略称は下記の通りです。
[SS]: Swami Satchidananda
[SV]: Swami Vivekananda

Sutra 1.9 言葉による錯覚とは

शब्दज्ञानानुपाती वस्तुशून्यो विकल्पः॥९॥
śabda-jñāna-anupātī vastu-śūnyo vikalpaḥ ॥9॥

(読み)シャブダ ンニャーナーヌパーティー ヴァストゥシューニョ ヴィカルパハ

(訳)実態に基づいていない空虚な言葉によって現れる心の作用は、言葉による錯覚である。

[SS]: An image that arises on hearing mere words without any reality [as it’s base] is verbal delusion.

[SS訳]: 単なる言葉を聞いたときに現れる、リアリティのないイメージが、言葉による思い違い(妄想・錯覚)である。

[SV]: Verbal delusion follows from words having no (corresponding) reality.

[SV訳]: 言葉による思い違い(妄想・錯覚)は、リアリティのない言葉によって現れる。

Sutra 1.10 睡眠とは

अभावप्रत्ययालम्बना वृत्तिर्निद्रा॥१०॥
abhāva-pratyaya-ālambanā vr̥ttir-nidra ॥10॥

(読み)アバーヴァ プラティヤヤーランバーナー ヴルッティルニドラ

(訳)「無に対する認識」に基づいた心の作用が、睡眠である。

[SS]: That mental modification supported by cognition of nothingness is sleep.

[SS訳]: 「無に対する認識」に基づいた心の作用が、睡眠である。

[SV]: Sleep is a Vritti which embraces the feeling of voidness.

[SV訳]: 睡眠は、虚空に対する感覚を包含する心の作用である。

Sutra 1.11 記憶とは

अनुभूतविषयासंप्रमोषः स्मृतिः॥११॥
anu-bhūta-viṣaya-asaṁpramoṣaḥ smr̥tiḥ ॥11॥

(読み)アヌブータヴィシャヤーサムプラモシャハ スムルティヒ

(訳)過去に経験して忘れていないものが、意識に戻ってくる心の作用を、記憶という。

[SS]: When a mental modification of an object previously experienced and not forgotten, comes back to consciousness, that is memory.

[SS訳]: 過去に経験して忘れていないものが意識に戻ってくる心の作用を、記憶という。

[SV]: Memory is when the (Vrittis of) perceived subjects do not slip away (and through impressions come back to consciousness.

[SV訳]: 過去に知覚して消え去っていない事柄が、印象とともに意識に戻ってくる心の作用が、記憶である。

解説・考察

現代社会では日々様々な言葉が生まれ、消えていきます。

共通言語のように使われている言葉でも、認識がズレていることが多々あります。

錯覚だとわかっていればすぐに手放せる心の作用なのですが、それに気づかないことが意外と多いものです。

śūnya(シューニャ)という語は「ゼロ」「空」などを表し、仏教でも色即是空などの説明で度々用いられます。

空虚な言葉に執着せず、本質を観られるようになりたいものです。

1.10節は少しわかりにくいですが、眠っているときの心の働きについて述べています。

「夢」はまた別の話になるので、正確にはここでは「夢を見ない眠り」について述べていると定義している人もいます。

夢を見ていないとしたら、そのときは心の作用が止まっているのでは?ヨーガの目的達成?と思いきや、私達は目覚めたときに「眠っていた(無を経験していたように思える)」という認識を得ることになります。おしい。

本当に「無」であったなら、「眠っていた」という認識すらなく、どのくらい寝たかとか、眠りが浅かったか深かったかという認識すらないはずであるということです。

1.11節は、そのまんまですね。過去の記憶によって心を乱される、典型的な雑念のひとつです。

これらの心の働きによって心が波立たないようにコントロールするにはどうしたら良いか?という話が、この後に続いていきます。

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ヨーガスートラ日本語訳書籍

「インテグラル・ヨーガ パタンジャリのヨーガ・スートラ」スワミ・サッチダーナンダ (著), 伊藤 久子 (翻訳)

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