ヨーガスートラを私なりに読み進めていくシリーズ。
英訳出典:http://yogasutrastudy.info/
サンスクリット語辞書:http://spokensanskrit.org/
訳者の略称は下記の通りです。
[SS]: Swami Satchidananda
[SV]: Swami Vivekananda
Sutra 3.24(3.23)
मैत्र्यादिषु बलानि॥२३॥
maitry-adiṣu balāni ॥23॥
(読み)マイトリ アビシュ バラーニ
(訳)友情・慈愛などに対してサンヤマを行うことによって、ヨーギはそれらの特性において秀でた能力を得る。
[SS]: By samyama on friendliness and other such qualities, the power to transmit them is obtained.
[SS訳]: 親愛などの特性に対してサンヤマを行うことによって、それらを発する力が得られる。
[SV]: By making Samyama on friendship, mercy etc., the yogi excels in the respective qualities.
[SV訳]: 友情・慈愛などに対してサンヤマを行うことによって、ヨーギはそれらの特性において秀でた能力を得る。
Sutra 3.25(3.24)
बलेषु हस्तिबलादीनि॥२४॥
baleṣu hastibalādīnī ॥24॥
(読み)バレシュ ハスティバラーディーニー
(訳)象などの強力な動物に対してサンヤマを行うことによって、ヨーギはその動物たちの強さを得る。
[SS]: By samyama on the strength of elephants and other such animals, their strength is obtained.
[SS訳]: 象などの強力な動物に対してサンヤマを行うことによって、その動物たちの強さが得られる。
[SV]: By making Samyama on the strength of the elephant, etc., that strength comes to the Yogi.
[SV訳]: 象などの強力な動物に対してサンヤマを行うことによって、ヨーギはその動物たちの強さを得る。
解説・考察
超能力に執着してはならないシリーズ、今回は「対象の力を得る」です。
「慈愛」などの特性は、目で見たり触ったりできない微細なものですが、そういったものに対してサンヤマを行い本質を知ることで、それらを発する力が得られるといわれます。
慈愛「などその他(adiṣu)」と言われていますが、その他の特性については1.33節で述べられている慈・悲・喜・捨のことを指していると思われます。
≫ヨーガスートラ解説 1.33-1.39 〜集中・瞑想する対象の選び方〜
あるいは動物の持つ「強さ」といったものをも得られるといいます。サッチダーナンダ氏は、岩にサンヤマすれば岩のように重くなれるとも解説しています。
これらは1.35節で述べられている「微細な感覚」と対比しているように思えます。このあとに続く3.26(3.25)節では、1.36節で出てきた「内なる光」を対象としています。
微細な感覚の本質を理解することで、その力を自在に使えるようになるということですが、使えるようになったところで…何に使いたいでしょうか?
他人の慈愛、象の強さを得たいと思わなくても、真の自分にはもともと必要なものが全て備わっていると悟れば、そんな力は必要ないと気づくはずです。
≫ヨーガスートラ解説 3.26-3.29(3.25-3.28)
≪ヨーガスートラ解説 3.23(3.22)
(※)3.22節に関しては、訳者によっては抜けているため、このあとの節番号がひとつずつズレている訳本もあります。この節が後世に付け加えられたものとされているのか、詳細は分かっていないようです。そのため、ヨーガスートラは全体で195節とする場合と、196節とする場合があります。ここでは3.22節は存在するとしてカウントした節番号をメインに使い、存在しないとした場合の節番号をカッコで示すことにします。