セルフケアのテクニックなどをお教えすると、「1日何回やったらいいですか?」とよく聞かれます。
その問いの裏には、いろいろな要素が隠れているので、シンプルに決めてしまうのも難しいところです。
どのようにセルフケアを進めていったらいいか、基本的な考え方について書いてみます。
セルフケアの大事な基本
「◯回やれば、必ず◯ヶ月後に効果が出ます!」などというものはありません。
◯回やったとしても、正しく自分の状態に合ったやり方でできているかどうかにもよって効果が異なります。間違ったやり方をしていると、逆効果になることもあります。
また、日々の生活習慣や、心身の癖などの慢性的なマイナス要素が関わっていたり、仕事の忙しさや気候などの変動する要素も関わっていたりします。
未来を予測するためには、未来を左右する様々なことに気づいている必要があります。
ベストな未来をつくるためには、今できるベストな行動に気づいている必要があります。
やらないほうがいいことをなるべくやらない。やったほうがいいことをなるべく高い精度でやる。ということを心がけていれば、ベストな未来は、より早く訪れるでしょう。
「何回やったらいいか」を決めるメリット
習慣にしたいものがあるとき、「今日は、やろうかな…どうしようかな…」という雑念(迷い)が邪魔になります。
雑念が湧くと、「やらないほうがいいこと」をやってしまうことが多いでしょう。
回数を決めてしまえば、その雑念が湧き出す前に行動できる可能性が高まります。「毎日、朝に5分は瞑想する!」などと決めてしまったほうが、それはスムーズに習慣化できるかもしれません。たとえば禅寺の一日の習慣などを見ていると、箸の置き方など全てが決められていて、雑念が入らないように工夫されていますね。
決めたことを実践したという達成感もわかりやすいです。
「何回やったらいいか」を決めるデメリット
回数を決めて行うと、回数をこなすことだけが目的になってしまって、質が下がってしまうことが多いです。
行っていることに対しての気づきが薄くなると、精度が低くなってしまいます。
とくにヨガや瞑想のような、心身の癖をなおすために行うセルフケアは、繰り返し独習していると次第に自分の手強い癖が現れてきて、自分のやりやすいようなやり方になってきてしまうことが多いでしょう。
そのやり方でやっていると、なおそうと思っていた癖がむしろ強まっていってしまうという逆効果になることもあります。
日々のセルフケアの方向性を決めるヒント
以上のような基本的なメリット・デメリットを踏まえた上で、質の高いセルフケアを日々行えると良いでしょう。
この問いへの私の答え方の例としては、あまり気づきを伴わずとも行えそうなワークであれば具体的な回数や呼吸数などで指定することもありますが、ほとんどの場合は「気持ち良い範囲でやってください」「日々の負担にならない範囲でやってください」といった感じで数を自発的に決めてもらいつつ、「気持ち良い・ねらったところに効いているという感じがするならそれを続けて、よくわからなくなったらまた教わりにきてください」といった感じで質に気をつけるようにと示すことが多いです。
セルフケアの内容や分量を他人に決めてもらおうとする人は、その先生を信頼しているのかもしれませんが、自分の健康を人に管理してもらおうとする考えが裏にあることも多いです。
それは、支配されることにもつながります。
セルフケアの方向性で大事なのは「自発的であること」です。
自分でなにかテクニックを見つけて始めることもあれば、誰かに教わって始めることもあるでしょう。
動機は様々ですが、うまくいかなかったときに他人の責任にしたりメソッドの責任にしたり、あるいは過去の自分のせいなどにしてはいけません。セルフケアは「今の自分の責任」で自発的に行います。自分の責任で慎重に選び、質を高め、執着せずに今の自分に合ったやり方を試行錯誤していきます。
「今できるベストなことができているか?」「ちゃんと良い方向へ向かっているのか?」といった気づきを常に働かせながら行うほうが、効果が高まるでしょう。
変化に気づくには、絶え間ない気づきが必要です。過去に決めたことに執着せず、今の自分を観察して、今できるベストをやり続けるという柔軟性も必要かもしれません。
気づきが足りないと感じるのであれば、誰かに教わったり、誰かに観てもらって気づきを得るのも良いでしょう。
誰かにヒントをもらったとしても、誰かに日々の練習メニューを作ってもらうにしても、それでもやはり変化は気づきから自発的に起こるものです。
そして、社会に属しているのであれば、自分だけが幸せになろうとするのは難しいです。
そのセルフケアを行うことで、時間やお金や場所を使って周りに迷惑をかけないかどうか。そのセルフケアを行って自分が元気になることで、周りにどんな良い影響があるか、といった、周囲の人々や世界に与える影響も考えてみると良いかもしれません。
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参考:「◯◯を毎日◯回続ければ、◯ヶ月で◯◯に!」という幻想
参考:「回復」とはどのように起こるのか? 〜潜在意識と顕在意識〜