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肉体と気の体について研究を深める2 〜自然治癒力、人体らせん原理〜

いろいろな人のアーサナを観ていると、体の癖には本当に様々なものがあると感じる。

特に、本来かなり自由に動くはずの肩関節と股関節に関する癖は、重要性が高い気がした。

肩関節は、自在に動きすぎる反面、アラインメントが崩れやすい。アラインメントが崩れていれば、アームバランスポーズでの安定性は生まれない。

股関節は、椅子生活のせいで非常に固まりやすく、そのせいで膝に負担がかかって痛める人も多いようだ。

これらの関節は球関節であり、そこにつながっている上腕骨と大腿骨は、非常に複雑な動きをすることができるのだが、現代人はほとんどの動きを行わない生活をしているため、可動域がとても狭くなっている。特に、「ねじり(回旋)」という動きは見落とされがちである。

そういえば、以前参考にした沖正弘氏の「眼がよくなる」ヨガの動きの中にも、眼球の動きとともに肩関節や股関節のねじりの動きを行うものが多かった。おそらく、これらの癖が視力にも関係しているのだろう。

「眼がよくなる本―ヨガの秘法であなたの近視も必ず治る」沖 正弘 (著)

「眼ヨガ: 龍村式ヨガ健康法」龍村 修 (著)

人々の癖をみていくと、たとえば普通に立っている状態でも、膝が内を向いていたり外を向いていたり、左右の脚で異なっていたりする。

これを「骨格のせいだから」「生まれつきこうだから」などと片付けてしまっていたら、一生直らないだろう。もちろん直らないものもあるかもしれないが、それが日常の習慣によって生まれた癖なのだとしたら、習慣を変えることで、直していくことはできるのではないか。

視力も同じで、「遺伝だから」「現代医学では治らないことになっている」などと片付けてしまえば簡単だ。しかし、もっと繊細に気づきを働かせれば、その症状を生み出している原因を自分の心身の中に探すことができるのではないか。

自分の心身が持っている「治癒力」を、もっと明確に知って、自然に引き出すことができないだろうか。

私にとっては、この時点ではこういった可能性は容易に信じることができた。信じることができるようになった経緯は、これまで書いてきたとおりだ。

現代社会の多くの人々は、こういった治癒力や「自分の感覚」すら否定されて育ってきている。「自分で判断せず、医者に診てもらいましょう」「自覚症状がなくても、データが異常であれば病気です」「自覚症状があるけれど、データが正常なのであなたは健康です」といった具合に。

盲信せず、明確に、ありのままの治癒力に気づきを向けられるようになろう。こういった話の事例や実践方法としては、以前紹介したアンドルー・ワイル氏の本がとても役に立つ。

「癒す心、治る力 (角川文庫)」アンドルー・ワイル (著)

さて、「ねじり」の話に戻ろう。

ヴィラバドラーサナⅠ・Ⅱなどをやってもらうと、膝を正しい方向へ向けられない人がとても多い。

ヴィラバドラーサナⅠ

ヴィラバドラーサナⅡ

また、チャトランガダンダーサナなどのアームバランスポーズで、肘が開いてしまったり肩関節を正しい位置に置けない人も多い。

チャトランガダンダーサナ

これらのアーサナは、完成形だけでなく、アーサナに入る動き(ヴィンヤサ)も重要である。ヴィンヤサも美しくありたい。

動いている最中も、常に安定して美しいアラインメントでいられるためには、常に正しい筋肉のバランスを保っている必要がある。

肘の向きや膝の向きを正しく保つには、「ねじり」に関わる筋肉のバランスが必要である。

そんなことを考えていたら、まさにちょうどいい本が見つかった。

「人体らせん原理とハタヨーガの融合 メディカルヨーガ」クリスチャン・ラルセン (著), テーダ・ファン・レッセン (著)

出版されたばかりのタイミングだったのでレビューもなにもついていなくて、そこそこ高価な本だったのだが迷わず購入して読んでみたら、当たりだった。

解剖学の知識が足りなかったりするとこの本はとても難しいだろう。ねじりについてあれこれ考えた経験のある人(あんまりいないか)は、読んでみたらとても参考になると思う。

私も肩関節にとても癖があり、しかも先日の手首の怪我によって右肩は非常に不安定になっていたが、この本のらせん原理を使うことでかなり安定性を取り戻すことができた。

骨を正しい配置(アラインメント)に置くことで、動きも美しく楽に安定させることができる。

一説によれば、「経絡とは骨そのものである」などと言っている人もいるらしい。たしかに骨の配置は、気の流れにも大きく関わっている気がする。背骨にスシュムナーナディが通っているというハタヨーガの考え方とも一致する。背骨を整えることに特化したピラティスの有効性も容易に理解できる。整骨院での魔法のような治療もここでつながっているのかもしれない。

何回「骨」って言ったかな。骨に対する意識はさらに高まっていった。

 

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