ハタヨーガの古典の中で、最も体系化されているとして重要視されているハタヨーガプラディーピカー。
今回は、ウディーヤナ・ムーラ・ジャーランダラの3つのバンダ(バンダ・トラヤ)を同時に行ったときの効果と、ヴィパリータカラニー(逆転の姿勢)について書かれている部分を紹介します。
以下、日本語訳は「ヨーガ根本経典/佐保田鶴治」から引用しています。
この記事の目次
バンダ・トラヤ(3つのバンダ)
3.74 コーモンを収縮してウディーヤナをなし、イダーとピンガラの両道をとじて、気をスシュムナー気道へみちびく。
3.76 このバンダ・トラヤ(三重のバンダ)は、いにしえの偉大な大師たちが行じられたところの最勝のバンダであって、すべてのハタ行法の完成をもたらすものであることを、ヨーギーたちは知っている。
前記事で説明した3つのバンダ(バンダ・トラヤ)を同時に行っています。
「イダーとピンガラの両道をとじて」という文言は具体的な動作を示していないのですが、3.73節でジャーランダラバンダがこの役割を果たしていると述べられています。
バンダ・トラヤを行うことを、現代ヨガではマハーバンダ(偉大なバンダ)と呼ぶこともあります。
呼吸に関してはここに指示はありませんが、ウディーヤナバンダを行うことから、息は吐ききって止めているということになると思われます。
また、坐法としてはパドマーサナを組んで行う場合が多いです。
ヴィパリータ・カラニー
3.77 神々しい姿の月から流れ出る甘露はことごとく日が飲んでしまう。そのために肉体は老衰するのである。
3.78 これについて、日の口をごまかすのに、すぐれた手段がある。しかし、これはグルの指導によってのみ会得できるもので、たとえ百万の理論をもってしても会得することはできない。
3.79 ヘソが上にあり、口蓋が下にくる姿勢をとる時、日は上にあり、月は下にくる。このヴィパリータ(逆転)という名のカラニー(しぐさ)はグルの口づたえで学ばねばならない。
現代ヨガでは、ショルダースタンド(サルヴァンガーサナ)のイージーバージョンの名前として出てくることもある、ヴィパリータカラニー。
言葉の意味としてはシンプルに「逆転の姿勢」ということになり、そういう意味ではシルシャーサナなどもヴィパリータカラニーということになるかもしれません。
具体的なやり方は示されておらず、やはり師匠に教わりなさいと慎重に注意されています。
これを行う意味としては、ケーチャリームドラーのときにも出てきた、月(頭の真ん中あたり)から流れ落ちる甘露を日(へそのあたり)が消費してしまうのを防ぐ、という狙いが書かれています。
たしかに逆転ポーズを無理なく日々実践していると、若さを維持できそうな気もします。しかし、シルシャーサナもそうですが、しっかり習ってから行わないと危険を伴うポーズでもあります。
(次)ハタヨーガプラディーピカー概説 3.83-3.102 〜性的ヨーガのムドラー、ヴァジローリー・サハジョーリー・アマローリー〜
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参考文献
「サンスクリット原典 翻訳・講読 ハタヨーガ・プラディーピカー」菅原誠 (著)
「Asana Pranayama Mudra Bandha 英語版」Swami Satyananda Saraswati (著)