ハタヨーガの古典の中で、最も体系化されているとして重要視されているハタヨーガプラディーピカー。
今回は、第2章プラーナーヤーマ(調気法)で示されている最初の呼吸法を紹介します。
以下、日本語訳は「ヨーガ根本経典/佐保田鶴治」から引用しています。
ナディショーダナプラーナーヤーマ(アヌローマヴィローマ)の原型
2.7 ヨーギーはパドマ・アーサナ(蓮華の体位)の坐を組み、月の気道を通じて気を体内にとり入れ、それを自己の力に応じて体内に保持した後、日の気道によって吐くべし。
2.8 次に、日の気道によって気をとり入れ、ゆっくりと体内に満たすべし。それから、型の如くクンバカ(保息)をした後、月の気道によって吐き出すべし。
現代ではナディショーダナプラーナーヤーマ、あるいはアヌローマヴィローマプラーナーヤーマとして行われている片鼻呼吸法の原型がここで示されています。
月の気道(イダーナディ)は左鼻、日の気道(ピンガラーナディ)は右鼻です。
具体的な秒数などはここでは示されていませんが、現代では主に下記のような長さで行われています。
吸息:止息:呼息=1:4:2
(例:4秒吸って、16秒止めて、8秒吐く)
様々な呼吸法が登場しますが、これが最重要として扱われることが多いようです。
シヴァナンダ氏はクンダリニーを呼び覚ますプラーナーヤーマとしてこれを挙げていて、サッチャナンダ氏は最初に活性化するべき第6チャクラ(アージュニャー)のための実践法としてこのプラーナーヤーマを最初に挙げています。
ここでは名前が示されていませんが、現代ではナディ(ナーディ・気道)をショーダナ(浄化)する呼吸法と名付けられたようです。
ところで、ここでは「空気」を「鼻」から吸うとは書かれていません。
「気道」はエネルギー体(微細身)にあるものであって、それを肉体的な呼吸を用いて浄化していくというのが通常のやり方ではありますが、じつはその行為自体よりも「イメージ」や「意識」のほうが大切なのではないかと思います。
そのため、ただただ空気を通すだけではなく、エネルギーが流れていくようなイメージをしながら行うと、効果が全く変わってくるはずです。
さらに言えば、片鼻を塞いで空気を通すということをしなくても、片方からエネルギーが入ってきて、片方から出ていくというイメージをするだけでも十分な効果があるということです。
いつ、どのくらい呼吸法を実践するか
2.11 朝、昼、夕、夜半の四時にわたってクンバカを練行し、毎朝のクンバカの回数を日を追って少しずつ増していき、しまいには八十回に達すべし。
ヨーガの実践書の中には、1日に行うべき回数が制限されている行法というのがたまに出てきます。根拠は不明な場合が多いですが、たくさんやれば良いというものではないということでしょう。実際にたくさん行って健康を害するものもあれば、たくさんやろうとして雑にならないようにという意図もあるのかもしれません。
最初は少ない回数で始めて、徐々に増やしていきますが、制限を超えて行わないようにしておくのが無難でしょう。
≫ハタヨーガプラディーピカー概説 2.12〜2.20 〜プラーナーヤーマの効果と深め方〜
≪ハタヨーガプラディーピカー概説 2.1〜2.6 〜プラーナーヤーマの目的〜
参考文献
「サンスクリット原典 翻訳・講読 ハタヨーガ・プラディーピカー」菅原誠 (著)
「Asana Pranayama Mudra Bandha 英語版」Swami Satyananda Saraswati (著)