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ゲーランダサンヒター概説5.1-5.32 〜プラーナーヤーマを行う際の条件〜

ゲーランダサンヒター概説5.1-5.32 〜プラーナーヤーマを行う際の条件〜

「気」には、食べ物や環境など様々な要素が影響する

ハタヨーガの重要な教典の中でもたくさんの技法が載っている、ゲーランダサンヒターを読んでいきます。

ゲーランダサンヒターの概要 〜ハタヨーガの百科事典〜

今回は、第5章プラーナーヤーマ(調気法)の冒頭部分、プラーナーヤーマを行う際の条件を説明している部分を紹介します。

下記引用部分は、特に記載のない限り「ヨーガ根本教典 (続) /佐保田鶴治」を出典とします。

この記事の目次

ゲーランダサンヒターとハタヨーガプラディーピカーのプラーナーヤーマ章の比較

ゲーランダサンヒターでは第5章、ハタヨーガプラディーピカーでは第1章のアーサナに続く第2章としてプラーナーヤーマが出てきます。

プラーナーヤーマはプラーナ「気」をアーヤーマ「抑制する」という意味であり、最終的には「気を止める(コントロールする)」ということを目指していきます。そのために「気」を取り入れたり留めたりすることを助ける呼吸法がメインの行法となりますが、最終的には気を止めるということになるので「息を止める」という技法が重要になります。息を止めることをクンバカと呼び、そのやり方のバリエーションがいくつか示されます。

ゲーランダサンヒターとハタヨーガプラディーピカー両方共、クンバカがプラーナーヤーマの中心的な行法となりますが、それぞれ呼吸法以外にも「気を整える」ための環境条件やその他の技法も示しています。

ハタヨーガプラディーピカーではこのタイミングでシャットカルマ(浄化法)が出てきます。ゲーランダサンヒターでは、第1章で浄化法を扱っています。

ゲーランダサンヒターでは、さらに食べ物に関する説明がかなり細かくされているのが特徴的です。たしかに気を整えるためには、食べ物はとても重要です。当時のインドにおける食べ物をベースにした説明になりますが、現代日本においてもヒントとなるものがあるかもしれません。

プラーナーヤーマを行う際の条件

5.2 調気法の完遂には四つのことがらが必要である。第一に適当な場所、次に適当な時期、それから節食、最後に気道の清掃。

ハタヨーガプラディーピカーでは全体の冒頭で示されている、ヨーガを行うのに適した場所に関する条件がこのタイミングで示されます。

そしてヨーガを始めるのに適した時期、ヨーギーに適した食事、最後にクンバカの技法が示されます。

場所に関する説明

場所に関する説明は、都市から適度に離れた政治の正しい地に庵を結んで壁に牛糞を塗るなど、ほぼハタヨーガプラディーピカーで示されているのと同じような環境です。

現代日本で庵を作るのは難しいことが多いので、人との距離感を適度にとって、影響を受けないようにするなどの配慮をする必要はあるでしょう。

参考:ハタヨーガプラディーピカー概説 1.12-1.16 〜ハタヨーガを行うための諸条件〜

時期に関する説明

時期に関する説明は、当時の暦やインドにおける季節の考え方に基づいているので少しややこしいですが、佐保田氏の下記の説明を引用しておきます。

Vasanta(春):Caitra, Vaiśākha(2・16−4・15)
Grīṣma(夏):Jyeṣtha, Aṣāḍha(4・16−6・15)
Varṣā(雨):Śrāvaṇa, Bhādra(6・16−8・15)
Śaradā(秋):Ȃśvina, Kārtika(8・16−10・15)
Hemanta(冬):Mārga, Pauṣa(10・16−12・15)
Śiśira(寒):Māgha, Phālguna(12・16−2・15)

ヨーガを始めるには、Vasanta(春)またはŚaradā(秋)に始めるべしと指示されていますが、日本で一番寒い2月や一番暑い8月に始めるというのは少し違和感がある気もします。日本での実践にそのまま応用することはできないかもしれません。

食物に関する説明

食物に関する説明は、とても細かく書かれています。食材についても書かれていますが、日本で手に入りにくいものもあり、そのまま実践するのは難しいので、ヒントになりそうなところだけ引用してみようと思います。

5.22 胃の半分だけをば食物を以て満たすべし。胃の三分の一は水を以て満たし、四分の一は気の廻遊のために残しておくべし。

文字通りに捉えると計算が合いませんが、満腹は避けるべしというのは日本でも古くから言われてきたことです。

5.21 清らかで、甘く、冷たくて、汁気に富む食物を好んで食し、胃の半分を空けておく。これが節食ということであると知られている。

5.29 消化しやすいもの、甘美なもの、身を冷やすもの、並びに栄養になるもの、心を悦ばせるものをヨーギーはたしなむがよい。

5.30 しかし、ヨーギーは不消化なもの、禁じられた食物、腐敗した食物、熱い食物、よい越しの食物、冷えすぎたもの、あまりに刺激的なものは避けなばならない。

新鮮で、栄養があり、心を悦ばせるものを食べよ、といったごく当たり前なことではありますが、本当に実践できている人はどれくらいでしょうか。

また、「冷たいもの」が推奨されているのはインドの気候のせいかもしれません。

5.31 ヨーギーは日の出前の水浴、断食等の体を苦しめる行、一日一食の行、または食を全く取らない行を行ってはならない。食後一ヤーマ(三時間)の間に食事をしてはならない。

様々な説がありますが、ゲーランダサンヒターでは断食は推奨していないようです。現代でも、体質や健康状態によって断食は危険を伴いますので、行う際は直接指導を受けて行うのが良いでしょう。

5.32 以上の如くに生活を規制して、調気を行ずべし。毎日、調気を始める際に、最初に少量のミルクとバターをとるべし。一日のうち正午と夕頃の二度食事をすべし。

食事のタイミングに関しても諸説ありますし、人それぞれ最適なやり方は異なるでしょう。ゲーランダサンヒターでは、正午と夕方の二度、食事をするべしと指示しています。「一日三食」は必ずしも万人に適したやり方ではなく、自分で適したやり方を試してみる必要があります。

(次)ゲーランダサンヒター概説5.33-5.45 〜気道の清掃〜

(前)ゲーランダサンヒター概説4.1-4.5 〜プラティヤーハーラ(制感)〜

参考文献

「ヨーガ根本教典 (続)」佐保田 鶴治 (著)

「ヨーガ根本教典」佐保田 鶴治 (著)

「やさしく学ぶYOGA哲学 ハタヨーガ 基礎と実践」向井田みお (著)

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高橋陽介

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