「KUNDALINI TANTRA(クンダリニー・タントラ)/Swami Satyananda Saraswati(スワミ・サティヤナンダ・サラスワティ)著」を読み進めていく形で、クンダリーニヨガの概要を紹介していきます。
「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)
「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)
用語:クンダリニー(クンダリーニ)
用語:チャクラ
用語:ナディ(ナーディー)
これらは今は誰もが見えるもの・感じ取れるものではないので、扱うのが難しい分野ではありますが、心身の改善のためにも、ヨガのポーズや瞑想を洗練させるためにも、そしてさらなる進化のためにも、これらの「見えないもの」も注意深く研究して、気づきを磨いていくと良いかと思います。
今回は、第1章の8節の後半、クンダリニー覚醒によって起こる意識の変化などに関する部分です。
以下、引用部分の太字強調は私が個人的に重要と思ったところを示したものです。
無意識の現れ
In the course of your practices there may be isolated awakenings in ajna chakra, in which the awareness enters the realms of the unconscious mind and you see figures, symbols and even monsters or benevolent beings. You may hear or experience many inexplicable things, but they are all simply products of your own unconscious mind and should be regarded as nothing more. With the awakening of psychic consciousness, the symbols belonging to your own personality come out. When this happens you may have a problem understanding, but just remember, these kinds of expressions are simply parts of your being which have been lying in reserve and they have to ‘come out for airing’.
You should not be afraid of kundalini awakening but you must be prepared for the events that may occur. Otherwise, if you have a weak mind and are confronted by fear, it could lead to mental derangement. So, before you attempt kundalini awakening you should undergo a process of thought purification and develop understanding of your way of thinking.
クンダリニーやチャクラの覚醒によって、無意識の領域に眠っていたものが表出してくるため、図形やシンボルやモンスターなど様々なものを視たり聞いたり経験したりすることになるかもしれません。
それらは自分自身の内に眠っていたものであり、表に出てくるべきものであって、そういったことが起こることを事前に知っておき、恐れることなく、心の浄化(自分の心の癖の理解)などの準備をしておくのが良いと説明されています。
But of course, when the awakening takes place, if the aspirant is not maintaining the proper discipline that is required, he is bound to get into some psychological cobwebs.
また、そういったことが起こり始めても、規律正しく振る舞い続けることが重要であると繰り返し示されています。さもなければ、心の病気なども現れ、心理的な蜘蛛の巣に迷い込むことになると言われています。
Therefore, before one attempts awakening of kundalini, he must have arrived at a point of purity of consciousness or clarity of mind, chitta shuddhi.
クンダリニー覚醒を試みる前に、意識の浄化、透明で明快な心に達している必要があるといわれます。
再三出てくる言葉ですが「chitta チッタ」は「心の働き」などの意味でよく用いられ、ヨーガスートラのゴールとしてはチッタの働きを止滅するのがヨーガである、ということが示されています。「shuddhi シュッディ」は浄化などの意味で用いられ、ナディシュッディ(ナディの浄化)などで用いられる言葉です。
When the mind enters into meditation or samadhi, this subterranean level comes up to the surface. You begin to see all the debris and you feel it and enact it.
瞑想や三昧に入るとき、潜在意識が表出してきて、そこにたまっていた沈殿物のようなものも現れてくるといいます。これが先述の幻のようなものとして視えたりするものであり、それは浄化のために起こる得る過程であるといいます。
このように、クンダリニー覚醒を試みる前に「浄化」が重要であるということが、繰り返し述べられています。
心の波立ちを抑えることができなければ、物事の本質を映し観ることができません。
超能力とエゴ
When one has been practising kundalini yoga for a couple of years and suddenly he starts having beautiful experiences, he tends to think he is superior to everybody else and may even consider himself as godly. To protect yourself from this, you must place yourself in the caliber of chela or disciple. A disciple remains a disciple, there is no promotion for him. Many people think that after twelve years of discipleship they will be promoted to guruhood, but this is not so.
クンダリニーヨーガを数年間実践して、突然美しい経験をするようになると、自分が他人よりも優れていて神にでもなったかのように感じることがありますが、そういった心の増長を避けて、「弟子」であり続ける必要があるといいます。弟子は弟子のままであり、12年の修行を経たら師匠に昇格するというようなものではないと説明されています。
これには色々な意味が込められているかと思いますが、ヨーガスートラ1.26節で「イーシュヴァラは古代の師にとっても師であり、時間に依存しない。」と示されているように、宇宙意識イーシュヴァラは時の流れに関係なく常に師匠の師匠であり、そういう意味も含めて、常に「弟子」として謙虚にあれ、というように捉えておくのが良いかもしれません。
参考:ヨーガスートラ解説 1.23-1.26 〜イーシュヴァラ(宇宙意識)について〜
When at a certain stage the mind becomes very efficient and siddhis such as telepathy, clairvoyance, hypnotism, spiritual healing, etc. manifest, some aspirants take that to be a divine accomplishment and begin to think ‘Now I am God.’ Then, in the name of good to everybody, they start doing all sorts of funny magic. This feeds the ego, and in the course of time, their ignorance becomes very great.
ある段階まで修行が進むと、心がとても効率的に働くようになり、テレパシーや透視などの「siddhi シッディ」(超能力)が現れることがありますが、それによって「私は神になった」などと考えるようになると、それはエゴを育て、「無知」が拡大するといいます。
「ignorance 無知」は全ての煩悩の元であるというのはヨーガの基本です。
参考:ヨーガスートラ解説 2.4-2.9 〜「無知」から生まれる諸煩悩〜
It is important to remember what Patanjali has said in the Yoga Sutras – “All these psychic manifestations are obstacles which block the free flow of consciousness towards samadhi.”
この項を読んでいるとヨーガスートラの教えに共通することが多いなと感じます。
こういった超能力は全て、サマーディに至るための自由な流れを邪魔するものであるとパタンジャリは教えている、ということをサティヤナンダ氏もここで引用しています。
参考:ヨーガスートラ解説 3.51-3.56 〜識別知を得て、独存に至る〜
高次意識の二面性
In the realms of higher consciousness, there are both divine and demonical forces. Both these forces can be brought down to earth by the same techniques. Without higher awareness, when the awakening of the chakras begins, the knowledge and destructive energy of the atom bomb might be unleashed rather than the wisdom and spiritual power of the rishis.
高次元の意識には、神聖な一面と悪魔的な一面があります。
それらは同じ技法によってもたらされる可能性がありますが、高い気づきを持っていれば聖者の智慧と霊的な力を得ることができますが、そうでなければ原爆の発明などの破壊的なエネルギーに使われてしまうことになります。
過去の人類の歴史を見ても、そういった事例がたくさんあったということでしょう。
When kundalini awakens in a person with no dispassion and discrimination, who does not seek liberation and does not know the reality of this world, the consequences can be disastrous. Ultimately, that person will destroy himself, and possibly many others in the process.
心を平静に保つことができて識別のある人間以外にクンダリニーが覚醒した時、その結果は本人だけでなく周囲も巻き込んだ破滅的な結果をもたらすといいます。
Therefore, a kimdalini aspirant must constantly work towards the development of higher awareness. To be conscious of the unconscious is very difficult. When your awareness is heavy and burdened with tension and confusion, it cannot survive for long in the unconscious state. But when your consciousness is light and clear, it can penetrate into the unconscious like a sharp and speedy arrow, successfully navigating past all the danger zones and emerging with higher knowledge.
そのため、クンダリニー覚醒を試みる者は高い意識を構築することを継続していく必要があると強調されています。
その鍵となる要素として、「『無意識の領域』に気づくこと」そして「心を明快に(light and clear)すること」というフレーズが繰り返し用いられているようです。
Kundalini yoga, if practised with dedication, patience and appropriate guidance, is the safest and most pleasant way of awakening that can ever take place in our lives.
With the awakening of kundalini, life becomes smooth. Plans and projects become clear, decisions become accurate, and the personality becomes dynamic and powerful. Therefore, do not be afraid of any risk. Once the awakening takes place, all your limitations will be overcome, because darkness can never exist in the face of light and limitations can never exist in the face of kundalini.
この節の最後に、改めてクンダリニーヨーガのリスクについて説明されています。
クンダリニーヨーガは献身(専心)と忍耐と適切な指導のもとに行われれば、最も安全なクンダリニー覚醒の道であると述べられています。
リスクを恐れず正しく進んで行けば、人生はスムーズに回るようになり、やるべきことが明らかになり、活発で活気に溢れる人間性になり、今まで感じていた様々なリミットを乗り越えていける、というような背中を押す言葉で締めくくられています。
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参考文献
「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)
「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)
「クンダリニー」ゴーピ・クリシュナ (著), 中島巌 (翻訳)
「Asana Pranayama Mudra Bandha 英語版」Swami Satyananda Saraswati (著)