瞑想の効果としては、心を落ち着ける、自律神経を整える、集中力を高める、洞察力を高める、あるいは超能力を目覚めさせるといったものもありますが、瞑想は体の中でどのように作用して、効果として現れるのか?
私もなんとなく気持ち良いくらいの感覚で瞑想を始めてしばらく続けてきましたが、いろいろ研究と実践を重ねた末に、瞑想が心身にどんな変化を与えるのかが分かってきたので、少しずつ解説を書いていこうと思います。
今回は「脳の使われ方が、瞑想によってどのように変化するか」という観点から考えてみます。
松果腺などの細かいところの話は別の記事に書こうと思いますが、今回は比較的入門的なところから、使われる「意識」によって脳を分類した話です。
脳(意識)の分類
瞑想を行うことで、まず雑念が減っていくと、平常時に使われていた脳の部分の働きは抑えられていきます。
平常時は、いろいろ考えたり、外からの刺激に反応したり、記憶や思いつきなどの内からの刺激に反応したりして、脳は働き続けています。
それらの表向きの働きに対して、心身のリズムを整えたり健康に生きるための裏方的な働きを主に担っているのは、脳幹など脳の真ん中あたりにある部分のようです。
平常時に雑念にふりまわされている大脳の働きが抑えられていくと、ふだんは裏方として常に心身を支えてきたこの「古い脳」とも言われる部分が主役となって働き始めます。
その状態になると、小賢しく考え続けていた大脳は静かに見守り、わざわざ「ここを治したい」などと指示をしなくても、「古い脳」が舵をとることで、自然と整っていくということなのでしょう。
舵取り役が変わると、治そう・整えようとする過程が邪魔されなくなり活発になります。練習を積めば意識は瞬間的に切り替えられますが、疲れて乱れている体(物質)が整うまでは少し時間がかかるので、しばらくその状態をキープする必要があります。そのためにも、瞑想の坐法・姿勢は「快適で安定している」のが良いでしょう。
参考:ヨーガスートラ解説 2.46-2.48 〜アーサナ(坐法・姿勢)〜
この心身を整える働きを制御している伝達経路のひとつが自律神経で、伝達物質のひとつがホルモンです。「古い脳」が主にこれらをコントロールして、内臓などの働きを左右しています。現代医学ではこれらをうまくコントロールできていないことが多いため、これらが原因となっている「難病」が多いようです。
脳の細かい物質的部分についてここで分析することはしませんが、働いている意識という分類でざっくり分けると、
- 意識的な活動に使われている部分(顕在意識)
- 無意識的な裏方としての活動に使われている部分(潜在意識)
- 使われていない部分
といった部分があると考えられます。
これは遺伝子などにも言えることでしょう。人間には、脳だけではなく、潜在的に使われている資源と、使われていない資源もたくさん眠っています。
瞑想と睡眠における脳(意識)の働き
瞑想によって顕在意識の活動を抑えることで、潜在意識の活動にも気づきを向けて、さらに使われていない部分にも気づきを向けると、脳の機能が高まり、連携もとれるようになっていくと思われます。
これは「睡眠」に近い部分もありますが、瞑想は顕在意識もゆるやかに覚醒し続けて「気づき(マインドフルネス)」が働き続けているという点で異なります。
睡眠の最中にも潜在意識の働きが体を整えてくれますが、瞑想の場合はそれを気づきを伴って行うことができるので、洗練された瞑想を行えば、質の悪い眠りよりも高い心身の治癒効果を得られることもあるでしょう。
とはいえ顕在意識が悪というわけではなく、人間が人間として活動できるのは顕在意識があるからです。
より良い人生を送るには、顕在意識が活動するために裏方のいろいろな意識が協力しあって動いている状態が理想的なのでしょう。
裏方がもうムリムリ!と言っているのに気づかず、ムリして活動してしまうから、心身を壊してしまうのです。
いくつも重なりあい、内外でつながっている意識
脳の連携がとれるようになっていくと、裏方も総動員で方向性を合わせた活動ができ、顕在意識の想いも実現するようになっていくようです。
さらに進んだ考え方をしていくと、まだ使われていない意識の部分は人類全体の集合意識とつながっているとか、地球や太陽の意識とつながっていると考えることもあります。このように考えると、大きな意識にも気づきを向けたり影響を及ぼしたりすることで周りの出来事も変わっていく、いわゆる引き寄せの法則などの話につながっていきます。
こういう話は突拍子もないようにも思えますが、人間の体を観察してみると、意識がいくつも重なり合っているというのは確かなようなので、人々を包み込む国全体や地球全体などの大きな意識があって、それが人間や動物などの内包物にも影響を及ぼしたり、あるいは影響を及ぼし合ったりしていると考えられなくもないです。
たとえば内臓にもそれぞれ意識があるかもしれません。それを人間全体の意識が包み込んで、”影響し合いながら”、人間として活動しています。内臓をおろそかにし続けると、ガンになったり様々な症状として反乱を起こすのかもしれません。人間全体の意識が死ぬ(離れる)と、内臓も死んで活動をやめ、物質的には分解されて自然に還ります。
瞑想によって小賢しい顕在意識をコントロールし、いくつもの意識が重なり合って人間が成り立っているということに気づき始めると、内外のいろいろなつながりにも気づいていきます。
さらなる進化を目的とした瞑想
顕在意識をコントロールできるようになった後、様々な技法を用いて脳を刺激して、さらに使っていなかった部分を目覚めさせる瞑想を行っていくこともできます。
ハタヨーガには、骨盤底筋や腹横筋などのインナーマッスルを使った「バンダ」「ムドラー」の技法がたくさん伝えられていますが、これらに一体なんの意味があるのか、私も最初のころはわかりませんでした。
しかし脳と脊髄の構造などを考えると、脳から背骨を伝って脊髄液が通っており、尾骨仙骨の動きはこの脊髄液の動きを促すため、骨盤底を締めて尾骨を動かすことが脳に少なからず影響を及ぼすということがわかります。さらに筋収縮による体内電流、それによって発生する磁気などを用いて、脳の使っていなかった部分が活性化されるというのも十分に考えられることです。
参考:「バンダ」とは〜プルプルしないでヨガポーズをキープ・呼吸法でエネルギーの流れを制御〜
参考:ハタヨーガプラディーピカー概説 3.55-3.73 〜3つのバンダ(ウディーヤナ、ムーラ、ジャーランダラ)〜
マントラを唱えたり、色や音や香りを使うことなども、脳を刺激することになります。目的に応じて、様々な技法を使って瞑想を進めていくと良いでしょう。
「瞑想」というものが流行りはじめて、いろいろな目的や効果に応じて瞑想法が名付けられていますが、ここまでの話をふまえると、「瞑想の目的」という切り口から以下の2つに大きく分けて考えることができるかと思います。
- 顕在意識の活動を抑えてコントロールできるようにし、裏で働いている様々な意識に気づきを向け、協調できるようにしていく瞑想。
- バンダやマントラや観想など様々な技法を用いて、脳の使っていなかった部分を新たに活性化していく瞑想。
それぞれにもいろいろな技法がありますが、どちらのアプローチから行うのが良いか、どちらも同時に行うのが良いか、人それぞれ適したやり方は異なるのでしょう。そのため、いろいろな瞑想法が乱立している状況です。
今の自分に合った技法を知りたい場合は、慎重に技法を選び、正確に実践して、自分の変化を観察する気づきの精度が必要です。それが不安な場合は、良き師匠をみつけて指導してもらうのが良いでしょう。
私もいろいろな技法を試してきましたが、最初の頃は正確に実践できているのか、一体なんの効果があるのかわからないものもたくさんありました。実践と研究を続けて、意味と効果がはっきりしてきたものは、今後紹介していこうと思います。