どんなヨガをやったらいいか?
「ホットヨガから始めたけど、ほかのヨガもやってみたい」
「いろんなヨガがあって、どれをやったらいいか分からない」
といった方々のために、今回は、ヨガ(ハタヨガ)の種類の選び方について書いてみたいと思います。
いま一般的にヨガスタジオで行われている、体を動かすタイプのヨガのほとんどは、「ハタヨガ(ハタ・ヨーガ)」に属する流派です。
新しい流派も次々生まれているので、追い求め続けるとキリがありません(興味があれば、次々試してみると良いでしょう)。
人はそれぞれ身体的・文化的な背景が異なるので、それぞれに最適な方法が次々編み出されていくのは自然なことです。
なので、人がやっているやり方にこだわる必要はありません。自分にとって最適なヨガを見つけてみてください。
まずは、流派名を全部知ることよりも、選び方のポイントをおさえておくと良いかと思います。
≫いま通っているレッスンにこだわらず、いろいろなヨガに触れてみてください
いろいろな流派があるけど、共通するヨガの定義とは?
健康になりたいとか体を強く柔らかくしたいなど色々な目的でやっている人がいると思いますが、結局のところヨガの目的は「幸せになりたい」ということです。今も昔も、みんな思っていることですね。
なかなか本当の幸せにたどり着けなかった昔の人々は、「自分の心をうまくコントロールすること」を目指そうとしました。
現代では体を使うヨガの印象が強いと思いますが、元々は瞑想法など心を扱う技法がメインでした。
そのために、「余計な心の働きを手放す」ということを繰り返していって、心を一点に定めて集中することができるようにしていく方向性がとられました。
しかし心を止めておくには、体が不安定に揺れ動いていては難しい。安定して長時間坐って瞑想できるように、柔軟で強い・歪みの少ない・安定した快適な体が必要でした。
安定した快適な体を作るために「ハタヨガ(ハタ・ヨーガ)」が生まれ、現代にも伝わる様々なアーサナが生まれてきました。
アーサナは「坐法」「姿勢」などと訳されますが、現代では「ヨガのポーズ」という意味で用いられています。
ヨガのポーズ名は、日本語・英語など各国の言葉に訳されていますが、元々のサンスクリット語では「◯◯アーサナ」という名前です(例:下向きの犬のポーズ/Downward Facing Dog/アドムカシュヴァナーサナ)。
その後、生き物の種類と同じだけ(7万〜8万種類)のポーズが生まれたと言われますが、いま一般的に行われているのは数百種類程度です。
各国の身体的・文化的特徴に応じて様々なポーズが生まれ、エクササイズ要素を中心として発展していったのが現代のヨガです。
ハタヨガ以外のヨガ
数千年前インドあたりでつくられたヨガ(ヨーガ)は、色々な宗教や文化と影響し合いながら変化してきました。
ヨガの古典(現存している中で、重要とされているもの)における大きな分類は、以下の3種類です。
- カルマ・ヨーガ(行為の道)
- ジュニャーナ・ヨーガ(知の道)
- バクティ・ヨーガ(献身・愛の道)
ハタヨガは、カルマ・ヨーガの中の一種と考えられます。
それぞれについてはまたいずれ書きたいと思いますが、エクササイズ的なヨガとはまったく異なるものです。
どれも、目的は同じ。先ほど書いたとおり、本当の幸せを見つけたかったのです。文化的・身体的特徴に応じて、いろいろな方法が編み出されたのは自然なことです。
ちなみにヨガとヨーガの表記の違いは、サンスクリット語では「オ」の発音は無く、「オー」の発音になるので、正しい読み方に沿って書くならヨーガと表記します。
ヨガの選び方のポイント
ヨガを選ぶときには、下記のようなポイントで考えてみると良いかと思います。
- 内容が決まっているヨガか、そうでないか
- 全体の運動量
- ヴィンヤサ(フロー)ヨガか、そうでないか
- メインとするポーズのジャンル(動かしたい体の箇所)
- 呼吸法の重要度
- 瞑想の重要度
内容が決まっているヨガか、そうでないか
同じクラス名がついていても、内容は先生によって全く異なるヨガもたくさんあります。
それに対して、内容がほぼ決まっているヨガは、アシュタンガヨガやシヴァナンダヨガ、そしてホットヨガの元になったビクラムヨガなどです。
内容が決まっていると、順番を覚えれば「次に何が来るんだろう」という不安がなく、集中して練習を深めることができます。
とくにアシュタンガヨガは、ポーズ内容から呼吸数まで厳密に決められています。とはいえ、先生によって重視するポイントやポーズの直し方が異なるので、おなじアシュタンガヨガのクラスでも色々な先生のレッスンを受けてみるのも面白いと思います。
シヴァナンダヨガは、ポーズのカテゴリーと順番は決まっていますが、レベルに合わせて難しいポーズ・簡単なポーズに変えて行うことも出来ます。1つ1つのポーズに向き合う時間が長く、ポーズ間にリラックスをはさんで進めていくので、ポーズを覚えて深めていくのに適したバランスの良いヨガです。
全体の運動量
ヨガのレッスンの流れは、一般的には坐って呼吸の練習から始め、だんだん運動量を上げていって体を温め、ピークがあって、だんだん運動量を落としていって、最後は仰向けで5〜10分ほどお休み、という構成になっています。
陰ヨガ・リストラティブヨガ・メディテーションヨガといったヨガはこれとは構成が異なり、陰のヨガはポーズ数が少なくて1つ1つの時間がとても長く、メディテーションヨガは20分程度の坐った瞑想が入る場合が多いです。
運動量を上げていくペースや、全体の運動量の強度が自分に合っているか、気持ち良くできるかどうか、頑張りすぎていないかどうか、自分を注意深く観察して選んでみましょう。
運動量の目安は、多くのスタジオでクラスごとに示してくれていますが、同じ名前のクラスでも毎回内容は異なりますし、苦手なポーズや得意なポーズは人によって異なるので、参考程度に見ておきましょう。不安な場合は「初心者向け」とされているクラスから参加してみるのが良いかと思います。
ヴィンヤサ(フロー)ヨガか、そうでないか
流れるように呼吸に合わせてポーズを変えていくのが「ヴィンヤサ」です。クラス名としては「フロー」と名付けている教室も多いです。
基本的に「ヴィンヤサヨガ」「フローヨガ」と呼ばれているクラスでは、ポーズ数が多く、短いキープ時間(3〜5呼吸程度)で次々と移っていきます。
流れを重視するので、休憩もなく、1つ1つのポーズに関する詳しい説明もなく、進んでいきます。
なので初心者にとっては「よくわからないけど、気持ちよかった」となる場合もあるでしょうし、逆に「よくわからないまま進んでいっちゃう」→「ヨガは難しい!」となってしまうこともあるでしょう。これは性格にもよると思うので、しっかりポーズを知りたいという場合は、ベーシックなクラスや、ヴィンヤサ以外のクラスを受けてみるのが良いと思います。
たくさんポーズをやるからきついというものでもありません。1つのポーズをキープし続けるほうがきつい場合もあります。
1つ1つのポーズのキープ時間が長く、立位ポーズやバランスポーズなど体幹・ハムストリングスを使う内容になっているヨガを「パワーヨガ」と呼ぶことが多いです。
パワーヨガの定義は教室によって様々ですが、切れ目なく呼吸に合わせて進んでいく場合は、ヴィンヤサヨガの一種と言えるでしょう。
メインとするポーズのジャンル(動かしたい体の箇所)
それぞれのヨガには、動かそうとする体の箇所や、重視するポーズなどが決まっていたりします。
たとえば、
- 体幹・ハムストリングス・二の腕などを鍛えたい場合はヴィンヤサヨガ・パワーヨガ
- 逆立ちやアームバランスなどをじっくり練習したい場合はシヴァナンダヨガ
- 前屈と股関節の柔軟性を高めたい場合はアシュタンガヨガのプライマリーシリーズ
- 体の深部をリラックスして柔軟性を高めたい場合はリストラティブヨガや陰ヨガ
といったように、やりたいポーズや、動かしたい・鍛えたい体の箇所によって選ぶのも良いでしょう。
呼吸法の重要度
呼吸法からヨガに興味を持つ人も増えてきているかと思いますが、クラス名や教える先生によって呼吸法への重点の置き方が大きく異なります。
ベーシックなヨガクラスでは、胸式呼吸・腹式呼吸・完全呼吸といった基本的な呼吸法の練習を行うことも多いでしょう。
ヴィンヤサヨガ・アシュタンガヨガ・パワーヨガなどのクラスでは、基本的に胸式呼吸・ウジャイ呼吸(喉の奥で音を鳴らす呼吸法)といった、ポーズの流れの中で行う呼吸を練習します。
シヴァナンダヨガでは、カパラバティとアヌローマヴィローマ(片鼻呼吸法)といった自律神経を整える呼吸法にしっかり時間を使って練習します。
リラックスヨガ、陰ヨガなどのクラスでは、腹式呼吸や片鼻呼吸法などリラックス系・自律神経を整える呼吸法の練習を行うこともありますが、内容は先生によってかなり異なります。
瞑想の重要度
坐禅やマインドフルネス瞑想からヨガに興味を持つ人も増えてきているかと思います。
メディテーションヨガのように瞑想をメインにしたクラスの場合は、姿勢を整えエネルギーラインを浄化したり股関節の柔軟性を高めたりするタイプのポーズの練習を行った後、10〜20分ほど瞑想の時間をとります。
その他のクラスでは、坐って瞑想する時間が設けられることは少ないので、坐って瞑想したい方は、「メディテーション」「瞑想」などの名前がついたレッスンを選びましょう。
ただ、ほとんどのクラスでは最初に坐って呼吸に集中する時間があり、最後にはシャヴァーサナ(仰向けで休息)が5分以上はとられるので、これらも瞑想の一種と捉えられます。よーし運動しにきたぞ!というはやる気持ちを一旦落ち着けて、自分を観察するためにも、最初の呼吸の練習は重要ですね。
アシュタンガヨガのように順番が決まっているヨガは、内容を覚えることで集中力が高まり、「動く瞑想」ともなり得ます。
シヴァナンダヨガは、呼吸法に多くの時間を使い、ポーズ間もシャヴァーサナで休むため、自分を観察しながら進めることができます。
言うなれば、自分を絶え間なく観察しながら集中して進めていけば、全ての行いが「瞑想」になり得ます。
坐って目を閉じるだけが「瞑想」ではないのです。
いろんなヨガを、いろんな先生に習ってみてください
ヨガは、目的こそ共通ですが、細かく決められたマニュアルがあるわけではないので、人それぞれが最適なやり方で行って良いのです。
ただ、ポーズや呼吸法などそれぞれの技術にはある程度「正しいやり方」があるので、しっかり習って行ったほうが、怪我もしにくく効果も高いでしょう。正しくない方法でやってしまって「ヨガは効果がない」「ヨガで怪我をした」と辞めてしまうのはもったいないことです。
教える先生も、自分の体験を元に、自分が良いと思ったやり方を教えているはずです。
全部すぐに鵜呑みにはせず、自分なりに捉えて、自分なりに気持ち良いヨガを見つけてみてください。
正しくヨガを教えている人は、執着しないことの大切さを知っているので、お客さんを無理に囲い込もうといったことはしないはずです。いろいろな先生のところで教わったり離れたりを繰り返しながら、自分に合った先生を見つけていくのが自然だと思います。
ヨガには、その人の人生が現れているような気がします。
同じ名前のついてるヨガでも、ぜひいろいろな先生に習ってみてください。