背骨全体の柔軟性を高め、脚や体幹の筋肉も全体的に強化できるポーズ、ヴィヤガラーサナ(虎のポーズ)。
背骨を反って脚を後ろに挙げる動きと、膝を胸に近づけて背骨を丸める動きと交互に行うと、ピラティスのフライングドッグに近い動的アーサナになります。
この記事の目次
ヴィヤガラーサナ(虎のポーズ)の効果・意義
- 脚の裏側全体(大殿筋・ハムストリングス・腓腹筋・ヒラメ筋など)の強化(脚を挙げる動き)
- 腹直筋・腸腰筋の強化(膝を胸に引き寄せて背骨を丸める動き)
- 背筋の強化・背骨の柔軟性UP
- 腰痛の緩和
- 呼吸を深める・整える
- 自律神経のバランスを整える
ピラティスのフライングドッグとの比較と、良いところどりをするコツ
同様な動きをするエクササイズとしてピラティスのフライングドッグがありますが、フライングドッグはあまり背骨を反る後屈の動きまでは加えないことが多いです。そのためヴィヤガラーサナには後屈を含めた背骨の柔軟性を高める効果が加わります。
ピラティスでは水平のニュートラルな位置をキープすることに、より重きを置いているように思えます。ニュートラルをしっかり作ってから、背骨を丸めていき、土台を安定させながら腹筋を鍛えていく動きです。
ヴィヤガラーサナは、ニュートラルな位置で止まることはないのですが、開始時点でニュートラルな四つばいで安定させることを意識するようにすると良いでしょう。ニュートラルで50%リラックスした状態を作って待機できていれば、反る方向にも丸める方向にも最大の可動域を生むことができます。
ヴィヤガラーサナ(虎のポーズ)の禁忌・注意点
ハムストリングスなど脚の筋肉を痛めている場合は避けましょう。
背骨に痛めている箇所がある場合は、痛みの出ない範囲で行うか、キャットアンドカウを代わりに行って穏やかに背骨を動かしましょう。
ヴィヤガラーサナ(虎のポーズ)のやり方
1)四つばいになります。手と脚で土台を安定させ、まず背骨をリラックスしてまっすぐ伸ばします。
2)吸いながら背骨を反らし、片脚を真後ろへ挙げていきます。膝は90°程度曲げた状態で、つま先は天井へ近づけます。さらに背骨を反れるようであれば、つま先は頭の方向へ近づけていきます(膝を曲げていくのではなく、また背骨をねじったりはしないように)。ここで5呼吸ほどキープします。
3)吐きながら、挙げていた脚の膝を胸に引き寄せるようにして、背骨を丸めていきます。
4)この動きを1回〜数回繰り返した後、逆側も同様に行います。
バリエーション
挙げている脚を、逆側の手でつかむ形もあります。これをウッターナ・ヴィヤガラーサナと呼ぶ場合もあるようです。
この形の場合、ダヌラーサナのように張力を使って後屈を深める効果や、アルダナタラージャーサナやアルダチャンドラチャパーサナのように太もも前や腸腰筋を伸ばす効果が加わりますが、ハムストリングスを強化する効果は減ります。
ヴィヤガラーサナ(虎のポーズ)を深める方向性
- 背骨ひとつひとつの隙間を広げるように、伸ばしながら大きくアーチをつくれるようにしていく。
- 骨盤が横へ向きすぎないように、脚を高く挙げられるようにしていく。
ヴィヤガラーサナ(虎のポーズ)のコツ・練習法
土台をしっかりつくり、リラックスしてニュートラルな状態にする
可動域を広げるためには、土台になる部分をしっかり安定させて、動くべき部分は適度にリラックスし、ニュートラル(50%の力で支えているイメージ)にして待機させておくのが原則です。
土台がしっかりしていると、動かすべき部分は「支えるための仕事」をしなくて済むため、まずリラックスして待機することができ、動くときは大きく動くことができます。
ヴィヤガラーサナの場合は、まず四つばいからスタートして脚を挙げるため、途中で4つの支えが3つに減るので、手の方に乗りすぎてしまうことがあります。土台になっている脚にもしっかり体重がかかって支えているように気をつけながら、挙げる脚や反っていく背骨はなるべくリラックスして大きく動けるようにします。
骨盤を安定させて、脚を高く上げる
脚を後ろに挙げる動作は、代償動作を行ってしまいやすく、人それぞれ癖が出ることが多いようです。
基本的には骨盤が横へ向いてしまわないように気をつけながら、太もも裏のハムストリングスやお尻の大殿筋が主役となって、脚を挙げていきます。その際に、まず骨盤を安定させ続けるということを意識すると役立つかと思います。
骨盤を安定させるには、骨盤底筋・下腹部の引き締め(腹横筋など)を意識すると良いでしょう。
脚を後ろに挙げる筋肉を使う他のポーズとしては、ランジポーズやヴィラバドラーサナ3などがあります。
お尻の筋肉を使って脚を後ろに挙げるときのコツ
脚を後ろに挙げる際に主役のひとつになるのがお尻の大殿筋ですが、この筋肉は股関節を外回しする筋肉でもあります。つまりこの筋肉だけを使って挙げようとすると、膝が外へ向いていってしまうことになります。
そのため、膝が外を向いたり骨盤が横を向いたりしないように真後ろへ脚を挙げるには、「少し股関節を内回しする」あるいは「膝を真下に向けようとする」ような意識を加えてみると、うまくいく場合があります。
背骨全体を動かす
キャットアンドカウと同じように、背骨を反って・丸めるということもしっかり行います。
もし首に力が入ってしまうという人は、まずは骨盤から動かし、下(腰)から順番になめらかに一つ一つの背骨を動かすようにして、胸を十分に反らしてから、最後に首が動くようにしてみましょう。
反る・丸める動きを行うときは、呼吸の長さもコントロールし、「吸い始めてから動き、吸い終わったときに動作が終わる」「吐き始めてから動き、吐き終わったときに動作が終わる」というように呼吸と動作を合わせてみましょう。ゆっくり動きたいのであれば、呼吸を細く長くできるようにコントロールします。
アジャスト例(インストラクター向け)
- 骨盤や肩がずれたりしている場合は、左右から支えて修正をサポートする。
- 脚が上がっていない場合は、骨盤の安定が崩れない範囲で太ももを支えてサポートする。
- 背骨全体を観察し、あまり動いていない部分があれば軽くさすって、意識を通すように導く。
- 首の後ろが緊張しすぎることが多いため、頭・首の後ろや僧帽筋あたりをさすってリラックスするように導く。
- 肘が曲がったりして肩のアラインメントが崩れているようであれば、両側から肩を支えて修正をサポートする。
シークエンス例
- キャットアンドカウ(キャットストレッチ)を準備運動として行った後に行うと良いでしょう。
- 腕の動きを追加して、フライングドッグへつなげます。
- ウッターナシショーサナ(パピーポーズ)につないで、肩のストレッチを加えます。
- 針の糸通しのポーズ(ねじった猫のポーズ)を続けて行うと、背骨のツイストも行えます。
- 終わった後はチャイルドポーズでリラックスします。
アーサナ名の表記バリエーション
【日】ヴィヤガラーサナ、ヴィヤガラアーサナ、ヴャガラーサナ、ヴャガラアーサナ、ヴャグラーサナ、ヴャグラアーサナ、ヴィヤグラーサナ、ヴィヤグラアーサナ、虎のポーズ、トラのポーズ
【梵】Vyaghrasana
【英】Tiger Pose