アシュターンガヨーガ(8支則のヨーガ)の最初に出てくる、ヤマ(禁戒)の1番目、アヒンサー(アヒムサ) अहिंसा ahiṃsā。
アヒンサーはいろいろな訳され方をしますが、日本では「非暴力」あるいは「非殺生」と呼ばれるのが一般的です。
周りのものに対しても、自分自身に対しても、苦痛を与えないようにすること。
現代ヨガのレッスンでもこの考え方は生きていて、「無理をしない」というのが一般的な方針として最初に説明されることが多いようです(日本人は周りに合わせて無理をしてしまいがちですが)。
しかし、日常生活において、そんな生き方は現実的なのか?と疑問に思う方も多いことでしょう。
殴りかかってくる人に対して、反撃しなかったらやられてしまうのではないか?
いやなことをされてもニコニコしていなければいけないのか?
私も最初はそんなふうに思いましたが、ヒントはその次に来るヤマの2番目、サティヤ सत्य satya にありました。
サティヤは、「真実」などの意味で、戒律としては「正直」「誠実」などと訳されます。
偽りなく、まっすぐであること。
つまり、いやなことをされたら、「それはいやです」と誠実に伝えることです。
そのとき「敵意を持たない」ことが重要です。
敵意を持たずに、誠実に伝えること。
敵意をぶつければ、相手も敵意を持って応えてきます。
ヨーガスートラ2.35節「アヒンサー(非暴力)に徹した者のそばでは、全ての敵意が止む。」
ヨーガスートラ2.36節「サティヤ(誠実)に徹した者には、行為に対して自然な結果が従う。」
いきなり「徹する」のは難しいので、少しずつ実践していきましょう。
いま殴りかかられているなら、うまく避けましょう。
そしてあらゆるものに対して敵意を持たずに生きることができるようになったら、殴りかかってくるような敵意むき出しの人はそもそも周りに寄り付かなくなります。
常に誠実に生きることができるようになったら、誠実な人が周りに集まります。
世界全体がそうなればいいのにというところまでは望まず、ひとまず自分の周りがそうなれば、とても過ごしやすくなるはずです。
≫ヨーガスートラ解説 2.35-2.39 〜ヤマ(禁戒・社会的規範)〜