「KUNDALINI TANTRA(クンダリニー・タントラ)/Swami Satyananda Saraswati(スワミ・サティヤナンダ・サラスワティ)著」を読み進めていく形で、クンダリーニヨガの概要を紹介していきます。
「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)
「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)
用語:クンダリニー(クンダリーニ)
用語:チャクラ
用語:ナディ(ナーディー)
これらは今は誰もが見えるもの・感じ取れるものではないので、扱うのが難しい分野ではありますが、心身の改善のためにも、ヨガのポーズや瞑想を洗練させるためにも、そしてさらなる進化のためにも、これらの「見えないもの」も注意深く研究して、気づきを磨いていくと良いかと思います。
今回は、第1章の13節の前半、クリヤーヨーガとは他のヨーガや行法と比較してどのような道なのか、といったことに関する部分です。
以下、引用部分の太字強調は私が個人的に重要と思ったところを示したものです。
現代人に適したクンダリニー覚醒法、クリヤーヨーガ
Awakening of kundalini is very difficult. You can try the various yogic and religious practices that have evolved throughout the ages, but they require a lot of self-discipline and demanding austerities. There are so many do’s and dont’s that the average person finds unpalatable. Therefore, the rishis of the tantric tradition evolved a series of practices that could be easily adopted by every type of aspirant regardless of his lifestyle, habits, beliefs, and so on. Of course there are many practices belonging to tantra, but of them all, kriya yoga is considered to be the most powerful and suitable for the modern day man who is enmeshed in this world.
クンダリニーの覚醒はとても難しく、長年行われてきたヨーガや宗教的実践は、たくさんの規範を含む厳格な生活を必要とし、一般人にはとても不可能なものでした。
しかし密教の聖者たちは、ライフスタイルや習慣や信仰に関わらず多くの人々が行えるようなクンダリニー覚醒法をつくりあげてきたといいます。
その中でも、クリヤーヨーガは最も強力で、物質世界に巻き込まれている現代人にとって最適な道であるとサティヤナンダは示しています。
クリヤーヨーガは密教の文献で言及されていますが、その実践方法は具体的には示されておらず、師匠から弟子へ直接伝えられるのが伝統とされてきました。
The ultimate purpose of kriya yoga is to create awakening in the chakras, to purify the nadis, and finally, to awaken the kundalini shakti. The kriyas are intended to awaken the kundalini in stages and not abruptly. When kundalini awakens abruptly, the experiences you have are very difficult to handle and you cannot understand what is happening to you. The techniques of kriya yoga offer a smooth and relatively risk-free means of expanding your awareness and awakening the dormant areas of the brain. Also, this system of kriya yoga provides a means whereby you do not have to tackle the mind directly. Its practices are based on hatha yoga, which aims at controlling the prana. Mind and prana interact with each other and thereby, by controlling the prana, we can gain control of the mind.
クリヤーヨーガは、クンダリニー覚醒を急激に起こすのではなく、チャクラの覚醒・ナディの覚醒を経た上でクンダリニー覚醒へと段階的に進んでいくようにつくられているといいます。
その行法はハタヨーガをベースにしており、プラーナ(気)をコントロールすることを目的としています。心とプラーナは相互に作用するので、プラーナをコントロールすることによって心をコントロールできるようにしていくというのが目的とされています。
他のヨーガと異なる、クリヤーヨーガのアプローチ
Kriya yoga means ‘the yoga of practice, movement or action’. Unlike the various religious, mystical or yogic practices which demand mental control, the special instruction in the system of kriya yoga is, ‘Do not worry about the mind.’ If your mind is dissipating or if there are distractions in your mind and you are not able to concentrate even for one second, it does not matter. You have only to continue with your practices, for even without confronting, controlling or trying to balance the mind, you can still evolve.
「クリヤー」は、実践・行為・行動といった意味の言葉です。
以前にも書きましたが、クリヤーヨーガというものがあまり文献で具体的に示されていないこともあり、「クリヤーヨーガ」という決まった一つの流派があるわけではなく、様々なクリヤーヨーガがあるようです。ここでは、サティヤナンダ氏の用いるクリヤーヨーガ、という意味でこの言葉を使っていきます。
クリヤーヨーガは、他のヨーガや宗教的・神秘的実践とは異なり、「心のことは気にしなくても良い」というアプローチであり、心が疲れていたり雑念があって集中できなかったりしたとしても、問題なく進めていくことができるといいます。
「まずは心を集中せよ」という実践方法が多い中で、これはとてもユニークであり、それまでの歴史上ではあまり見たことのないものであったといいます。
People think that the mind is the greatest barrier in spiritual life, but this is a very wrong and dangerous concept. The mind is a bridge between this and that, so how can it be a barrier? An idiot thinks it is a barrier and he tries to destroy that bridge.
ここで「心」について少し説明されています。多くの行法において「心を落ち着けなさい」といっていることから、「心はスピリチュアルな目覚めをジャマするものである」と考えてしまう人も多いかもしれないが、それは大きな誤解であるといいます。
たとえばヨーガスートラの冒頭でも「心の働きを止めることがヨーガである」と言っていますが、では心を悪者として退治せよというのではなく、我々は心を使って世界を感じるのであり、「心が波立っていると、物事をありのまま映して観ることができない」ので、鏡のように波立たず透き通った心にしていくように、というように述べられています。
サティヤナンダ氏は、心とは「壁」ではなく「橋」である、愚か者はそれを誤解して橋を壊そうと試みる…といった表現で説明しています。
Kriya yoga is very clear in its approach to the mind. It emphasizes that you do not try to do anything with the mind. If your body protests about maintaining a fixed posture, change it. If your mind objects about closing the eyes, keep them open. But you must continue with the kriya yoga practices because they have a direct effect on the deeper processes of the body which are responsible for the state of your mind. Remember that the body affects the mind and the mind affects the body.
We should not consider the techniques of kriya yoga as practices of concentration or meditation as their aim is not mental control. The beauty of kriya yoga is that you have only to remain relaxed and let the mind move naturally and spontaneously. Inner awareness will then awaken, and in time, your mind will automatically become one- pointed.
クリヤーヨーガは心を抑制するようなアプローチは行わず、坐法がつらいと思うなら変えて良いし、目を閉じたくないと思うなら開けていても良い、といいます。
しかし心と体は相互に作用するため、継続して実践していけば、体の深部への変化が起こり、それは心にも変化をもたらすといいます。この考え方に基づいて、体へのアプローチを基本とするハタヨーガをベースにしているということでしょう。
クリヤーヨーガは集中や瞑想のような心をコントロールする実践とは異なり、ただリラックスして心が自然に動くままにしておき、実践を続けるにつれて内的な気づきが目覚め、いずれは心も一点に定まっていくものであると説明されています。
万人に開かれた道
クリヤーヨーガあるいはハタヨーガは万人に適した道であるとして、どのような人々に、どのような効果があるのかといったことがここで説明されています。
These five stages are like rungs on a ladder, representing the evolution of chitta or the mind. The lowest rung is known as the inert mind. The second rung is the scattered mind, the third is the oscillating mind, the fourth is the one-pointed mind and the fifth is the controlled mind.
この世界を構成する要素として、ヨーガではサットヴァ(純粋性)・ラジャス(激性)・タマス(鈍性)という3つのグナを用いて説明します。
用語:グナ guṇa
この世界に存在している限り、1つや2つのグナしか持っていないということはなく、3つのバランスで存在しています。
ここでは3つのグナのバランスの変化に応じて進化していく心の状態を、5つの段階に分類しています。
- 不活発な心(タマスが圧倒的優勢)
- 散乱している心(ラジャスが圧倒的優勢)
- 規則的な波を描く心(以降、サットヴァが少しずつ優勢になっていくがラジャス・タマスも存在する)
- 一点に集中している心
- コンロールされている心
Now, if you belong to one of the first three categories, and most of us do, after practising hatha yoga, you should take to kriya yoga. If you belong to one of the last two categories, then after hatha yoga, you can take to kriya yoga if you want, or you can follow the path of raja yoga or any other path which asks you to concentrate through willpower. When you are at the sattvic level you can deal with the mind through the mind, but when you are at the tamasic or rajasic level, if you try to deal with the mind through the mind, you will cause a mental crisis.
前半3つに属している人(ほとんど全ての人々)は、ハタヨーガを実践した後、クリヤーヨーガを実践せよと示されています。
後半2つに属している人は、ハタヨーガを実践した後、もし行いたければクリヤーヨーガを行っても良いし、ラージャヨーガや、意志の力で集中することを求められる他の道を選んでも良いとしています。
サットヴァが優勢になった人は、心を通じて心をコントロールすることができますが、ラジャス的・タマス的なところにとどまっている人がそれを行おうとすると、心は危機的状況になるといいます。ほとんどの人はラジャス的・タマス的であり、そのため段階的に進めていく必要があるということでしょう。
Whether you are sattvic, rajasic or tamasic, the practices of hatha yoga should be taken up first. A tamasic person needs hatha yoga to awaken his mind, body and personality. A person who is rajasic needs hatha yoga to balance the solar and lunar energies in his body and mind. And a person who is sattvic by temperament needs hatha yoga to help him awaken kundalini. Hatha yoga is for everybody. And if you have been practising asanas, pranayama, mudras and bandhas consistently for two years or more, then you are ready for kriya yoga. Hatha yoga is the basis of kriya yoga.
サティヤナンダ氏は、サットヴァ的・ラジャス的・タマス的な人、全ての人に、ハタヨーガはまず実践することをすすめています。
タマス的な人は心身や人格を目覚めさせるためにハタヨーガが必要であり、ラジャス的な人は心身における太陽と月のバランスを整えるためにハタヨーガが必要であり、サットヴァ的な人はクンダリニー覚醒のためにハタヨーガが助けになる、といった説明がされています。
ハタヨーガのアーサナ・プラーナーヤーマ・ムドラー・バンダを、2年以上は定期的に実践することによって、クリヤーヨーガへの準備が整うといいます。
一般的なヨガスタジオで現代ヨガを実践している人も、様々なアーサナ(ヨガポーズ)を行っているかと思いますので、クリヤーヨーガへ向けての準備が少し進んでいるかもしれません。チャクラやナディの浄化・覚醒といったところに取り組むためには、プラーナーヤーマ・ムドラー・バンダが重要な行法となるため、日々行っているヨガにアーサナ以外の要素も取り入れていくのも良いかと思います。
参考:アーサナ(ヨガポーズ)解説一覧
参考:プラーナーヤーマ(呼吸法)解説一覧
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参考文献
「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)
「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)
「クンダリニー」ゴーピ・クリシュナ (著), 中島巌 (翻訳)
「Asana Pranayama Mudra Bandha 英語版」Swami Satyananda Saraswati (著)