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インドの聖者の本を読む 〜ヨガナンダ、ラーマクリシュナ〜

手首を怪我してしまったので、しばらくは激しいヨガの練習は控えておこう。

この機会にヨーガ哲学のほうを深めようと思い、以前から気になっていたパラマハンサ・ヨガナンダ氏の本を読んでみることにした。

「Autobiography of a Yogi (Japanese)」Paramahansa Yogananda (著)

ヨガナンダ氏の本は、スティーブ・ジョブズが唯一iPadに入れていた本だということで少し話題になっていたようだ。

私はペーパーバック版で手に入れたが、いざ手にしてみると、ものすごい厚みである。これをいつか読み切れるんだろうか…と不安になるくらいの厚さだったが、とても読みやすくて1章ずつ読んでいくぶんには適度な長さなので、1日数章読み進めていった。

さて内容はというと、なかなか刺激的なものである。ガンジー自伝などとは全く性質の異なるものだった。

彼が実際に出会った、超能力を使う聖者たちが次々に出てくる。彼自身もひたすら神に祈ることでいろいろな奇跡を起こしていく。

ほんまかいなと思うようなことが、淡々と描かれているのである。その聖者たちが行っている行法はたしかにヨーガのようだ。彼らの写真はパドマーサナを組んでいるものが多い。プラーナーヤーマの話などもよく出てくる。

私にとって印象的だったのは、彼が師匠に出会うまでの長い道のりだ。スゴいワザを使う聖者たちにたくさん出会っているのに、その人達のところに入門せず、ひたすら導かれて本当の師匠に出会うために旅を続けるのである。

ヨーガは正しい師匠に習うべしということは、どのヨーガでもよく言われることだが、それだけ師匠は慎重に選ばねばならないし、本当の師匠にめぐりあうのは難しいのだろう。あるいは、準備が整ったら、師匠のほうから現れるとも言われる。正しい師匠に出会えてないということは、弟子の準備も足りていないのである。

私はいまだにそういった師匠にはめぐりあえていない。いろいろな人に教わったし、全ては経験になっているけれど、やはり師匠は探さねばならないのか?という疑問はこの時点ではまだあった(現在ではひとつの結論に達したので、これに関して迷いはない)。

しかしヨガナンダ氏ほどの人物がこれだけ苦労して探しているのだから、そう簡単ではないということはわかった。そして彼はユクテスワ氏という師匠に出会う。

そして師匠に教わりながらクリヤーヨーガを実践する。クリヤーヨーガという言葉は、ヨーガスートラなどいろいろなところで出てくるが、彼のクリヤーヨーガはそれらとは異なるものらしい。

ユクテスワ氏や、彼の師匠であるラヒリマハサヤ氏、彼らにクリヤーヨーガを伝えたのは、ババジと呼ばれる人物らしい。この人は、203年から生きているらしい(Wikipediaもある)。普段はヒマラヤにいるが、瞬間移動などをしながら必要に応じて弟子にメッセージを伝えるという。

クリヤーヨーガの具体的な行法は、長年秘密にされてきたが、近年になって少しずつ公開されてきているらしい。ヨガナンダ氏の本の中では紹介されていなかったので、下記の本を読んでみた。

「ババジと18人のシッダ―クリヤー・ヨーガの伝統と自己覚醒への道」マーシャル ゴーヴィンダン (著)

このへんの本になると、Amazonなどでは普通に売っていないことが多い。

この本にもたくさんの聖者の話が出てきて、みんな超能力を使ったりもする。また、「生まれ変わり」が当然のように描かれていて、「この時代にはこの人物として肉体を得て…」といった話がたくさん出てくる。

ババジはソルバ・サマーディという境地に達して、不滅の体を得たということらしい。

この本にはクリヤーヨーガで用いられるアーサナなども書かれているが、クリシュナマチャリア系列ともシヴァナンダ系列とも異なるアーサナがたくさん出てきたり、同じ形でも全く違う名前がついていたりする。

もちろんアーサナだけではなく、プラーナーヤーマなどいろいろな行法があるようだが、この本ではごく一部分しか公開されていなかった。やはり正しい師匠に教わるべし、という密教の部類に入るのだろう。

日本でクリヤーヨーガを教えている人はいるのだろうか、と調べてみたけれど、どうもピンとくる情報が得られなかった。この本の著者はカナダなどにアシュラムを持っているようだ。いつか行ってみたい気もするけれど、帰ってこられないかもしれない。

というわけで、ガンジー自伝の続きとしてヨーガ的な生き方を学ぼうと思って読み始めたヨガナンダ氏の本だったが、思わぬ方向へ興味が向いてしまった。

ヨーガ的な生き方としては、ラーマクリシュナ氏の人生も良い刺激になった。

「インドの光 聖ラーマクリシュナの生涯」田中 嫺玉 (著)

この本は書籍紹介の記事も書いた。

書籍紹介:インドの光 聖ラーマクリシュナの生涯/田中嫺玉(著)|書籍紹介

近年のインドで聖者と言われる人物として何人か挙げるとしたら、必ず入ってくるラーマクリシュナ氏。彼もパラマハンサと呼ばれることが多いが、パラマハンサは「大覚者」などと訳される。直訳すれば「至高の白鳥」である。

彼はとにかく祈る。狂ったように祈る。その末に、ニルヴィカルパ・サマーディに達したという。本なども読まないが、名だたる知識人たちも平服するような話を実にシンプルに語る。

彼の姿勢として印象的なのは、ヴェーダーンタやキリスト教やイスラム教といった異なる宗教や哲学に興味を持ち、いったんどっぷり浸ってみたうえで、その真理をいとも簡単につかんでしまうところである。シヴァナンダ氏などもよくキリスト教から引用したりするが、インド人にはそういった宗教観があるのだろうか。

ラーマクリシュナの言葉は、弟子のマヘンドラ・グプタによって書き留められ、コタムリト(不滅の言葉)としてまとめられている。

コタムリト自体はとても長編なので、抜粋版だけ読んでみたが、いろいろな悩みを持って彼の元を訪れる人々に対して、なんとも気持ちよく愛情をもって応えている様子が浮かんでくる。

「不滅の言葉(コタムリト)―大聖ラーマクリシュナ」

ほとんど寺院の中の一室ですごし、その部屋に訪れる人々に説法をする。なんとなく私の生活に近いような気もした。

彼の弟子には、ヴィヴェーカーナンダ氏がいる。ヴィヴェーカーナンダ氏は、人それぞれに合ったヨーガの道としてカルマヨーガ・ジュニャーナヨーガ・バクティヨーガ・ラージャヨーガをまとめている。これらが現代では4大ヨーガと呼ばれているが、彼はハタヨーガについては霊性の発達には関係ないとして否定的である。

ちなみにラーマクリシュナ氏もたびたびヴィヴェーカーナンダ氏に対して超能力を使ってみせる場面がある。

なんだか当たり前のように超能力が出てくる。ここまでくると、ヨーガスートラに出ていた数々の超能力もあながち全てでたらめでもないのかもしれない。

まだまだ、知らない世界がありそうだ。

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