インドの偉大なヨギたちの話の中には、いろいろな超能力が当たり前のように出てくる。
「科学」は自然界のごく一部を都合よく扱うためには有効だが、世界には科学で表せないことも非常に多い。
しかし、超能力が現実のものだったとしても、それを使いたいと思うだろうか?
もし自分が千里眼を使えたとしたら、念力を使えたとしたら?
…そんな観想をしてみていたが、意外と、べつに要らないかもな、と思えた。もはやそんな低級な欲は湧いてこなかった。
ヨーガスートラ的に言えば、シッディにすら執着しない状態へいつの間にか近づいていたのかもしれない。
参考:ヨーガスートラ解説 3.51-3.56 〜識別知を得て、独存に至る〜
もっとすごい使命とかが湧いてきたら、それに必要な能力も湧いてくるのかもしれない。
では、いま必要な能力とはなんだろう。
いまはヨーガなどを教えつつ、人々の心身を健康にする手助けをしている。ある意味医者に近いような「治療家」とも言えるようなことをしている。「ヒーラー」と言ってしまってもいいのだが、ちょっとあやしい響きになるのでいまのところやめている。
治療をする上では、もっと肉体と微細身について詳しくなっておきたい。
というわけで、引き続きそのあたりを深めていくことにする。
「気」に関する治療として、鍼灸や整体などを調べてきたが、私が治療を受けてきた整骨院の先生が行っているのは主に「指圧」の技法だったと思う。
指圧は肉体に対する施術ではあるが、気にも作用するらしい。
まず経絡・経穴に関して漠然とした知識しかなかったので、ざっと全体を捉えるために下記の本を読んでみた。
「「気」で観る人体-経絡とツボのネットワーク」池上 正治 (著)
この本は各経絡の役割と、それらのつながりを明快に解説してくれていた。いままでは12本の経絡を別々のものとして捉えていたが、それらは肺経から始まって全身を通ってつながっているとわかった。
そして気と指圧について調べていると、頻繁に遠藤喨及氏の名前を見かけたので、本を読んでみた。
「決定版 タオ指圧入門 (講談社+α文庫)」遠藤 喨及 (著)
彼は指圧でも有名だが、浄土宗の僧侶でもあり、ミュージシャンでもあるらしい。興味深い。
この本には、気に関することがたくさん書かれていて、指圧の技法についてもそれなりに書かれていたので、ざっと彼の理論の全体像をつかむには良かった。ただ、あまりつっこんだことまでは書かれていなかったので、何冊か彼の本を読んでみることにした。
実用的な観点からはこの本が一番役に立った。
この本では、 一般的な鍼灸で用いられる経絡・経穴とは異なる独特な「超脈・超穴」なるものを定義している。
中でも超突穴と呼ばれるものに対する指圧の方法がとても効果的に思えた。そしてこの技法は、私が整骨院で受けていたワザに比較的近いものだった。
ようやくこのあたりで、魔法のように思えていた整骨院の先生のワザの正体がつかめてきて、いろいろとつながってきた気がした。
遠藤氏の本の中では下記の本が最も詳しかったが、以前挫折した証診断に関する技法も用いられていて、なかなか難しい。
「タオ指圧、東洋医学の革命―証診断と経絡臨床の真実」遠藤 喨及 (著)
遠藤喨及氏は、現代鍼灸で用いられている理論とは少し異なる領域まで踏み込んでいるようである。その姿勢は、増永静人氏の理論を参考にしているようで、彼の名前もたびたび出てくる。
増永静人氏の本は手に入りにくいので図書館でいくつか読んでみたが、論文のような体裁でアカデミックに書かれた本も多い。
その中では下記の本がやさしく、とても参考になった。古書ですごい値段になっていることもあるが、なんとか手に入れた。
鍼灸で用いられる「補瀉」の技法は、おそらく指圧でもあるのだろうな、と想像していたが、まさにその技法を紹介してくれていた。
そして経絡と指圧の関係性も説明してくれている。家庭でも指圧ができるようにという目的で、とてもやさしく説明してくれているのだが、その理論は誠に本格的である。
遠藤喨及氏・増永静人氏の指圧の技法と、以前得た鍉鍼の技法などは、自分の体を治療する上でとても有効な技になった。
いつか他者にも施術できるように技術をまとめるかもしれないが、やはり基本はセルフケアをベースにしたいので、むしろ「自分を治療するコツ」として伝えていきたいと思っている。
(次)肉体と気の体について研究を深める2 〜自然治癒力、人体らせん原理〜