アシュタンガヨガのパタビジョイス氏と並んで、同じ師匠に習っていたアイアンガー氏。現代ヨガのほとんどのアーサナは、彼が行っていた形に基づいている。
彼の代表的な著書である「Light on Yoga(ハタヨガの真髄)」は多くのヨガインストラクターに参考にされてきた。
「ハタヨガの真髄_600の写真による実技事典」B.K.S.アイアンガー (著)
しかしこの本は、たくさんアーサナが出ているけれど、解剖学的な説明やコツなどはほとんど書かれていない。
当時私はいくつか練習しているアーサナがあったので、良いコツが書かれている本を探していたのである。
特に、股関節回転に関わるパドマーサナやバッダコーナーサナを課題としていた。
もう少し、彼の考えるアーサナのコツを知りたいと思ったので、下記の本も読んでみた。
「アイアンガーヨガ 完全マニュアル」B.K.S. アイアンガー (著)
内容としては「ハタヨガの真髄」とかぶるところも少しだけあるが、全てカラーでひとつひとつのアーサナをたくさんの写真を使って丁寧に解説している。
さらにたくさんのプロップスを使ってアラインメントを整えるやり方が描かれていた。このあたりは陰ヨガに近いものを感じたが、やはり陰ヨガはアイアンガーヨガの考え方も元にしているらしい。
ほとんどの現代ヨガがアイアンガー氏のアーサナを元にしているのであれば、それは「アイアンガーヨガ」なのではないかと思ったが、「アイアンガーヨガ」というものは別で存在するようだ。
アイアンガーヨガを調べてみると、徹底してアラインメントを整えることを目指して、椅子や木のブロックなどあまり見たことのないプロップスまで使っている。あるいは壁に掛けられたロープなどを使って倒立の練習をしたりするらしい。
そして、アイアンガーヨガの指導者になるためには5年くらいも修行を積む必要があるようだ。興味はあるけれど、なかなか難しい。ヨガってそんな敷居の高いものなんだろうか?と思ったのが正直なところだが、たしかに人それぞれに合わせてプロップスなどを使ってアーサナを調整してあげるには、それなりの経験を要する実感はあった。
とはいえアイアンガーヨガの門戸を叩く気にはならなかったので、必要な部分だけひとまず参考にしていくことにした。
アイアンガー氏の本は他にもいくつかあり、私は下記の本もたびたび参考にする。
「ヨガ呼吸・瞑想百科―200の写真で見るプラーナーヤーマの極意」B.K.S. アイアンガー (著)
呼吸法や坐法について、細かすぎるぐらい解説されている。あまり他の本では解説されないシャヴァーサナについてもいろいろと書かれている。呼吸法についてはとても参考になった。
しかし、私が課題にしていたパドマーサナやバッダコーナーサナについては、これらの本でもあまりヒントを得られなかった。
股関節の課題はとても根深い。根本的な姿勢や歩き方などの癖を変えていかなくてはならない。いろいろな本も参考にしたが結局のところは自分でヒントをつかむしかなく、まだまだ結構な時間がかかった。
そしてアイアンガー氏自身がアーサナを行っている様子や、教えている様子が動画に結構残っているので、見てみた。
形としては現代ヨガのアーサナと同じだが、どうもやり方が荒っぽい印象を受けてしまった。これでは怪我をするのではないか?それとも我々が穏やかにやりすぎているのか?
また、大勢の前でデモンストレーションをよく行っていたようだ。なんとなくそのあたりに、権威付けやビジネスの匂いを感じてしまった。ヨガを広めようという気持ちはわかるのだが、どうも違和感がある。これでは「ヨガはアクロバットだ」と言われても仕方がない。このへんの違和感はそのまま現代ヨガの違和感につながっていく。
それではアイアンガー氏やパタビジョイス氏の師匠であるクリシュナマチャリア氏は、どんなヨガを教えていたのだろうか?