身体に意識を通していく、思い通りに動かせるようにしていく。自分の身体なのだから当たり前のようにできるかと思いきや、すごく難しいことである。
結局のところ、「自分」とは何なのだろう。
どうやら自分で認識している身体と、実際の肉体の状態が異なっていることも多いらしい。まっすぐ立っていたつもりでも、じつはまっすぐではなかった。まっすぐ歩いていたつもりでも、曲がっていた。
考えてみればとてもこわい。いままで信じていた自分の身体が、じつは全然正しく使えていなかったのである。人によっては、途端に不安になってしまうかもしれないが、私はそれを楽しんでいた。長年使い古してきた身体に、まだまだ開発の余地があるのだ。不器用さを楽しもう。
さて、認識と実際の不一致がとても多いというのは、正しく身体を使うためにはマズい状態である。
これを解決するには、より正確に現状を認識しなくてはならない。
身体の正確なマップを認識する必要がある。そんな観点で調べてみると、そのものズバリ「ボディ・マッピング」という概念を提唱している人がいた。
「DVDブック ボディ・マッピング: だれでも知っておきたい「からだ」のこと」バーバラ・コナブル (著), エイミー・ライカー (著), 小野 ひとみ (翻訳)
とくに大腿骨の角度など股関節周りに関する認識が参考になった。 ボディ・マッピングを改善していくためには、観たり触ったり、いろいろな感覚を駆使して現状を正確に把握する必要がある。止まっている姿勢だけでなく、動いている最中も行えるようにしていく。
ヨガスタジオにはあえて鏡をつけていないところも多いが、私はボディ・マッピングの修正という観点からは、たまに鏡を使うのが良いと思う。
この著者の方は、アレクサンダー・テクニークの教師らしい。その理論の中には、アレクサンダー・テクニークの話も多数出てくる。
そういえばまだアレクサンダー・テクニークについては1冊しか本を読んでいなかったので、少し詳しい本を読んでみようと思い、以前紹介した下記の本はこのタイミングで読んだ。
「音楽家のための アレクサンダー・テクニーク入門」ペドロ デ アルカンタラ (著)
以前目をつけたフェルデンクライス・メソッドについてはこの時点では復習するに至らなかったが、他のボディワークもいくつか探してみた。
通っていたスタジオのアシュタンガヨガの先生が、フランクリンメソッドも教えているようだったので少し興味があり、下記の本を読んでみた。
「骨盤力 フランクリンメソッド」エリック フランクリン (著), ディスマー ゆかり (翻訳)
「フランクリン・メソッド 首のリラックス、肩の解放 緊張を解き、なめらかに動く究極のエクササイズ」エリック・フランクリン (著), ディスマー・ゆかり (翻訳)
フランクリンメソッドの身体意識に関する表現はとても独特だ。たしかにそのアシュタンガヨガの先生も、たまに独特な表現を使っていて、私はふむふむと思っていたが周りのみんなにはハテナマークが灯ることもあった。
表現や解釈は人それぞれ、自分に合ったものを用いれば良い。
本の中で用いられている図には、私がよく用いるような矢印がたくさん描かれていた。私のアーサナ解説の画像では最低限の矢印しか描いていないが(それでも多いと思う人もいるかもしれないが)、フランクリンメソッドではもっと細かく矢印がかきこまれている。たとえば肩甲骨の中にすら、流れがあるのだ。
フランクリンメソッドには多くのヒントがあったが、この表現で伝わる人は少ないかもしれないなと思った。伝える相手に合わせて、翻訳して伝えなくてはならない。引き出しは増やしただけでは意味がない。引き出しから出すときは、その場に適した表現に変換する能力も合わせて必要になる。