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ハタヨーガプラディーピカー概説 2.59-2.70 〜プラーナーヤーマのやり方・後半〜

ハタヨーガプラディーピカー概説 2.59-2.70 〜プラーナーヤーマのやり方・後半〜

クンダリニーヨーガでも重要視されているバストリカーが登場

ハタヨーガの古典の中で、最も体系化されているとして重要視されているハタヨーガプラディーピカー

今回は、8つのプラーナーヤーマのうち後半4つのやり方が示されている部分を紹介します。

以下、日本語訳は「ヨーガ根本経典/佐保田鶴治」から引用しています。

この記事の目次

バストリカー

2.60 智者は蓮華坐を正しく組んで、正身端坐し、口を閉じ、力をこめて、イキを鼻孔から吐く。

2.61 その際(吐くイキが)音を立てて心臓、ノド、頭部にまで触れるようにして吐く。そして、すばやく、心臓に達するまでイキを吸うべし。

2.62 再び同じ仕方でイキを吐き、そしてイキを吸い、これを繰り返すこと、あたかも鍛冶屋がふいごを力をこめて踏むが如くである。

現代ヨガで一般に行われているのはここまでのやり方で、ふいごの呼吸法などと呼ばれています。

体を温め、血行を促進したり、消化力を高めたりする効果があります。

さらに加えて片鼻で行う方法もあり、現代ヨガでも一部行われていて、サッチャナンダ氏の書籍などでも示されています。

2.63 かようにして、自己の体内にある気を意識的に廻転すべし。その結果、体内に疲れが出てきた時には、

2.64 気がカラダじゅうに充満するように、急速に右鼻からイキを吸うべし。それから、中指と人さし指とをのぞいた指(おや指と小指とくすり指)をもって、しっかりと鼻をおさえる。

2.65 そして、型の如くクンバカを行なってから、左鼻をもって気を吐き出すべし。この調気法はヴァータ、ピッタ、シレーシュマの異常に原因する疾患をはらい、体内の火を増強する。

息を通す方向は、やはり体を温める呼吸法なのでスーリヤベーダナと同様に右から吸って左から吐くという形が示されています。

ドーシャのイメージとして「ピッタ=火」とされることが多いので、ピッタの人には向かないようなイメージがありますが、ここではピッタを含めて全ての疾患に効くとされています。

実際に行う際は、スピードを速くしすぎたり回数を増やしすぎたりすると血圧が上がったりクラクラしたりするので、最初はゆっくりペースで、回数の制限を守って実践するようにしましょう。

≫バストリカー・プラーナーヤーマのやり方

他のプラーナーヤーマに比べて、2.63〜2.67という5節を費やして解説されており、重要な位置づけであるというイメージがあります。

スシュムナーナディを浄化してクンダリニーを上昇させるという、ハタヨーガの重要な課題に有効であると説明され、スシュムナーに存在する3つの結節(グランティ)を破壊する力があるとされています。

ここでは示されていませんが、3つの結節は以下のとおりです。場所には諸説があり、チャクラや3つのバンダとも関係があります。

  • ブラフマ・グランティ:骨盤底または尾骨
  • ヴィシュヌ・グランティ:腹部または心臓
  • ルドラ・グランティ:喉または眉間

ブラーマリー

2.68 この調気法に於ては、吸息は雄蜂の羽音の如き音を立てて急速に行い、呼息は雌蜂の羽音を立ててゆっくり行なう。かかる修練をなすとき、ヨーガの達人たちの心の中にある種の恍惚状態が生じた。

「蜂の羽音のような音を立てながら呼吸をする」というもので、ストレスや脳の緊張の緩和・血圧の安定・うつや精神の不安定などの改善・のどの病気をなくし発声を良くするといった効果があるとされます。

私が日本で最初に習ったときのブラーマリーと、インドで習ったブラーマリーはかなり異なっていました。

一番簡単なやり方は、吐くときにハミングするように音を出し、頭をリラックスして頭蓋骨に音を響かせるようにするという形です。耳を指で塞いで行うと、より響きを感じやすくなります。

インドで習ったやり方は、ここで示されているように「吸うときにも音を出す」というやり方です。結構難しいですが、喉のコントロールに意識を向け続けるので、より集中できて雑念を払いやすい感じがしました。

ムールチャー

2.69 吸息の終った時、いっそうきびしくジャーランダラバンダ(ノドの引きしめ)をなし、ゆっくりとイキを吐く。このムールチャーとよばれるクンバカはこころをぼう然たらしめ、快感を与える。

ムールチャー(ムールッチャー)とは「呆然」「気絶」「卒倒」などの意味ですが、ここで示されているやり方はとてもざっくりしています。

現代ヨガで行われることはほとんどないようですが、サッチャナンダ氏や本山博氏の示しているやり方は、ここで示されているやり方とは異なるようです。

プラーヴィニー

2.70 カラダのなかをめぐる活発な気をもって胸腔を充分に満たすならば、星の届かない水の中でも、まるで蓮の葉のように楽々と浮いていることができる。

これも現代ヨガではほとんど行われていませんが、身体的なやり方としてはほとんど示されておらず、イメージ的な説明がされています。

たしかにプラーナーヤーマは、身体的な動きだけマネるのではなく、こういったイメージを持ちながら実践することがとても大切です。

菅原誠氏は、浅い川で沐浴をしている人々は大の字になって空気をたくさん吸い込んで浮かんでいることが多いといった事例を挙げていますが、そういう意味では私もインドで勝手に毎日やってましたね(結構深くて大きな川でしたが)。

≫ハタヨーガプラディーピカー概説 2.71〜2.78 〜最後のプラーナーヤーマ、ケーヴァラ・クンバカ〜

≪ハタヨーガプラディーピカー概説 2.48〜2.58 〜プラーナーヤーマのやり方・前半〜

参考文献

「ヨーガ根本教典」佐保田 鶴治 (著)

「サンスクリット原典 翻訳・講読 ハタヨーガ・プラディーピカー」菅原誠 (著)

「Asana Pranayama Mudra Bandha 英語版」Swami Satyananda Saraswati (著)

男性ヨガインストラクター 高橋陽介の写真

by 高橋陽介

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