肩立ちのポーズ、サーランバサルヴァンガーサナ。
逆転のポーズの中では簡単なほうですが、血行促進やむくみ改善などの効果は十分にあります。
サーランバは「支えのある」、サルヴァンガは「体全体」の意味。サーランバを省いてサルヴァンガーサナと呼ばれることも多いです。
この記事の目次
サーランバ・サルヴァンガーサナの主な効果
- 血行促進・むくみ改善
- 肩こり・首こり・頭痛改善
- 代謝UP・デトックス
- 甲状腺の活性化
- 消化器系の活性化
- 体幹(腹横筋・脊柱起立筋など)の強化、姿勢改善(体幹をまっすぐにする場合)
- ハムストリングス・大殿筋強化(脚をまっすぐ上げる場合)
シルシャーサナほど難しくなく、全身が逆転するので同等の効果があります。全身の血行を促し、下半身のむくみをとりデトックスへつながります。
多くの人は首が左右どちらかに傾いていたりねじれている癖を持っていますが、正しく後頭部・肩を使って全身を支える形を覚えることで、首肩周りのアラインメントを整え、肩こりや頭痛などの改善にもつながります。
ただし間違ったやり方をしていると癖はより強くなってしまうので、一人で練習するのが不安な場合は、しっかり癖を直してもらいながら正しいポジションを覚えましょう。
サーランバ・サルヴァンガーサナの禁忌・注意点
高血圧・甲状腺肥大・血栓症の方、生理中の方、首や腰を痛めている方は避けて、より簡単な逆転ポーズを代わりに行いましょう。
簡単な形としては、背中を持ち上げず、脚を壁によりかからせるなどでも十分逆転効果があります。
首の柔軟性が足りない場合などは、肩の下にブランケットを畳んで敷いて、首のカーブをゆるめて行いましょう。
サーランバ・サルヴァンガーサナのやり方
1)仰向けで寝ます。両脚を伸ばして揃えたまま持ち上げ、足先を頭の上のほう(天井方向ではなく、ハラーサナに入るように頭の向こうのほう)へ運んでいくようにして腰を下から持ち上げて行きます。勢いを使わず、なるべく背骨の下から順番に1個ずつ床から離していくようにしましょう。このとき、アゴをひきすぎないようにします。鼻先は、仰向けで自然に寝たときのまま、真上を向いています。首の後ろは床に接地しないように「アーチ」を保ち、後頭部と両肩を結んだ三角形で主に体を支えます。
2)両肘の幅は肩幅くらいを保ち、開きすぎないようにして曲げて床を押し、手は背中を支えます。なるべく肘・手に頼りすぎないように、頭・両肩の3点で支えられるように肩の真上へ骨盤を持ち上げていきます。鎖骨の間とアゴを近づけるようにしますが、アゴは上げすぎず引きすぎず、鎖骨のほうからアゴへ近づけていきます。両脚は、まずは頭側に傾いたままで構いませんので、なるべく骨盤を持ち上げてから、可能な範囲で真上へ伸ばして行きます。足先・足裏・足首はリラックス。深く5呼吸キープします。(アシュタンガヨガでは10呼吸する場合もあり。シヴァナンダヨガでは3〜5分キープ。)
3)吐きながら、背骨を上から順番に床へ下ろし、仰向けに戻ります。シャヴァーサナでしばらく休みます。
呼吸のバリエーション
サーランバサルヴァンガーサナを行う際の呼吸は、胸式呼吸と腹式呼吸どちらも使えて、それぞれ効果が異なります。
胸式呼吸のほうが、体幹を保護しやすく背骨を傷めにくいので、骨盤が肩の上に到達しないうちは、胸式呼吸で体幹を支えながら行うほうが腰を保護できます。
骨盤が肩の上にきて安定したら、腹式呼吸に切り替えて、骨盤内部や股関節の根元に呼吸を通すようにすると、より下半身の流れを促進します。
簡単バージョン
- 肩の下にブランケットを畳んで敷くことで、首のカーブを軽減できます。
- もし骨盤を持ち上げるのが難しい場合は、一度両脚を曲げて膝を額に置いた状態で、骨盤をしっかり肩の上へ持ち上げてから、脚を伸ばしていく方法もあります。
- 背中を持ち上げず脚だけ持ち上げた形だけでも、逆転のポーズとして効果的です。腰の下にボルスターなどをいれて高さをつけていくことで、ヴィパリータカラニーからだんだんサルヴァンガーサナへ近づいていけます。
サーランバ・サルヴァンガーサナを深める方向性
- なるべく背中を垂直にし、股関節を伸ばして、肩から足までをまっすぐにしていく。
- 長時間キープできるようにする。
サーランバ・サルヴァンガーサナのコツ・練習法
正しい土台のイメージ
後頭部・両肩の三角形の土台で支えるイメージが重要です。
首の骨は、じつは床についていません。首の後ろには、自然なアーチがあるのが理想です。
また、肘にはあまり頼りすぎないようにしていきます。
首が痛い、息苦しい場合のコツ
もし首の後ろ側が床についているとしたら、少しアゴを引きすぎていたり、首の上のほうが曲がりすぎていてアーチがなくなってしまっていることがあります。
この場合、むしろ首を痛めてしまいますし、息苦しいです。
首には自然なアーチがあるほうが、重さを支えることができます。そのため、アゴは引きすぎず、首全体は丸くなりすぎないようにします。
首をかしげないように・肩を片側だけすくめたりしないように
どうも安定しないな、というときは、耳と肩の距離が左右で違っていることがあります。
首をかしげたり、どちらかの肩をすくめたりする癖が、日常生活であるのかもしれません。日常的にも、癖に気づいて直していけると良いでしょう。
また、両側の肩や肘にかかる体重が偏っていたりすることもあります。
注意深く、安定して左右対称に整った土台をつくるようにしましょう。
後頭部に体重をかけるのが怖い
首の後ろ側が凝っている人は、頭に体重をかけるのが怖くて、肘のほうに体重を乗せてしまいがちです。
首の骨には本来、十分に体重を支える力がありますので、あまり筋肉は力ませる必要はありません。
首が固まっている状態でいきなり後頭部にたくさん体重をかけるのはあぶないので、無理せず「少しずつ」首を「リラックス」して、後頭部に「少しずつ」体重をかけられるようにしていきます。
土台が整っていない場合、初心者用の簡単バージョンで練習する
後頭部と両肩の土台が整っていないまま練習すると、首を痛めたり、必要以上に疲れたりしまうので、無理せず簡単バージョンで練習していき、まずは落ち着いて息苦しくない状態をつくるようにしましょう。
膝を曲げて、額に軽く置いて練習する方法もあります。その形でまずはリラックスして、お尻を高くし、後頭部に適度に重さをかけられるように練習していきます。
また、あまり体をまっすぐにしようとせずヴィパリータカラニーのように「く」の字の状態で練習するのも十分効果があります。
足を床に下ろしたハラーサナで、まず土台を整える練習をするのも良いでしょう。
以下の動画の後半でも簡単に解説しています。
アジャスト例(インストラクター向け)
- まず、お尻がなかなか上がらずに肩立ちのポジションにいけない場合は、頭側に立ち、脚だけをまず上方へ伸ばしてもらい(まだお尻は床についている)、その足を両手で持ってゆっくり頭の方向・水平方向へ引っ張っていく。引っ張る動きによって背中を丸まりお尻があがってくるので、手を背中にあてて支えるようにしてもらう。
- お尻が上がって手で背中を支えられるようになったら、背中側に立ち、自身の骨盤の側面を生徒の仙骨あたりにあてて支え、体幹部分が直立するのを導きながら、脚を腕で抱えてなるべく全体を直立させるようにサポートする。
- 足や足首に余計な力が入っている場合は、足裏やかかとやふくらはぎを軽くマッサージして脱力させる。
シークエンス例
- アシュタンガヨガ、シヴァナンダヨガなど多くの場合、サーランバサルヴァンガーサナの後につま先を頭の先へ下ろし、ハラーサナ(鋤のポーズ)へつなげます。
- 片足は上に残し、片足だけハラーサナのポジションへ下ろす、という動作を繰り返すと、腸腰筋と大臀筋を鍛えるエクササイズとして効果的です。
- ハラーサナのあとで肩立ちに戻り、アゴを鎖骨の間につけたまま・手は背中あるいはお尻あたりを支えたまま、片足ずつ床へ下ろしてセツバンダーサナへつなぎます。
- 手を使わずに蓮華座が組めれば、パドマサルヴァンガーサナにつながります。
- 首を柔軟にし、肘で支えずに立てるようになると、ニーラランバサルヴァンガーサナへつながります。
アーサナ名の表記バリエーション
【日】サルヴァンガーサナ、サルヴァンガアーサナ、サーランバサルヴァンガーサナ、サーランバサルヴァンガアーサナ、サルバンガアーサナ、サルバンガーサナ、ショルダースタンド、肩立ち、支えのある肩立ち
【梵】Salamba Sarvangasana
【英】Supported Soulder Stand