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魔術、呪術(シャーマニズム)、カバラー、グノーシスについて調べる

目に見えないものについて、いろいろと調べてきた。

その中で、やはりちらちらと目につくのは「白魔術」「黒魔術」といった言葉。

「魔術」というのはなんなのか。人々の中ではそれなりに大きな関心要素であったのは間違いない。

国や文化圏によっていろいろな魔術があるようだが、魔術師というカテゴリーで調べているとよく見かけるのは「クロウリー」や「メイザース」といった名前だった。なにかのRPGでも魔道士として名前が使われていたような気がする 。

クロウリーはいくつも本を出しているようなので、図書館で読んでみることにした。

主著とされているいくつかの本をみてみたが、1冊目に偶然手にとった本を開いたところ、まずその目次に驚いた。そこには、慣れ親しんだ「アーサナ」「プラーナーヤーマ」などといった8支則、アシュターンガヨーガの項目が並んでいたのである。

「神秘主義と魔術 アレイスター・クロウリー著作集 1」アレイスター・クロウリー (著)

なるほど、魔術の修行体系としてもヨーガスートラのラージャヨーガが用いられていたようだ。神智学でもラージャヨーガの有効性についてはよく語られている。

魔術の理論には、神智学と共通するものが多い。その根本になっているのはカバラーというものらしい。カバラーという言葉は占いなどでたまに聞いたことがあったが、どうやら占術ではなくもっと幅広い理論体系のことを指すようだ。そこには、シュタイナーの理論にも関連していると言われるグノーシスも関わりがあるらしい。どうもこのあたりはごちゃっとしていて互いに関係し合いながら発展してきたようだ。

クロウリーはかなり悪評高い魔術師として知られていたようだが、その本からはわりと誠実な印象を受けた。

他にも、魔術の理論と実践に関する本をいくつか読んでみた。

「魔術 理論篇」デイヴィッド コンウェイ (著)

「魔法修行―カバラの秘法伝授」W.E.バトラー (著), 大沼 忠弘 (翻訳)

その中には、カバラーの「生命の樹」が重要な概念として出てくる。生命の樹は、瞑想(観想)における優秀なツールとなるようだ。調べてみると、たしかにとてもよくできているシステムである。チャクラやクンダリニーのシステムとも整合性がある。

さて魔術といってもいったいどんなことができるのかというと、これらの本でよく出てくるのは「光体」などと表現される幽体離脱のような技である。これは神智学でいうところのアストラル体を指すものと思われる。仙道や気功では陽神などと呼ばれ、共通するものがある。

アストラル体として肉体を抜け出して、様々な場所に行ったり活動したりする。仙道においては、最終的には肉体を捨ててしまうところがゴールとなる。そのための修行法が、各派微妙に異なる形で具体的に指示されている。しかしその中心になるのは、どの技法をみても「観想」のようだった。

純粋な心でイメージに集中する過程に至っていくために、ラージャヨーガは有効なステップとして扱われてきたのだろう。

生命の樹に関する説明としては、下記の本が詳しかった。上記の「魔法修行」の中で、必ず読むべしと指示されている本である。

「神秘のカバラー」ダイアン・フォーチュン (著), 大沼 忠弘 (翻訳)

ただ、「魔法修行」もある個人に宛てて密教的に書かれている内容なので、 万人に適した方法ではないかもしれない。こういった修行はやはり師匠から直接習うべしというのが共通するところなのかもしれない。

カバラーはユダヤ教に基づいた神秘思想であり、グノーシスと関連があると思っていたが、グノーシスは特定の宗教だけでなくもっと幅広い概念のようだった。

グノーシスの根底には「善・悪」を分けて考える「二元論」がある。二元論というとヨーガスートラのサーンキャ哲学を思い出す。グノーシスの表現のほうがやや過激ではあるが、最後に物質(プラクリティ)が消滅していく流れには共通するものがある。

グノーシス、魔術、ヨーガを横断的に扱っている人物として、サマエル・アウン・ベオール氏がいる。彼の本には例の本屋で偶然出会ったのだが、その行法は独特で参考になる。Amazonでは彼の主著はほとんど扱われていないようだ。主にマントラを用いる行法が多いが、片鼻呼吸法やアーサナ、チベット体操やルーン文字を模したエクササイズなど幅広い。

魔術についてさらに調べていくと、シャーマニズム、呪術といった言葉もよく出てくる。魔術はヨーロッパなイメージがあるが、シャーマニズムというとメキシコあたりが有名なようだ。カルロス・カスタネダという名前がよく出てくるが、この人もなかなかはちゃめちゃな人だがアメリカのニューエイジに結構な影響を与えたようだ。

彼の主著の中からいくつか読んでみた。呪術師のドン・ファン・マトゥスなる人物との体験が生々しく語られている。これが真実の話なのかは疑いもあるようだ。

「呪術の体験―分離したリアリティー」カルロス・カスタネダ (著)

「呪師に成る―イクストランへの旅」カルロス・カスタネダ (著)

ドン・ファンはカスタネダに超常体験をさせるために薬草を使ったりしていたようだ。ヨーガスートラなどでもインスタントにサマーディを得るための方法として「薬草」が出てくるが、その方法は推奨されていない。ただ、人間の認識というのはそういった薬物によって大きく変わってしまうということは事実である。

彼らもアストラル体を分離する技を使っていたようであり、他の魔術とも共通するところはあるが、行法としては結構過激である。

日本の魔術、中国の魔術なども調べてみたが、呪符を使ったりするものがよく出てくるようだ。これらも「観想(イメージ)」を助けるためのツールということになるのかもしれない。明確にイメージすることで、「念」のようなものが具現化してくるのかもしれない。

魔術についていろいろと調べてみると、微細身を用いる技術、そのための行法などに、神智学やヨーガとも共通するものが結構見つかった。歴史上でお互いに関係しあってきたのかもしれないが、世界各地で同じような体験をしている人々がたくさんいたというのは興味深い。

 

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