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腹横筋

腹横筋の起始停止・拮抗筋・関連ヨガポーズ・ストレッチ・トレーニング

この記事の目次

腹横筋の特徴

腹横筋は、4層ある「腹筋」の中で最深部に位置するインナーマッスルで、深い呼吸や美しい安定した姿勢の維持、腹圧を高める働きがあり、排泄や分娩などにも関わる。

プランクポーズダウンドッグなどのアームバランスポーズで体幹をまっすぐ板のように安定させるために重要な筋肉である。

「お腹」の部分だけではなく下腹部・骨盤の前まで広がっており、上部・中部・下部で別々に働かせることもできる。アシュタンガヨガなどのヴィンヤサヨガでは、腹横筋下部は常に引き締めた状態で行われ、これをウディヤナバンダと呼び、骨盤底筋を引き締めるムーラバンダとあわせて行われる。

腹横筋の主な働き

  • 腹圧を上げる(腹式呼吸・排泄・分娩)
  • 腹側の下部の肋骨を下方へ引く
  • 腸骨を内旋・坐骨を外転・仙骨をうなずかせる

腹横筋の主な拮抗筋

腹式呼吸の吸気の主動筋

  • 横隔膜

骨盤底筋の「呼吸と骨盤底筋の関係に関する考察」の項も参照。

背中側で肋骨を下方へ引く主動筋

  • 腰方形筋
  • 脊柱起立筋
  • 広背筋

腸骨を外旋・坐骨を内転・仙骨を起き上がらせる主動筋

  • 骨盤底筋
  • 大腰筋

腹横筋の主な協働筋

腹圧を上げる

  • 横隔膜
  • 腹横筋
  • 外腹斜筋
  • 内腹斜筋
  • 腹直筋
  • 骨盤底筋

腸骨を内旋・坐骨を外転・仙骨をうなずかせる

  • 腹横筋

腹横筋の起始・停止

起始

第7〜12肋軟骨の内面、胸腰筋膜の深葉

停止

剣状突起、白線、恥骨(恥骨結節、恥骨櫛)

腹横筋を鍛えるヨガポーズ・エクササイズ例

腹横筋をストレッチするヨガポーズ・エクササイズ例

骨盤底筋・横隔膜など呼吸筋との関係性

腹横筋は、体幹下部の安定をもたらすとともに呼吸にも深く影響する。また、ヨーガの技法のなかでもバンダ・ムドラーに関わってくる。

どの呼吸のときに、どの筋肉が用いられるのか。これに関して考察を「骨盤底筋」のページにまとめたので参考にしていただきたい。

参考:骨盤底筋のページ

骨盤底筋のページにも同じ内容を記載してあるが、主な呼吸とバンダ・ムドラーで用いられる筋肉について下記にまとめる。

呼吸の種類と、関連する主な筋肉の動き

人は目的に合わせて、様々な呼吸を用いることができる。

胸式呼吸は交感神経を刺激し、心と体を行動的・活動的なモードに変える。

腹式呼吸は副交感神経を刺激し、心と体をリラックスモードに変え、消化・免疫などの活動を高める。

普段の呼吸や、深呼吸して心身のバランスを整えるときには、最も多くの空気を出し入れする完全呼吸になるべく近づけるようにする。

ヴィンヤサヨガやピラティスなど、下腹部の安定性を保ちながらも多くの空気を出し入れしたいときは、へそから上を使った呼吸(胸式呼吸+横隔膜の動き)を行う。

それぞれに関わる主な筋肉を下記にまとめる。「吸息時に収縮する」と便宜上記載したが、基本的には「脱力すれば自動的に吸息が行われる」ため、意識的に収縮して行うのは主に呼息のほうであると認識しておくと良い。

胸式呼吸

横隔膜よりも上の部分を用いた呼吸を胸式呼吸と定義した場合、用いる筋肉は以下の通り。

呼息時に収縮:内肋間筋

吸息時に収縮:外肋間筋・小胸筋・斜角筋

腹式呼吸

横隔膜よりも下の部分を用いた呼吸を腹式呼吸と定義した場合、用いる筋肉は以下の通り。

呼息時に収縮:腹横筋

吸息時に収縮:横隔膜・(骨盤底筋)

※骨盤底筋について考えると、腹圧を上げるという意味では骨盤底筋は呼息時に収縮するとも考えられるが、腹横筋との拮抗関係や排便や分娩などの動作との関係を考えると、吸息時に収縮し呼息時に伸長するほうが合理的で、ヨガの行法でもその場合が多い。その関係性は複雑であり、目的に合わせて様々な使い方ができるとも言える。

完全呼吸

体幹すべてを使って、最大容量の空気を出し入れする呼吸を完全呼吸と定義した場合、用いる筋肉は以下の通り。

呼息時に収縮:内肋間筋・腹横筋

吸息時に収縮:外肋間筋・小胸筋・斜角筋・横隔膜・(骨盤底筋)

※骨盤底筋については上記腹式呼吸の注意を参照。

ヴィンヤサヨガ・ピラティスなどにおける胸式呼吸(へそから上を使う呼吸)

下腹部の安定を重視するため、胸式呼吸をベースとするが、横隔膜の動作を伴い、より多くの空気を出し入れする呼吸。

呼息時に収縮:内肋間筋・腹横筋上部

吸息時に収縮:外肋間筋・小胸筋・斜角筋・横隔膜

常に収縮:骨盤底筋・腹横筋下部

バンダ・ムドラー

バンダ・ムドラーの名称の定義に関しては諸説ある。さらに研究が必要なため、この部分は一旦候補として用いられそうな筋肉ということで参考として挙げておく。

アシュヴィニームドラー(肛門の収縮):肛門挙筋群

ムーラバンダ(会陰の収縮):深会陰横筋・浅会陰横筋・恥骨尾骨筋(PC筋)など会陰部を引き上げる筋肉

ヴァジローリームドラー・サハジョーリームドラー(尿を止める):球海綿体筋・尿道括約筋など

ウディヤーナバンダ:腹横筋下部

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