ヨガの8支則(アシュタンガ)の中の1つめ「ヤマ(禁戒・戒行・社会的規範)」には5つの項目があります。
- アヒンサー 非暴力
- サティヤ 正直・誠実
- アステーヤ 不盗
- ブラフマチャリヤ 梵行・禁欲
- アパリグラハ 不貪
現代ヨガのメインパートとなっている「ポーズをとる」ことは、第3支則。その前に、ヤマ・ニヤマという道徳的な教えが示されています。
ヨーガスートラの中で、ヤマの5項目を正しく実践した場合、どのような結果がもたらされるかということが書いてあるので、紹介します。
以下、日本語訳の引用には下記参考書籍を使用しています。
参考書籍:
≫ヨーガ根本教典/佐保田鶴治
この記事の目次
アヒンサー(非暴力)の結果
2章35節「非暴力の戒行に徹したならば、そのひとのそばではすべてのものが敵意を捨てる。」
ガンジーさんの活動で有名になったアヒンサー。
少し勇気を出せば誰でも実践できることですが、資本主義の競争社会では、より難しくなってしまいました。
競合相手を蹴落として上に上がっていこうとしても、キリがありません。競合相手をつくらなければ良いのです。
そして、自分に対しても苦痛を与えないこと。
「自分に克つ」などというのも、ちょっと違う気がします。自分と戦っても、その戦いは無限に続くだけです。
アヒンサーを実践できるひとが増えれば、ストレスが減り、戦争なども起こらないはず。
サティヤ(正直・誠実)の結果
2章36節「正直の戒行に徹するならば、その人は行為とその結果とのよりどころとなる。」
正直な・誠実な気持ちで行われることは、必ず正しい結果をもたらすということ。
雑念にまみれた邪な気持ちで行ったことは、望まない結果をもたらします。
また、相手が誠実であるかどうかは、自分が誠実に生きていればすぐに見抜けます。
自然に、理由付けなど必要ない行為ができるように、瞑想の実践などで雑念の捨て方を身につけます。
アステーヤ(不盗)の結果
2章37節「不盗の戒行に徹したならば、求めずして、あらゆる地方の珠玉が彼のところにあつまる。」
執着したり、人から奪ったりしようとしなければ、欲しいものは向こうからやってくる。
アヒンサーの話とも重複しますが、資本主義社会ではなかなか難しいこと。
それでも、実践してみると、本当にそのとおりになるということが実感できるはずです。
あるいは、その「欲しいもの」は本当は必要ではなかった…と気づくこともあるかもしれません。
ブラフマチャリヤ(梵行・禁欲)の結果
2章38節「禁欲の戒行に徹したならば、巨大な精力が得られる。」
ハタヨーガの教えの中には、とにかく「精液を無駄に漏らさないように」ということがよく出てきます。
「精液の1滴は血液の40滴分」などと言われることもあり、これが物質的なものを表しているのかエネルギー的なものを表しているのか、証明することは難しいのですが、ヨーガのゴールに至るために必要なものを大量に消費してしまうということを示しているのでしょう。
ところが、真逆のことを説いている教えもあり、解釈がとても難しいところです。議論は絶えないので、ひとまず「節操を守る」程度に捉えておくと良いかもしれません。
アパリグラハ(不貪)の結果
2章39節「不貪の戒行において不動心を得たならば、自分の転生のありさまを三世にわたって正しく知ることができる。」
三世というのは前世と来世を含めた三世ということのようです。
不貪は「必要以上に所有しない」ということから始まります。
そして、いろいろなものに対する執着を捨てて、身体への執着も捨てたとき、様々なものに対する「智」が得られるといいます。
ただ、「前世を知りたい!来世を知りたい!」と執着してしまうと、それは不貪に反します。
ヨーガスートラにはこのような超能力的なものがたくさん出てきますが、それが本当かどうかなどは一旦おいておいて、そういったスゴい能力にすら執着しないこと、というように捉えておくと良いと思います。
全体として「執着を捨てる」ということ
全体に共通して、「結果に執着して実践するのではなく、正しく実践したら結果が向こうからやってくる」ということが読み取れます。
現代日本では、「相手を蹴落として自分だけが勝ち上がることを目指す」という資本主義の考え方と、「周りと足並みをそろえましょう」という古くからの日本的な考え方の矛盾の中で、ストレスをためてしまう人も多いことでしょう。
ヨガ的に生きるなら、相手をどうこうするのではなく、周りに期待するのではなく、まずは自分から執着を捨ててみると、周りの世界も変わっていくということです。
そもそも「世界」を映し出しているのは自分の心。
心を変えて行けば、世界が変わります。
≫ヨーガ・スートラとは 〜現代ヨガの重要教典のひとつ・瞑想の教科書〜
≫初心者向けヨーガ・スートラの概要 前半(1章・2章)
≫初心者向けヨーガ・スートラの概要 後半(3章・4章)