「骨盤底」という言葉がヨガでよく出てきますが、どんな部分なのか、どう使ったらいいのか、うまくイメージできているでしょうか?
骨盤底筋とは
骨盤底を引き締めて・引き上げるのが、骨盤底筋と呼ばれる筋群です。
骨盤底筋はひとつの筋肉ではなく、たくさんの筋肉が関わっています。
たとえば肛門を締めたり、膀胱の入り口を締めたり、子宮頚口を締めたりなど、それぞれ異なる筋肉が働いています。
それらの多くは、尾骨から始まって恥骨につながっているため、尾骨の先端は特に重要な場所として扱われます。
なぜ骨盤底が重要なのか
ではそもそも、骨盤底がなぜ重要なのか?
四足動物は、お腹が下側にあり、体幹は水平に近く、内臓はお腹の方向へ垂れ下がるような形になっています。しかし人間は重力に対して直立しているので、体幹を骨盤で支える形になり、内臓も全て骨盤に乗るような形になるため、上半身を支える上で骨盤がとても重要な存在になっています。
人間にとって骨盤は、姿勢を保つ上でも重要であり、内臓を正しく働かせるためにも、支えとなる重要な部分です。
しかも、体は支えるだけではなく、動かさなければなりません。全部ガチっと固めるのではなく、骨盤に隣接する背骨や股関節の可動性も確保する必要があるのです。
そのため、適切な場所を引き締めて支えたうえで、目的の場所を動かすという身体の使い方ができれば、より自然に美しく動けるということになります。骨盤まわり全体をガッチリ固めてしまうのではなく、支えたい場所だけに力をこめられるようになる、そのために基礎となるのが骨盤底ということです。
また、呼吸法(プラーナーヤーマ)やバンダ・ムドラーといったハタヨーガの技法を行うときは、骨盤底筋をうまく使ってエネルギーの流れをコントロールします。チャクラを覚醒する行法では、先に挙げたいくつかの骨盤底筋をしっかり別々に使えるようにする練習があります。
参考:「クンダリニー・タントラ」を読む【42】第3章 5節:ムーラーダーラチャクラの覚醒方法
骨盤底筋と、その周辺の筋肉を正確に動かす
骨盤は、体の中央あたりにあって、仙骨を介して背骨が上につながっていて、股関節から下へ大腿骨がつながっています。そのため、骨盤の姿勢や動きを考える上では、隣接する部分との関係性が重要です。
隣接する部分との境界線のイメージが曖昧だと、たとえば股関節を動かしているつもりでも、背骨が動いてしまっていたりすることが結構な頻度で起こります。こういったことも体の癖であり、姿勢の歪みや骨の歪みを引き起こすきっかけになります。
骨盤の形を明確にとらえて、動かないように支えるために重要なのが、主に骨盤底筋と腹横筋です。これらの筋肉は呼吸にも関わり、ヨガではよく用いられます。ただ、ポーズや呼吸法をテキトーにやっていると、これらの重要な筋肉を使わずにごまかすこともできてしまいます。
まず坐骨の意識から始めてみる
今回はひとまず、骨盤底というものに意識を向けるために、坐骨を意識することから始めてみましょう。
坐骨は、その名の通り座ったときに座面にあたっている左右2つの骨で、すこし丸みをおびた三角形のような形で下に飛び出ています。
手のひらをクッションかソファーの上に置いて、その上に座ったら、坐骨を触ることができると思います。触ってみると、左右で結構感触が違うかもしれません。これが座り方の癖であり、姿勢の癖の元になっています。座り姿勢の土台となる坐骨なので、この2つの骨の配置は意識できるようになると良いでしょう。
この2つの坐骨の間の部分が、骨盤底の一番底の部分です。骨盤底といってもいくつか層があるので、ここが一番下と思っておきましょう。
また、坐骨の間の少し後ろには尾骨(尾てい骨)があるのがわかるかと思います。また、坐骨の少し前側には恥骨があります。
骨盤底筋を引き締めることによって、2つの坐骨と尾骨と恥骨が近づきます。これによって、骨盤底に支えができるわけです。
骨盤底を意識するためのとっかかりとして、立っている時や座っている時、まずはこの坐骨の間のエリアに力をこめるように意識することから始めてみましょう。
ヨガポーズをするときも、骨盤底筋を意識してみる
うまく骨盤底筋が引き締められれば、身体が下から支えられて、内臓が正しい位置に整い、背骨が自然にまっすぐ立って安定するような感覚が得られるようになっていきます。
立ちポーズも、より美しくできるようになっていくでしょう。なるべく常に、骨盤底筋を意識してみてください。慣れてくると、「筋肉を引き締める」ということをしなくても、ただ「意識する」だけで、心身に安定感が醸し出されるはずです。