仏教やヨーガの教えの中で「ヴィヴェーカ viveka」という言葉がよく出てきます。日本語では、「識別」などと訳されます。
正しいことと、そうでないことを識別する能力。
いろいろな情報が溢れている現代において、これはとても大切です。
これも現代で流行っている「マインドフルネス」の元になっている考え方の一つでしょう。
そして、識別はもともと持っている能力であり、正しい識別をするには、それを覆い隠しているものを取り払っていくことが必要です。
識別を妨げるものとして、仏教やヨーガでは様々な「クレーシャ kleśa」(障害・煩悩)を挙げています。
クレーシャには、五蓋、三毒などいろいろな考え方があるようですが、全ての原因になっているのは「アヴィディヤー avidyā」(無知・無明)であるというのは共通のようです。
アヴィディヤーを打ち破るには、「ジュニャーナ jñāna」(智慧)が必要であるとされます。
「智慧」というのは、「知識」とは異なり、以下のようなものです。
一切の現象や、現象の背後にある道理を見きわめる心作用を意味する仏教用語
出典:Wikipedia
現象の背後にある道理、そこを見極めそこなうと、情報に踊らされたり、心乱されたり、陰謀論に偏ったり、迷妄に陥ることになります。
「無明」はすなわち「迷い」であるという解釈もあります。
ムズカシイ言葉が並びましたが、こういう大切な教えは、昔から日本にも仏教として伝わっているのです。
しかし今の日本は、宗教をコワイと思ってしまったり、とっつきにくいと思ってしまう人も多いでしょう。
そんな中で、宗教色をなるべくなくして識別・気づきを磨く、マインドフルネスの実践が注目されています。
人間の本質に関わる部分に踏み込んでいくには、宗教や哲学を学んでいくのもひとつの道かと思いますが、正しい「識別」ができないまま、深遠な部分に踏み込んでいくと、心乱されてしまいます。
まずは足がかりとして、瞑想・マインドフルネスを実践してみるのは良いかと思います。
そして、正しい「識別」ができるようになって、いろいろな情報にも心乱されないようになれると良いですね。
参考:ヨーガスートラ解説 2.1-2.3 〜5つの煩悩と3つの実践(クリヤー)〜
用語辞典:クレーシャ
用語辞典:ヴィディヤー
用語辞典:ヴィヴェーカ