ハタヨーガの古典の中で、最も体系化されているとして重要視されているハタヨーガプラディーピカー。
今回から第2章、冒頭のプラーナーヤーマ(調気法)の目的に関する部分を紹介します。
以下、日本語訳は「ヨーガ根本経典/佐保田鶴治」から引用しています。
この記事の目次
心を不動にするには、気を不動にする
2.2 気が動くと心も動く。気が動かなければ心も動かなくなる。ヨーギーは不動心に達しなければならない。だから、気の動きを制止すべきである。
「気を扱う」と聞くと、気の流れを良くしたりとか、気を集めて放つとか、そんなワザを想像しがちですが、ハタヨーガが最終的に目指すのは「気の流れを止めること」です。
そもそもハタヨーガはラージャヨーガに至るための階梯であり、ラージャヨーガが目指すのは「心の働きを止滅すること」であるので、そのためには気が動いていてはならないとされます。
現代では「呼吸法」と訳されることの多い「プラーナーヤーマ」という言葉は、「プラーナ(気)」を「アーヤーマ(抑制・制御)」するという意味で、様々な呼吸法が挙げられてはいますが、最終的には「クンバカ(呼吸を止めること)」が最も重要となります。
ハタヨーガプラディーピカーにおいては、クンバカとプラーナーヤーマはほぼ同じ意味の言葉として用いられます。
気道をキレイにするべし
2.4 気道(ナーディー)に汚物がつまっていると、気はカラダの中央を通ずるスシュムナー気道を流れない。そのような場合に、どうして忘我の状態が起こり得よう。また、どうして修行目的(解脱)の達成があり得よう。
2.6 それだから、中央のスシュムナー気道のなかにある汚物がきれいになくなるように、たえずサットヴァ性の智をもって調気をなすべきである。
アーサナやプラーナーヤーマを行う目的は、ここで示されているように中央のスシュムナー気道をキレイにするということです。
スシュムナーは普通の人にとっては、なにかがつまっていてスムースに気が流れない状態になっていることが多いということでしょう。
第2章では、いくつかのプラーナーヤーマ(呼吸法)のやり方が示されていきます。
しかし、それらを行う際には「サットヴァ(純粋)」な心で行う必要があると最初に注意されています。結果に執着して急いだり雑に行ったりすると、逆に健康を害したりする可能性があります。実際、呼吸法はかなり効果が高いものや、危険を伴うものもあります。
実践する場合は、しっかり教わってから行うようにしましょう。
≫ハタヨーガプラディーピカー概説 2.7〜2.11 〜気道を浄化する呼吸法〜
≪ハタヨーガプラディーピカー概説 1.64〜1.67 〜実践あるのみ〜
参考文献
「サンスクリット原典 翻訳・講読 ハタヨーガ・プラディーピカー」菅原誠 (著)
「Asana Pranayama Mudra Bandha 英語版」Swami Satyananda Saraswati (著)