自分を変えるための「答え」を、端的に教わったとしても、それを実践できる人はほとんどいない。
それはたいてい、いままで積み重ねてきたものを手放すことになるためである。
ほとんどの人は、そこに執着してしまう。変えたい自分であるはずなのに、そこに留まりたいという矛盾した意志に屈してしまう。
私は、ヨガなどを教え始めた初期のころから、「その人の変わりたい本当の姿」が見えてしまうことが多かった。
お金をいただいてレッスンをするのであれば、なるべく短時間でそこへたどりついてほしいので、端的に「答え」を伝えてしまいたくなることもよくあった。
しかし、それは前述の理由などから、たいていは「反発」を生む。
変わりたいはずの自分に醜くしがみつき、新しい自分への道を否定する。
それもよくわかる。
なので、私はなるべく、自分でその道に気づいてほしいと思う。
もしかしたら私が見えている理想の姿も、無数の可能性の中のひとつであって、そこへ強引に引っ張っていきたくはない。
しかし昨今の健康本や啓発本、多くのネットの情報には、「答え」らしきものが、「過剰に親切にわかりやすく」示されている。そうでなくては売れないのだろう。
わかりやすいゴールをつくり、わかりやすい「悪」をつくる。浅はかな宗教が人を集めるための手口も同じである。
そういうものが売れていること自体、人々の気づきが足りていない証拠である。かく言う私も気づきを磨く前は、そういう幻に振り回されていたのかもしれないが。
本当に大切なことは、そんなところにはないし、お金で人から買い取ることもできない。
大切なこと、も人それぞれかもしれないので、それを押しつけはしないが。
変わりたいと思って訪れてくれる人には、私なりに質の良いヒントを出し続けよう。