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胸式呼吸(胸式+α呼吸)ができない方・太陽礼拝のジャンプでふわっと感を出したい方へのコツ・練習法

胸式呼吸(胸式+α呼吸)ができない方・太陽礼拝のジャンプでふわっと感を出したい方へのコツ・練習法

へその下を引き締めて、へその上全体で呼吸する

前の記事で、呼吸の種類について紹介しましたが、太陽礼拝やアシュタンガヨガなどで胸式呼吸(胸式+α呼吸)がなかなかうまくできず、

  • プランクポーズ・チャトランガ・8点のポーズ・ダウンドッグなどで安定感がない。
  • ジャンプするときに「ふわっと」感が出ない。

といった方が多いようです。

今回は胸式呼吸(胸式+α呼吸)のコツについて書いておきます。

チャトランガダンダーサナ

この記事の目次

胸式呼吸と胸式+α呼吸

胸式呼吸と腹式呼吸の境目は、通常は「横隔膜」とされることが多いです。

横隔膜を境目とした場合、純粋な胸式呼吸は「肋骨を拡げて挙げる」動きだけで行われます。

ただ、この呼吸だけだとやはり肺活量全体のほんの一部しか使えないので、実際のスポーツや太陽礼拝やアシュタンガヨガなどの最中に行う呼吸は、横隔膜も含めて「へそから上を使う」というように表現することが多いです。

へその下は引き締めて、安定感を保ちながら、へそから上の体幹部分(胸式+横隔膜)を使う呼吸を行えるようにすると、太陽礼拝でもふわっとしたジャンプができるようなります。

これを胸式呼吸と呼んでしまってもいいのですが、一応区別して胸式+α呼吸と個人的に呼んでいます。

胸式呼吸・胸式+α呼吸の効果

胸式呼吸は交感神経のスイッチになり、心身を活発な状態に切り替えます。

物理的に考えれば、腹筋の下部を引き締めたまま動けるので、スポーツやヨガ・ピラティスでも重要な体幹に安定感が生まれます。体幹が安定するということは股関節や肩関節などの可動域も高まります。

たとえばプランクポーズなどを行っているとき、胸式+α呼吸をしていれば安定していられますが、いきなりそれを腹式呼吸に変えてしまうと一気に安定感がなくなってしまい、手首や肩のほうに負担がかかってしまいます。アームバランスポーズをすると手首が痛いと言っている人は、呼吸や下腹部の使い方に原因がある場合が多いです。

プランクポーズ

ウッティタハスタパーダングシュターサナのように、不安定な姿勢で腕や脚を伸ばすポーズの場合、柔軟性ももちろん必要ですが、そもそも体幹がふにゃふにゃしていると、脚を存分に伸ばすことができません。

ウッティタハスタパダングシュターサナ

腕や脚などの末端部分に、姿勢維持のための仕事を減らして本来の仕事をしてもらうためにも、体幹の安定性は重要です。

胸式呼吸・胸式+α呼吸ができない原因

胸を呼吸に使えない理由は、

  • 胸周りに意識が通っていない(胸を呼吸に使うという意識が足りない)
  • 胸周りの筋肉が凝っている
  • 姿勢が悪いため、本来は呼吸に使うための筋肉が姿勢維持のために使われてしまっている

といったものがあるかと思います。

胸式呼吸ができない人は、腹式呼吸が得意な場合が多いです。

普段の呼吸のとき、主に腹を動かして呼吸しているので、いざ胸式呼吸をしようとしても、お腹が動いてしまいます。

その分、腹を使うことへの意識は強いので、「腹を引き締める」ことはできるかもしれませんが、そうすると今度は「呼吸ができない!」となってしまいます。

腹を引き締めたまま、胸を呼吸に使えれば良いのですが、胸は普段は呼吸に使っていないので、いきなり慣れない仕事を振られるとたしかにパニックになりますね。また、猫背になってしまっていたりすると、胸周りの筋肉は、姿勢の維持など本来やるべきではない仕事を常にさせられているので、呼吸という新たな仕事をする余裕がないということもあるでしょう。

そのため、筋肉たちが本来の仕事を思い出させるように、少しずつ胸周りの意識を変えていく練習が必要です。

胸式呼吸・胸式+α呼吸のコツ・練習法

胸式呼吸に関連する筋肉のマッサージ

胸式呼吸で使われる(収縮する)筋肉と、伸びる筋肉をそれぞれ意識して、マッサージしたりさすったりして、柔らかくして意識を向けるようにしておくと良いでしょう。

細かく挙げていくとたくさんありますが、要は肋骨にくっついている筋肉全体です。

肋骨全体を触ってみながら、固まっているところや意識が普段向いていなかった部分を探してみましょう。

詳しい筋肉は、前の記事にまとめてあります。

≫ヨガやピラティスで使われる主な呼吸の種類・使われる筋肉

姿勢を整える

猫背・巻き肩になっていると、呼吸に使われるべき胸周りの筋肉が、姿勢維持のために常に仕事をしている状態になってしまい、本来の仕事である胸式呼吸を行う余裕がなくなってしまいます。

ななめ下に向いてしまっていた胸を正面に向けるように、胸骨を持ち上げて、肩を正しい位置に置きます。

「正しい位置」の目安は、裏表全部の筋肉が50%働いているような状態です。それに気づくためには、全部の筋肉を触ってみるなど、意識を偏りなく向ける必要があります。

普段は前側(胸側)ばかりに意識が向いていることが多いでしょう。偏りなく、背中側・肩甲骨周りや、頭の位置などに意識を向けてみます。

猫背の場合は頭の位置が前に出て、アゴが上がっています。アゴを引いて、胸を持ち上げて、頭の位置を後ろへ上へもどし、首の周りも全部の筋肉が50%の仕事をしているような姿勢を探します。

全部吐ききる・全部吸う、完全呼吸

姿勢を整えたら、腹式呼吸・胸式呼吸両方を合わせて全部吐ききる練習をしましょう。

体幹全部を使って、一番肺活量を使い切る、完全呼吸です。

吸うのではなく、まず吐ききることが大切です。筋肉は、「使う」ときに「収縮」します。収縮すると、ポンプのように空気が出ていくイメージなので、主に呼吸というのは「吐く」ほうを意識的に行います。

なるべく1ccでも多く、吐ききることを練習してみましょう。そのとき、呼吸に使われる全ての筋肉に刺激が行き渡ります。

吐ききったら、下腹は引き締めたまま、肋骨を拡げる・挙げる

ヨガのポーズやスポーツでの安定感を出す「下腹の引き締め」に使われる筋肉は、まさに息を吐ききるときに使われる筋肉、腹横筋です。太陽礼拝やアシュタンガヨガでも重要な、ウディヤーナバンダと言われる技法はこの下腹部の引き締めがポイントになります。

吐ききった状態から、へその下は引き締めた状態を保ちながら、へその上〜胸で呼吸するのが胸式+α呼吸です。

そのとき、肋骨は拡がり(主に横方向に)、上に挙がります(肩をすくめるのとは似ているが少し異なる)。

ここが難しいという人が多いと思いますので、さらにいくつかコツ・練習法を書いておきます。

肋骨を拡げる練習

ベルトなどを肋骨の下の方に軽く巻いて両端を手で持ち、そのベルトの輪を縮めるように息を吐き、輪を拡げるように吸うという練習をします。ベルトはギュっとしめるのではなく、軽くしめているぐらいの状態です。肋骨の周りの輪をイメージできれば十分です。

肋骨を挙げる練習

胸の上の方に手を軽く置いて、吸うときに肋骨があがり、吐くときに肋骨がさがるのをイメージします。

肩をすくめる動きに似ていますが、肩をすくめるのは鎖骨と肩甲骨の動きなので、肩をすくめるだけでは肋骨が動いていないこともあります。

呼吸に関係する、肋骨を持ち上げる斜角筋は、首から第一肋骨・第二肋骨につながっています。これらは鎖骨の裏にあるのでわかりにくいですが、鎖骨ではなく肋骨が動いているようにしっかりイメージします。

肺が拡がるときは、肋骨全体があがるイメージです。しっかり肺の上の方まで空気を入れるようにします。

骨盤底を締める

下腹部を締める前に、骨盤底を締めるという動作も意識する必要があるかもしれません(意識せずともできる人もいます)。骨盤底(会陰部)を締めることは、アシュタンガヨガやクンダリーニヨガなどでも重要なムーラバンダの技法の基本です。

骨盤底を締める動作は、下腹部を締める動作とは逆の動きです。骨盤底が開く時、下腹部が締まり、これは排便や分娩の動きになります。

体を安定させるには、表と裏の筋肉を同時に意識しておくのが有効です。たとえば体幹を安定させるには、腹筋と背筋どちらも意識しておく必要があります。胸式呼吸の場合、下腹部が安定している必要があるので、下腹部と、その逆である骨盤底が、同時に働いているという状態が有効です。

しかし骨盤底を締める、というのもより一層わかりにくいかもしれません。

骨盤底を締めるという動きを、別の表現で導くとしたら、以下のようなものがありますので、しっくりくるものを試してみると良いと思います。

  • 肛門を締める・尿を途中で止める、を同時に行う。
  • 内ももになにかをはさむイメージをする(内転筋を締めることで骨盤底を締める動きを導く)。
  • 足の外側に乗っていると、内転筋や骨盤底の意識が薄くなるので、足の内くるぶしの下(少し内側・少し後側)に重心を移す:立っているときだけでなく、座っているときなど足が地面についていないときもそういう意識をすると良い

下腹部を引き締める

骨盤底が安定したら、同時に下腹部を引き締めにかかります。骨盤底もゆるんではいけません。

胸式呼吸の鍵になる「下腹部を引き締める」の動作が難しいという場合、別の動きをトリガーにして下腹部のコントロールにつなげることもできる可能性があります。

結局同じようなことをしているわけですが、これもいろいろな表現方法がありますので、いくつか挙げてみます。しっくりくるものを試してみてください。

  • 恥骨を持ち上げる・引き入れる。
  • 腰の骨(骨盤の前の左右にある出っ張った骨)を少し近づける。
  • パンツのゴムからお腹が離れるように、お腹を薄くする。

呼吸を練習し、動きの中で、そして生活の中で、行えるようにしていく

胸式呼吸にもいろいろ気をつけるところがあります。太陽礼拝やスポーツをしている中で、これだけいろいろなことを意識するのは、最初は難しいかもしれません。

しかし、これらのことは、動きと無関係にやっているわけではありません。

動きを洗練させるために、理にかなった呼吸をしているわけなので、動きの質を上げようと思ったら「自然に」そのような呼吸をするはずなのです。

なにか思い込みや身体の癖などが邪魔をして、「今までどおり」の動きにすぐ戻ってしまうことも多いかと思いますが、新たなポイントを追加するのではなく、今までやってしまっていた悪い癖をやらないようにすると、自然とそういう呼吸になっていくと思います。

太陽礼拝は、そういった癖を確認して手放していく練習としてはとても有効です。いろいろなスポーツにもつながり、日常生活の姿勢や動作を美しく楽にする、重要な要素をたくさん含んでいると思いますので、太陽礼拝の質を高める練習を続けてみてください。

参考書籍

「アシュタンガ・ヨーガ実践と探究」グレゴール・メーレ (著)

「アシュタンガ・ヨーガ インターミディエート・シリーズ」グレゴール・メーレ (著)

男性ヨガインストラクター 高橋陽介の写真

by 高橋陽介

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