現代ヨガのレッスンでは、最後に行われることの多いシャヴァーサナ(シャバーサナ・屍のポーズ)。
「レッスン終わったらなにしようかな…」などと心がさまよっていないでしょうか。
心も体も、なるべく余計な働きをしないようにして、「屍」に近づけるようにしていきましょう。生きている私達にとって、「最も難しいポーズ」と言えるかもしれません。
この記事の目次
シャヴァーサナの主な効果
- 心身のリラックス
- 疲労回復(5分のシャヴァーサナで、2時間の睡眠の効果があるとも言われます→後述)
- 集中力UP
シャヴァーサナの禁忌・注意点
腰を痛めている場合は、膝を少し曲げて、膝の下にボルスターを入れるなどして調整します(腰の反りがなくなって楽になります)。
妊娠中などで仰向けになるのが難しい場合は、横向きに寝て、ボルスターを抱きまくらのように使って体勢を調整します。
シャヴァーサナのやり方
1)仰向け(仰臥位)あるいは横向き(側臥位)に寝て、死体になりきります。
2)姿勢が安定したらなるべく体を動かさず、ゆっくりと呼吸しながら、雑念が入らないように5〜10分ほどキープします。
3)時間が経ったら(一人で行う場合は、タイマーをセットしておく)、自然な呼吸に戻し、手足の指先からゆっくり動かし始めます。
4)片脚ずつ膝を曲げて、気持ち良い方向へ寝返りをして、手で床を押して、頭を急にもちあげないようにゆっくり背中を丸めながら起き上がります。
シャヴァーサナを深める方向性
- 雑念をなくしていく。
- 呼吸を深くする。
- 眠りに落ちないように、なるべく長時間行えるようにする。
シャヴァーサナのコツ・練習法
余計なことをしないようにしていく
ただ寝っ転がっているだけのポーズに見えますが、「屍になる」というのはなかなか大変だということに気づきます。
力がうまくぬけなかったり姿勢が定まらなくてモゾモゾしてしまったり、呼吸が苦しくなったりむせてしまったり、体を止めているだけでも結構難しいでしょう。
体を止めることができたとしても、レッスン中にうまくできなかったポーズのことに執着したり、レッスン後になにをしようかななどと考えてしまったり、心があちこちにさまよっていてはシャヴァーサナは完成しません。
先ほど効果のところで述べたように「5分のシャヴァーサナで2時間分の睡眠効果」という完全にリラックスしている状態をつくるには、極限まで余計なことをしないようにする必要があります。これはつまり、瞑想している状態であり、眠っているのとは完全に異なります。
「体」のコツ
ひとそれぞれ、いろいろな姿勢の癖がありますので、その癖が直らないうちは、キレイな姿勢でシャヴァーサナをしようとする必要はありません。余計な力が働かないように、「今の時点での自然な形」に落ち着けば良いです。
そのためにはなるべく力まないようにする必要がありますが、力みを抜くためには、
- 力んでいる箇所をゆらしてみて、自然におさまる場所に止める。
- 力んでいる箇所に、さらに力をギュっと入れて、ストンと抜く。
といった方法が良いでしょう。
「心」のコツ
雑念をなくす、いわゆる瞑想と同じことをしています。
瞑想とは、集中の絶え間ない連続です。
「屍になる」というイメージを対象として、絶え間なく集中し続けるということです。
これには練習が必要ですが、雑念というのはどうしても湧いてくるものです。湧いてきたら、一旦片付けて、集中対象に戻る、ということを繰り返していくことで、集中を持続することができるようになっていきます。
「屍になる」というイメージが難しい場合は、通常の瞑想入門と同じように「呼吸」に集中すると良いでしょう。5秒吸って・10秒吐く、という長く深い呼吸を続けるようにします。秒数をカウントするということに集中します。
気づきが大切
雑念には気づきやすいかもしれませんが、体に関しては、力んでいることに気づかないということもあります。
そのため、まずは仰向けになったときに全身をゆすってみるのも良いと思います。そして、体の各箇所に意識を向けていって今の状態を観察する、マインドフルネス瞑想でも用いられる「ボディスキャン」を行ってみるのも良いでしょう。
これは就寝時にも有効です。なぜか寝付けないときには試してみると良いと思います。
眠ってもいいの?
慣れないうちは、雑念が働いていたりモゾモゾしているよりはまだ眠ったほうがいいですが、よりシャヴァーサナを深めるという段階になったら、眠ってしまってはいけません。
シャヴァーサナは瞑想と同じように、とても集中かつリラックスしている状態であり、眠ってしまうということは集中力が足りないということになります。
「集中している」というとなにかとても活動的なイメージがして、逆に疲れるのでは?と思ってしまうかもしれませんが、一点集中をしている状態というのは、余計なことを何もしていない状態なので、無駄なエネルギー消費が全く無いので、心身の疲労回復につながる時間になります。
瞑想の効果は様々あり、「5分のシャヴァーサナで2時間分の睡眠効果」と言われる理由としては、疲労回復だけではないのだと思います。ただ、効果を期待して行うのは雑念につながるので、今は詳細な効果について述べるのはやめておきます。
起き上がるとき、寝返る方向は?
「右側に寝返りして、起き上がります」という場合が多いかと思いますが、インストラクターがそのように言う主な理由として考えられるのは、
- 右側を下にして左側の気道(月の気道)が通るほうがリラックスできる(副交感神経優位になる)。
- 何人か並んで行っている場合、寝返った時に隣のひとと目が合うと気まずい。
といったことだと思います。
そのため、一人で実践している場合などはどちら側でも気持ち良い方向へ寝返りして構いません。
あるいは、一度右側へ寝返りしてから、左側へもう一度寝返りしてから起き上がるというようにするのも良いでしょう。このやり方だと、よりバランスが取れて、右側の気道が通るので起き上がった後に活動的になるためのスイッチが入ります。
アジャスト例(インストラクター向け)
- なにも干渉せず、静かに温かく見守る。
- うまく脱力できていないようであれば、体をゆする・一度力を入れてゆるめるなどの指示をする。
シークエンス例
現代ヨガの多くのレッスンでは、レッスンの終わりに行われます。
シヴァナンダヨガでは、レッスンの最初はシャヴァーサナで始まり、そしてアーサナ間にもたびたび行われます。これには、アーサナごとに以下のような機会を作るという意味があります。
- 一度心身をリセットして次のアーサナに入る
- アーサナを行ったあとの心身の変化を感じる
アーサナ名の表記バリエーション
【日】シャヴァーサナ、シャバーサナ、シャバアーサナ、シャヴァアーサナ、ムリターサナ、ムリタアーサナ、屍のポーズ、しかばねのポーズ、死体のポーズ、安らぎのポーズ、ペンタクルポーズ
【梵】Savasana, Mritasana
【英】Corpse Pose, Pentacle Pose