人間の健康を考える際の理論として、人間には数種類の「基本体液」がありそのバランスによって体質が変化すると定義した「体液病理説」がある。
アーユルヴェーダのトリ・ドーシャ(ヴァータ・ピッタ・カパ)もその一種である。
このページでは、古代インドやギリシャで唱えられた四体液説の概要と、アーユルヴェーダのドーシャとの関係性などをまとめる。
この記事の目次
四体液
- 血液
- 粘液
- 黄胆汁
- 黒胆汁
血液は、体内の熱が適当で、食べ物が完全に調理(消化)された時に生成され、生命維持にとって重要であるとされた。
粘液と胆汁は、バランスが崩れたことによって生じる悪い体液と考えられた。
黄胆汁は熱の多くなったときに生じ、黒胆汁は冷えることによって生じ、粘液は冬に起こる炎症によって生じるとされた。
四気質
- 胆汁質(黄胆汁質)
- 憂鬱質(黒胆汁質)
- 粘液質
- 多血質
以下引用はWikipediaより。
胆汁質(黄胆汁質)
荒々しい性格で熱血漢、短気で行動的、野心も強い。気前がいいが傲慢で、意地悪で気難しい面もある。消化力が高く大食だが、やつれて見える。脈が速く心臓に負担がかかる気質で、また張り切りすぎて肝臓や腎疾患に陥りやすい。黄色味がかかった熱く乾燥した肌をしており、硬くて水気に乏しい筋肉をしている。
憂鬱質(黒胆汁質)
寡黙で頑固、孤独癖があり、運動も休養も社交も好まない。強欲で倹約家、利己的で根に持つタイプ。神経質で自殺傾向がある。注意深く明敏、勤勉で、一人で思索に耽ってばかりいる。黒胆汁は主に悪いイメージを持たれ、狂気・精神錯乱と関連する体液といわれたが、天才を生み出す体液だとも考えられた。土気色で乾燥した冷たい皮膚をして、たいてい痩せている。脈は遅く耳は遠い。欠尿症で、食欲はあったりなかったりである。
粘液質
精神的に鈍く優柔不断で臆病だが、おだやかで公平、人を騙したりしない。背は高くなく太っており、食べることが好きで運動や努力が嫌い。血の気のない皮膚の色で、肉質はやわらかく肌は湿っている。脈は遅く弱く、胃弱で口臭がひどい。貧血や腺病、鼻風邪やカタルに罹りやすく、耳鳴りや難聴になりやすい。また、粘液から逃れようとつばを吐く。
多血質
人柄は機嫌よく社交的で、ずうずうしいが気前もいい。先のことは考えず、心変わりしやすい。娯楽が好きで好色であり、教養とは無縁のタイプ。体質は、筋肉質でたくましく、脈は規則的で皮膚はぬくもりと弾力があり、胃は丈夫で睡眠の悩みもない。舌が乾きやすく、太りやすい。風邪をひきやすく関節炎のタイプで、頭痛や歯痛を伴うこともある。この気質の良い状態が維持できれば、老いを寄せ付けないため長生きする。
アーユルヴェーダ・ドーシャと四体液説の関係
アーユルヴェーダのドーシャも「体液病理説」の一種であり、3種類の体液のバランスによって体質が変化するとしている。
体液はヴァータ(風)、ピッタ(火)、カパ(水)と分類され、ピッタは胆汁質、カパは粘液質と分類されることもある。
このアーユルヴェーダの理論が先に存在し、ヴァータが除かれて血液が加わり、胆汁が黄胆汁と黒胆汁に分類されて伝わり四体液説になったとされる説がある。
ざっとトリ・ドーシャの体質をまとめた後に、四体質と比較してみる。
ヴァータの特徴は、頭の回転や行動が速く、物事に執着しない、バランスを崩すと冷えや乾燥や高血圧などになりやすく、骨格は全体的に小柄か細くてノッポで顔は細長く目も細い。肌は乾燥していて薄く弱い。
ピッタの特徴は、情熱的で完璧主義であり、バランスを崩すと発熱や蕁麻疹などの皮膚トラブルを起こし、骨格は全体的に体格が良く筋肉がつきやすく顔の輪郭は四角い。肌は色黒であることが多い。
カパの特徴は、動きが遅く気性は穏やかで刺激に左右されにくくスタミナがあり、バランスを崩すと冷えて重くなり鼻炎など粘液過多になりやすく、骨格は全体的にどっしりして丸みを帯びている。肌は白くしっとりしていることが多い。
これらを四体質と比較してみると、やはりピッタの胆汁質は黄胆汁と黒胆汁の主な特徴に合致するところがあり、カパの粘液質もほぼ合致する。
ヴァータの特徴は、黒胆汁質と多血質に分割されて含まれているようにも思える。
多血質は基本的に、トリドーシャがバランスしたサットヴァな状態の特徴に近いものがある。世界を構成する要素であるトリグナを元に考えると、ヴァータとピッタはラジャス(激性)、カパはタマス(鈍性)であり、それらがバランスしたときサットヴァ(純性)となる。できるだけサットヴァな状態を意識できるように、バランスを整える技法がアーユルヴェーダやヨーガには多く存在する。
参考:食べ物で、心も変わる 〜アーユルヴェーダとトリグナ(サットヴァ・ラジャス・タマス)〜
バランスを整える方法
偏りのある方向に気づいたら、その原因となることを減らしたり、逆のものを取り入れたりすることでバランスを整えるのが基本となる。
偏りは、生まれつきのものもあれば、日々の暮らしで変化するものもある。
現在の状態をしっかり洞察した上で、正しい方向の対応をする。
以下、ドーシャ診断も参考にされたい。