古典ヨーガの重要教典であり、現代ヨガでも多くのインストラクターが学んでいるヨーガスートラを、私なりに読んでいこうと思います。
ヨーガスートラの概要については、下記の記事にまとめてあります。
原典のサンスクリット語から直接日本語に訳したいところですが、まだまだ勉強中のためとても長い時間がかかってしまうので、基本的には下記のサイトを参考に、日本でも訳本がよく読まれているお二人、スワミ・サッチダーナンダ氏と、スワミ・ヴィヴェーカーナンダ氏の英語訳を比較する形で進めていき、違和感があるところは独自にサンスクリット語から訳して補足していこうかと思います。
参考:http://yogasutrastudy.info/
サンスクリット語の英訳は下記の辞書サイトを参考にしています。
訳者の略称は下記の通りです。
[SS]: Swami Satchidananda
[SV]: Swami Vivekananda
Sutra 1.1 はじめに
अथ योगानुशासनम् ॥१॥
atha yoga-anuśāsanam ॥1॥
(読み)アタ ヨーガーヌシャーサナム
(訳)では、「ヨーガ」について解説しよう。
[SS]: Now the exposition of Yoga is being made.
[SS訳]: では、「ヨーガ」について解説しよう。
[SV]: Now concentration is explained
[SV訳]: では、「集中」について解説しよう。
Sutra 1.2 ヨーガとは
योगश्चित्तवृत्तिनिरोधः॥२॥
yogaś-citta-vr̥tti-nirodhaḥ ॥2॥
(読み)ヨーガスチッタヴルッティニローダハ
(訳)ヨーガとは、心の波立ちを止めることである。
[SS]: The restraint of the modifications of the mind-stuff is Yoga.
[SS訳]: 心の変化を抑止することがヨーガである。
[SV]: Yoga is restraining the mind – stuff (Chitta) from taking various forms (Vrittis).
[SV訳]: ヨーガとは心が様々な形をとるのを抑止することである。
解説・考察
1.1節で、ヴィヴェーカーナンダ氏は大胆にYogaをConcentration(集中)と英訳しています。
西洋にインドの思想を広めようとした際、熟考の末にこのように訳したのだろうという気持ちがうかがえます。
同時代の教典にも同じように「さて、◯◯◯◯を解説しよう」という形で始まるものが多いようです。
1.2節は、ヨーガとは何かということを端的に表している、ヨーガスートラの中で最も有名な一節です。
「citta-vr̥tti(チッタ ヴルッティorヴリッティ)」は「心の作用」「心の働き」などと訳されることが多いです。ヨーガとはそれを、「nirodha(ニローダ)」することであると。
このニローダがどんな意味であるかということは、しばしば議論されます。
辞書で調べてみると、ニローダには以下のような意味があるようです。
- siege 包囲
- enclosing 囲む
- prevention 防止
- control 制御
- restraint 抑止
- aversion 嫌悪
- dislike 嫌う
- injuring 傷つける
- hurting 傷つける
日本語では「止滅」「統御」などと訳されることが多いです。
ニローダの意味を調べてみると、結構「ムリヤリ・強い感じ」で制御しようとするようなニュアンスの言葉のように思えました。
それだけ、心は制御が難しいものなのでしょう。
いきなり止滅せよと言われても、なかなか難しい。そのためヨーガスートラは、ヨーガとはなんなのかということを最初に端的にまとめたうえで、心の作用をいろいろな方法で分類しながら止滅していく方法を示していきます。
千数百年前にまとめられた古典ですが、様々な雑念にまみれた現代人にとっても、具体的で有効なヒントが得られると思います。