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ゲーランダサンヒター概説1.12-1.44 〜シャットカルマ、ダウティ〜

ゲーランダサンヒター概説1.12-1.44 〜シャットカルマ、ダウティ〜

身体をキレイにしたいという執念を感じる浄化法

ハタヨーガの重要な教典の中でもたくさんの技法が載っている、ゲーランダサンヒターを読んでいきます。

ゲーランダサンヒターの概要 〜ハタヨーガの百科事典〜

今回は、身体をキレイにするための6つの浄化法(シャットカルマ)の全項目と、1つめの浄化法ダウティ(洗浄・清掃法)について書かれている部分を紹介します。

下記引用部分は、特に記載のない限り「ヨーガ根本教典 (続) /佐保田鶴治」を出典とします。

この記事の目次

6つの浄化法(シャットカルマ)

1.12 浄化のためには次の六つの作法(カルマ)を修習すべし──(1)ダーウティ、(2)バスティ、(3)ネーティ、(4)ラーウリキ、(5)トラータカ、(6)カパーラバーティ。

シャットカルマの6つは、ハタヨーガプラディーピカーと内容は同じですが、ナウリの名前がラーウリキに変わっています。

ハタヨーガのシャットカルマ(6つの浄化法)

「カルマ」という言葉は「業」を表す場合もあり、「行為」を表す場合もあるという解釈の難しい言葉です。ここでは「行為」ということになるでしょう。

ゲーランダサンヒターは浄化法から話が始まっていますが、ハタヨーガプラディーピカーではアーサナから話が始まり、浄化法は第2章プラーナーヤーマの中で、呼吸法とともに示されていて、順番が少し異なります。

この順番については、どちらもあり得ると思います。まず身体を徹底的にキレイにしてからアーサナを行うか、まずアーサナで身体を強くしてから浄化して調気法へつなげていくか、どちらのやり方もできそうに思えます。実際は並行して行ったり、人によって必要なものを選んで(あるいは師匠が指示して)行っていくのでしょう。

私もインドで浄化法をやったあとは身体が軽くなったりしたのでアーサナをやりやすくなるなどの効果を感じました。一時的に体力は落ちますが…。

ダウティ(ダーウティ)、身体の各部分を洗浄する方法

1.13 ダーウティには四つの仕方がある。これらの仕方を修習して、身体を汚れの無いものとなすべし。それは、(1)内臓の清掃、(2)歯の清掃、(3)心臓の清掃、(4)肛門洗浄の四つである。

ハタヨーガプラディーピカーのダウティは、長い布を飲み込んでからゆっくり吐き出すという食道を洗浄するものだけでしたが、ゲーランダサンヒターのダウティはたくさんの種類があります。

よりキレイに身体を浄化したかったのでしょう。しかしこれらを読んでいくと、本当に浄化に対する執念を感じます。

それぞれの清掃法にもいくつかのバリエーションがあります。

内臓の清掃(アンタル・ダウティ)

1.14 内臓の汚れを去るために四種の清掃法を修習すべし──(1)風による清掃、(2)水による清掃、(3)火による清掃、(4)空気排外法。

風による清掃(ヴァータサーラ)は、空気を胃の中に飲み込んで、胃の中で動かし、口からあるいは下から出すというもの。

水による清掃(ヴァーリサーラ)は、口から水を飲み込んで、胃腸の中を移動させて下から出すというもの。これはシャンカプラクシャーナと呼ばれる浄化法として行われており、私もインドで行いました(つらい)。

火による清掃(ヴァンニ・サーラ)は、お腹をへこませる動きを100回行うというもので、これは現代ヨガではアグニ・サーラとして行われています。また、カパラバティやバストリカーといった呼吸法のお腹の動きもこれに近く、これらの呼吸法が「火」を起こして消化を促すという考え方につながっているように思えます。

空気排外法(バヒシュクルタ)は風による清掃法に似ていますが、胃の中で1時間半空気を保持してから下の方へ出すべしとされています。この技法に追加して水の中につかって直腸を外に出して両手で洗うという荒業が書かれています。「胃の中で1時間半空気を保持する」というのが重要らしく、後の節でも繰り返し説明されています。

歯の清掃(ダンタ・ダウティ)

1.25 歯の清掃法には、五つありとされる──(1)歯根の清掃、(2)舌根の清掃、(3)-(4)両耳の孔の清掃、(5)眉間のくぼみの清掃

歯根の清掃は、カーディラの汁か清らかな泥をもって歯の根をみがくというもの。

舌根の清掃は、指を使って舌の表面をこするというもの。それからバターを塗って舌根をしぼり、やっとこで舌をはさんでひっぱるべしという荒業が示されています。これはケーチャリームドラーのために舌を伸ばす必要があったからと思われます。舌の清掃については諸説あり、毎朝やったほうがいいという説もあれば、全くやらないほうがいいという説もあるようです。私も昔はよく行っていましたが、今はほとんど行っていません。

両耳の孔の清掃は、人差し指と薬指(佐保田氏)もしくは、人差し指か小指(向井田氏)によって両耳の孔を摩擦すべしというもの。

眉間のくぼみの清掃は、右手の親指で眉間のくぼみを摩擦するというもの。ただ、向井田氏はこれを「喉の奥」と解釈しているようです。これを行うとカパドーシャの乱れを整えられ、また毎日3回行うことで気道が浄化され、天眼通が生じてくるという。天眼通というところからすると眉間のほうが正解のような気がしますが、粘液系の不調を整えるというところから考えると喉の奥も正解のような気もします。

心臓の清掃(フルッド・ダウティ)

「心臓」となっていますが、実際に心臓を洗うわけではなく心臓に近い位置にある、食道や胃などの消化管を清掃するというものです。

1.35 心臓の清掃には三つの方法がある──(1)棒を用いる方法、(2)吐法、(3)布を用いる方法。

それぞれ、棒を食道へつっこんだり、水を飲み込んでから吐いたり、布を飲み込んでから引き出すというもの。これらによってピッタとカパの不調が治ると示されています。

布を飲み込んで引き出す方法は、ハタヨーガプラディーピカーに「ダウティ」として唯一書かれていたものです。

水(実際は生理食塩水)を飲み込んでから吐き出す方法と、布を飲み込んで引き出す方法は私もインドで行いました。

肛門洗浄(ムーラショーダナ)

1.43 うこん草の根の幹で、または中指でもって、丁寧に、水を使って、繰り返し、繰り返し、肛門を洗浄すべし。

ムーラという言葉は「根っこ」「最下部」などの意味でよく用いられ、身体の部位としては肛門もしくは骨盤底を指すことが多いですが、ここでは肛門と言うよりは直腸を指すと思われると佐保田氏は指摘しています。

これによって便秘や消化不良が治り、美と体力を増すと示されています。ハタヨーガプラディーピカーもそうでしたが、ハタヨーガの古典にはわかりやすく効果が書かれており、読者の興味を引くことを狙っているようにも思えます。

しかし実際ハタヨーガは密教であり、文字の情報だけで行うことは難しく、必ず師匠に直接教わるべしとされています。これらの本を読んで興味を持った人は、良き師匠を探したのかもしれません。

(次)ゲーランダサンヒター概説1.45-1.60 〜バスティ、ネーティ、ラーウリキ、トラータカ、カパーラバーティ〜

(前)ゲーランダサンヒター概説1.1-1.11 〜ヨーガの目的、サプターンガ・ヨーガ〜

参考文献

「ヨーガ根本教典 (続)」佐保田 鶴治 (著)

「ヨーガ根本教典」佐保田 鶴治 (著)

「やさしく学ぶYOGA哲学 ハタヨーガ 基礎と実践」向井田みお (著)

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高橋陽介

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