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禅・仏教とヨーガの関係について調べ始める 〜鈴木大拙氏を知る〜

友人たちと金沢に行った時、「鈴木大拙館」に連れて行ってもらった。

美しくシンプルなデザインの建物で、とても魅力的な場所だった。

ここで撮った写真は、しばらくフレアプラスのサイトの背景画像にも使っていた。

禅や老荘に関しては以前から調べていたが、沢庵禅師・白隠禅師以外の近年の禅僧にフォーカスしたことはなかったので、鈴木大拙氏について調べてみることにした。

この方は、英語でも数多く著作を発表されていて、欧米に禅・仏教を伝えてこられた。鈴木大拙館にも、英語で書かれた資料がたくさん展示されていた。そこでもらってきた資料をしばらく読んだあと、著作も読んでみることにした。

最初に目に止まったのは、「無心」に関する本。

「無心ということ (角川ソフィア文庫)」鈴木 大拙 (著)

坐禅や瞑想というと「無心になる」というのをイメージする人が多いと思うが、いきなり無になるというのはとても難しい。

ヨーガの瞑想では、最初はまず無心よりも「一心」あるいは「一点集中」を目指す。それによって雑念を払っていく。スマナサーラ氏の上座部仏教などにおける分類ではサマタ瞑想(集中の瞑想)にあたるとも言える。

では無心とはなんなのか。ヨーガスートラでも最終的な状態は無種子三昧、対象の無い瞑想の極致である。

正直、この本を購入した時点ではまだまだ私には難しい話だった。

この本は、浄土真宗の僧侶の人々向けに語られた講話がまとめられたもので、大拙氏が各宗派への理解も深かったことが伺える。その語り口も親しみやすいものだった。それでも内容は難解で、しっかり理解しながら読めるようになったのはかなり後のことである。

そのとき一緒に買った下記の本は、とても役に立った。日本の歴史や文化と禅の関係性について語られていて、興味深い内容だった。

「対訳 禅と日本文化 – Zen and Japanese Culture」鈴木 大拙 (著), 北川 桃雄 (翻訳)

禅は、知識云々よりも体験を重んじる。一番大切な真理は、文字では表せない。自ら体感するしかないのだという。

しかし、まず一歩進むためには知識が必要なのである。進んだあとは、もう知識に執着する必要はない。

このような禅の姿勢はとても共感するものがあり、大拙氏はこの本の中で知識を深める段階について述べていたので、それを私なりに現代風にアレンジして下記の記事を書いた。

参考:「知識」を深めるための4ステップ

「わび」に関する記事も以前書いたが、日本人でもわかりにくい「わび」の感覚について、この本はシンプルにしかも英語でも表現していて、とてもわかりやすかった。

参考:「わび」の心 〜奥底に存在する禅の精神〜

この本では、武士の心と禅の関係性についても詳しく述べられていた。宮本武蔵好きの私にとってはとても興味深く、沢庵禅師や「葉隠」の言葉もたくさん引用されていたので参考になった。沢庵禅師の不動智神妙録は何度か読もうとトライしていたがなかなか難しかったので、ここでは要点が抜粋されていて、とても助かった。

沢庵禅師だけでなく、中国の禅僧の話などもたくさん書かれていて、この本は禅に関して調べていくための足がかりをたくさん提供してくれた気がする。

調べていくうち、日本人の心の深いところに、禅が根付いていることを感じた。

ヨーガスートラもいいが、禅はやはり日本人にとってはスッと入ってくる、あるいは入りこめる、というものがある。

しかし、至る境地はどうやら同じのようだ。

つまり、自分に合ったものを選べばいいのだ。だからいろいろな宗教も生まれたし、いろいろなヨガも生まれた。

ゴールに至る道は、いろいろあっていいのだ。争い合う必要もない。

禅は、答えを言葉では表さない「不立文字」、ただ坐れという「只管打坐」、臨済宗と曹洞宗で若干の違いはあるが、ヨーガに比べると、その教えはとてもシンプルだ。

ヨーガは、ゴールに関しては言葉で表せないが、そこまでの過程をできるだけ言葉で説明してくれようとしている。アシュターンガヨーガ(8支則)はとてもよくできたシステムである。

最終的には坐って瞑想をしていくことになるが、「坐るのも一苦労」という現代人が多い。だから、必要な人は、いろいろなヨガポーズをやって柔軟性を高めて、体幹を強く、姿勢を整えてから、ヨーガスートラでも指示されている「快適で安定した坐法」によって瞑想に入っていく。

必要でない人は、やらなくてもいい。人それぞれでいい。

初期のころから感じていたことは、確信に変わっていった。だからこそ、プライベートレッスンは大切なのだ。

 

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